初代ヴァイオレット。いや、僕的には 710 という日産伝家の宝刀であるエースナンバーを背負った悲運の名車と思っている。
多くの人は ヴァイオレット を指して、肥大化したブルーバードとか、デザイン重視の日本人の感性に合わない美しくないクルマと言う具合に当時もそうだったが、現代でも芳しい評判を聞くことがない。
美しくない、直線的なデザインではなかったという理由で ヴァイオレット を評しても良いのだろうか。
510ブルーバードに乗っていた元ユーザーとして、正直に言うが、音や振動、そして決定的に空調に関しては ヴァイオレット の方が良かった。
そしてデザインに関しても、僕は現代のトヨタの無駄の多い、よそとは違う形にしよう、面白い造形をしてみようと思うあまり、複雑怪奇な線が乱舞するサイドパネルなどを見ていると、よほど 710 の方が「根拠のある」線と面とで造形が構成されていたように思えてならないのだ。
面白い形を作ろう、よそとは違ったデザインにしようと、考えに考えて複雑怪奇な線と面、部品でできた新型プリウスは美しいのか!?
この頃の日産車のデザインの特徴でもある、直線を廃した曲面を多用した窓面積の小さなデザインの理由は、今でさえ名車だと持ち上げられている510ブルーバードや、210サニーなどは、正直、販売店、営業サイドからは当時不評であった。
特に510は、7つの新機軸、シンプルで飽きの来ないデザインと玄人筋には評判が良かったが、一般的にはコロナにも勝てない状態で、その原因が、7つの新機軸よりもダブルウィッシュボーン、板バネのコロナが、直線を生かしながら、女性的でまろみのある曲面を効果的に使ったデザインで、上手く高級感を演出し、さらにこの頃から多くなった女性ドライヴァーも、「冷たい感じ」のするブルより「コロナ」のデザインを支持し1965年くらいからはコロナが販売台数でブルを大幅に上回るようになってしまっていた。
販売サイドの声で、曲線を多用してクウぺスタイルを採用したヴァイオレット。販売店からは「ウチでもこんな素晴らしいデザインができるんだ!」と大好評だったが。
果せるかな、ヴァイオレット発売前のプレゼンや、発売してからの販売店の声は、どれも好意的で、
「ウチでもこんな素晴らしいデザインができるんだ」
という声が多く寄せられていたのだ。
さらに広告的には、「藤岡 弘」を使ってクルマそのものの雰囲気より、キャラクターのイメージでライヴァル「コロナ」の打倒を推し進めたのだが・・・・・
実際の販売では、営業や日産トップの思惑とは大きくずれた現実に直面するのであった。
Posted at 2015/10/04 09:31:25 | |
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