みんカラ

ダブルクラッチとマニュアルトランスミッション

ブログ 幻視の花 ~ Kirschebluten der Nacht

2015年11月5日

ダブルクラッチとマニュアルトランスミッション
さて、恒例(?)の誰得コーナーです。

今回はダブルクラッチについて

話の関係上、MTの話も必要なのでそれとセットです。


日本のMT比率はもはや1%台と風前の灯火状態ですが、MT乗りなら当然できるダブルクラッチ。

では、ダブルクラッチって一体どういう意味があって、どういう事をしているのか?

MTの構造を理解しないことにはダブルクラッチの意味もへったくれも理解できないので、それら諸々を説明していきたいと思います。



MTの通常変速ダブルクラッチ変速のシフトダウン手順を比べて見ましょう。

●通常変速
1)クラッチを切る
2)ギアを今より下のギアに入れる
3)クラッチを繋ぐ


●ダブルクラッチ
1)クラッチを切る
2)ギアをNにする
3)クラッチを繋ぐ
4)アクセルを煽り回転数を上げる
5)クラッチを切る
6)ギアを入れる
7)クラッチを繋ぐ



◎通常変速(ブリッピング有り)
1)クラッチを切る
2)ギアを今より下のギアに入れる
3)アクセルを煽り回転数を上げる
4)クラッチを繋ぐ



ダブルクラッチは手順が一気に増えますね。
(※ブリッピング有りの手順もついでに記載)


ぶっちゃけ、こんな面倒臭いことやんなくてもいいじゃん。

って思う人もいますよね。というか多いかな?


まぁ、ぶっちゃけちゃえば別にやんなくてもいいです。

今の車にはシンクロが付いているので、普通に走る分には必要ないです。普通に走る分には・・・。

もともと、ダブルクラッチが必要だったのは今から1世紀ほど前のシンクロがなかった時代の話で、ダブルクラッチしないと変速が出来なかったからです。


さて、この辺から「なぜ?」ってのが出てきたと思います。


・なぜノンシンクロ車はダブルクラッチしないと変速できないのか?
・シンクロは何をしている部品なのか?
・今のシンクロ付き車でダブルクラッチをする意味は?



で、これらを説明するのにマニュアルトランスミッションの構造の話が必要になってくる訳です。



FR用5速MTの構造図です。
※ものによって多少違いがありますので、大体こういう構造と思ってください。


とりあえずざっくり文章で説明をすると、シンクロとはインプットシャフト(エンジン側に繋がる)アウトプットシャフト(タイヤ側に繋がる)回転を合わせてくれる部品です。

インプットシャフトとアウトプットシャフトは変速ギアを介して回転数が変わる為、使用したいギアに合わせた回転数でないとギアが入りません。

片や1000rpm、片や2000rpmの別々の回転数で回っている歯車同士を繋ぐことはできません。

そこで昔のノンシンクロ車はダブルクラッチを用いて人間が回転数を合わせていました。

それでは大変(面倒)なので開発されたのがシンクロで、シフト操作時のギアに押し付ける力(摩擦)を利用してシンクロが回転数を合わせてくれます。


さて、文章での説明ではイメージしにくいでしょう。というかこれでは理解できないでしょう。(なんでダブルクラッチ?とか説明してませんし)


とりあえずトランスミッションの動きをイメージしやすいように図面で5MTのトルクフローでも見てみましょうか。



ニュートラル




1速




2速




3速




4速




5速




後退



シフト操作によりスリーブを前後に動かす事で使用したいギアが固定され、変速して動力が伝わる仕組みです。

トランスミッションの動きがイメージできたでしょうか?

この図面とトルクフローを見て、ダブルクラッチをやったらどういう動きになるのか理解できたら大したものです。もうこれより下を読む必要がないんじゃないでしょうか(笑)



一応シンクロの動きもざっくり図解してみました。(知ってる人は読み飛ばしてOK)





シンクロとその前後の部品の基本構成図(概略)です。
※シングルコーン

変速の為のギア、シンクロナイザーリング、シンクロナイザーハブ、スリーブ、シンクロナイザーキーにより構成される。





上の図を組み合わせた状態。これが通常のギアの入っていない状態です。





1)変速の為にシフトレバーを操作し、スリーブをギア側へ動かすとシンクロキーがシンクロを押す。
2)押されたシンクロがギアへ押し付けられる
3)ギアのコーン部分とシンクロのコーン部分が摩擦により回転数を合わせにいく。





4)ギアとシンクロの回転数が同期したらスリーブが更に進み、ギアとシンクロナイザーハブがスリーブにより連結され、変速が完了する。


ざっくりですが、シンクロの動きの図解でした。




では話をトランスミッションに戻して、図面を用いながら順を追って説明していきましょう。

上に各段ギアのトルクフローは描きましたが、では実際に変速(シフトダウン)した時にトランスミッションの動きはどうなっているのか?


通常のシフトダウンの場合を見てみましょう。




※コルトラリーアート5MTのギア比で計算(たまたまギア比計算したものを持っていた為)
 (3.538/1.913/1.344/1.027/0.833)

5速 1500rpm、53.6km/hで走行中の各ギアの要求エンジン回転数とトルクフロー。

5速:1500rpm
4速:1850rpm(⊿350rpm)
3速:2420rpm(⊿920rpm)
2速:3440rpm(⊿1940rpm)
1速:6050rpm(⊿4550rpm)


・5速で走行中も格段ギアは回転している(カウンターシャフトから回転を貰う)が、アウトプットシャフトとは繋がっていない為、空転状態。

・変速時はこの⊿rpm(回転差)分をシンクロが昇速する

・⊿rpmが大きいほどシンクロの仕事は増え、同期(昇速)に時間が掛かる。





1)シフトダウンの為クラッチを切る。

2)「イエロー(エンジン)」は1500→700rpm(アイドル)まで低下へ向かう。

3)「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」は入力が無くなり、回転停止へ向かう。

4)「ブルー(アウトプット/5速ギア)」はタイヤからの入力(53.6km/h)により回転数を維持する。


よってイエロー、レッド、ブルーの3グループはそれぞれ回転数がバラバラになる。

変速時はこの3グループのそれぞれの動きが重要になってくる。





5)シフトを3速位置へ押し当てる。(クラッチは切ったまま)

6)シンクロが「ブルー(アウトプットシャフト/5速)」からの入力(回転)を使って回転数の下がった「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」の回転数を要求エンジン回転数の2420rpmまで昇速する。

7)「ブルー」「レッド」の回転数が同期すると3速へシフトが入る。





8)「イエロー(エンジン)」の回転数が要求エンジン回転数(2420rpm)まで達していない(現状1000rpmと仮定)為、半クラッチを行い「レッド」「ブルー」からの入力(回転)を使って、エンジン回転数を2420rpmへ昇速する。

9)回転数の上昇(同期)と共にクラッチを繋いでいき、シフトダウンを完了する。



以上が通常のシフトダウン時のトランスミッションの動きです。

上記のケースでは5速→3速へのシフトダウンでしたが、他パターンのシフトダウンでも流れは同じです。(回転数が違うだけ)

上記の5速→3速のシフトダウンの場合はエンジン回転数が1500→2420rpm920rpm上昇となります。しかし図の「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」回転数をその分上げないとギアが入らないので、シンクロが身を削って頑張って昇速してくれます。

この程度の回転差であればシンクロが調整してくれますが、極端な例では5速(1500rpm)→1速(6050rpm)などの場合は回転差が4550rpmもある為、シンクロでは昇速が困難になります。
※ギアが入らない/昇速に時間が掛かる。

ギアが入ったとしても要求エンジン回転数も大きい為、半クラッチでのエンジン昇速ではシフトショックが大きくなるし、ショックを嫌うと半クラッチ時間が長くなります。

また、「ギアを入れるのに時間が掛かる=クラッチを切っている時間が長い」なので、ギアが入る頃にはエンジン回転数もすっかり落ちてしまい、エンジンとミッションの回転差がより大きくなるという悪循環になります。



シンクロの性能は車によりけりですが、基本的にスポーツ(高回転)走行時の1速や2速へのシフトダウンはシンクロがついてこない事が多く、シフトダウン不可or時間が掛かるという不都合が起こります。

しかし逆に言えば、回転差が小さい状況ではシンクロ任せでシフトチェンジしても全く問題ないのです。(というかその為のシンクロです)




さぁ、ここまで来たら(読んだら)ダブルクラッチを使う事の意味が見えてきたのではないでしょうか?

それではダブルクラッチの動きを見ていきましょう。




※コルトラリーアート5MTのギア比で計算(たまたまギア比計算したものを持っていた為)
 (3.538/1.913/1.344/1.027/0.833)

●5速 1500rpm、53.6km/hで走行中の各ギアの要求エンジン回転数とトルクフロー。

5速:1500rpm
4速:1850rpm(⊿350rpm)
3速:2420rpm(⊿920rpm)
2速:3440rpm(⊿1940rpm)
1速:6050rpm(⊿4550rpm)


・5速で走行中も格段ギアは回転している(カウンターシャフトから回転を貰う)が、アウトプットシャフトとは繋がっていない為、空転状態。

・変速時はこの⊿rpm(回転差)分をシンクロが昇速する。

・⊿rpmが大きいほどシンクロの仕事は増え、同期(昇速)に時間が掛かる。





1)シフトダウンの為クラッチを切る。

2)「イエロー(エンジン)」は1500→700rpm(アイドル)まで低下へ向かう。

3)「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」は入力が無くなり、回転停止へ向かう。

4)「ブルー(アウトプット/5速ギア)」はタイヤからの入力(53.6km/h)により回転数を維持する。


よってイエロー、レッド、ブルーの3グループはそれぞれ回転数がバラバラになる

変速時はこの3グループのそれぞれの動きが重要になってくる。





5)ギアを5速→ニュートラル(以下N)へ入れる

6)クラッチを繋ぐ。
 ※これにより「イエロー(エンジン)」「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」の回転数が同期する。

7)アクセルを開け、エンジン回転数を上げる(1500→2420rpm以上)
 ※同時に「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」の回転数も上がる。





8)クラッチを切る
 ※「イエロー(エンジン)」の回転数は低下へ向かう。

9)ギアを3速へ入れる
 ※「レッド」「ブルー」の回転差は「無い~極少」の為、シンクロは殆ど作用せずギアは3速へ入る。





10)クラッチを繋ぐ
 ※先ほどクラッチを切った事で「イエロー(エンジン)」の回転数は低下へ向かっていたが、予め2420rpm以上としておく事で、この時点でエンジン回転数は2420rpm近辺になっている。

 ※「イエロー」レッドブルーの回転差は「無い~極少」の為、半クラッチはほぼ不要でクラッチを繋げる。



以上がダブルクラッチを使用したシフトダウン時のトランスミッションの動きとなります。


さて、通常のシフトダウンとダブルクラッチの違いが分かったでしょうか?

ダブルクラッチは通常シンクロで昇速される「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」エンジンで昇速する為、シンクロをほぼ使いません。
※”ほぼ”というのはシンクロは構造上少なからず作用するからです。


そのためシンクロによる昇速待ちや、過大回転差でのシンクロによる同期(昇速)不可発生しません。

そして「レッド(インプット/カウンター/1~4速ギア)」エンジンにより望んだ回転数にできる為、とんでもない回転差であってもギアチェンジ可能です。

※たとえ5速(2000rpm)→1速(8000rpm)のような6000rpmもの回転差であってもシフトダウンできます


あとは、「イエロー」「レッド」「ブルー」3グループの回転数が同期しているため、クラッチをぽんと繋いでもシフトショックが発生しません。

※シフトショックを減らす方法にブリッピングがあるが、あれはダブルクラッチと違いエンジンによる「レッド」の昇速を行わないため、通常のシフトダウンと同様にシンクロに依存します。最後のクラッチを繋ぐシーンで「半クラッチを使ってショックを消す」か、「回転数を予め上げてから繋いでショックを減らす」か。という違いです。




さて、ずいぶんと長々となりましたが。ダブルクラッチのメリットとデメリットをまとめてみましょう。

●メリット
・回転差が大きい状況でのシンクロ待ちが発生しない
・回転差の大きいシフトダウンでも変速ショックなしでシフトダウンできる
・どんなギアにでも入れられる。
・シンクロの消耗を抑えられる


●デメリット
・手間がかかる
・空吹かしする事になるのでその分の余計な燃料を使う



まぁ、こんなもんでしょうか。

ではこのメリットが生きるシーンは?

→スポーツ走行時の素早く確実なシフトダウン。そして変速ショックによる挙動変化の防止です。

つまり、「速く走るため」のテクニックな訳です。

速く走りたいなら絶対必要。そ~でない人にはいらん長物ですね。


デメリットに関しては慣れれば手間とは感じません(何も考えなくても出来るようなります)し、燃費をそこまで気にするならエコカーにでも乗ってください。という話。


あ、そうそう。ダブルクラッチが出来ないとヒールアンドトゥもできませんね。
※ヒールアンドトゥはブレーキとダブルクラッチの同時操作。


速く走るだけでなく「MT車で運転を楽しむ」という面でもダブルクラッチは習得が必要かと思います。(ヒールアンドトゥも。)

わざわざMT車を選んで乗っててダブルクラッチもヒールアンドトゥを出来ないのでは何の為にMT車に乗っているのかと・・・
 え、仕事?それはご苦労様です。



余談として、「シンクロのある今の車にはダブルクラッチは不要」という意見もちょいちょい(結構?)あるみたいですが、それって言い方次第では「自分は腕(技術)がありません(※)」って公言してるのと同じなので安易に言うのは止めたほうが良いかと思います。

※その領域まで車を使えていない/そういった走行ができない。という意味。

言うのであれば、「街乗りでは不要」などという条件をつけてから言いましょう。


な~んて言うと必ず反発して「俺はダブルクラッチがなくても速く走れるんだ」なんていう方が居るかもしれません。

なので「それで速く走れるならきちんとダブルクラッチ/ヒールアンドトゥが出来るようになったらもっと速く走れますよ?」って言っておきます。


「出来るけどやらない」「出来ないからやらない」は違うのです。


前者は”選択や判断”ですが、後者は”妥協や言い訳”ですね。



ダブルクラッチとヒールアンドトゥ。出来るようになると、出来なかった頃には戻れません。

どんなギアへでも抵抗なくスコっとシフトレバーが入っていくあの感覚。狙った回転数・必要な回転数への調整がバッチリ決まった時の感覚。半クラッチを使っていないのに変速ショックがないショックレスなシフトダウン・・・etc

それらを知っているとシンクロに頑張らせていた頃には戻れません。

シンクロ頼りでしか乗れない人はマニュアルトランスミッションというものの楽しさを半分くらいは損してると思います。

誰しも自分が知らないものの価値ってのは理解し難いものです。

出来ないまま不要だと切り捨てないで、出来るようになってからその上で自分に必要か不要か判断してみてください。



と、あまり発言が過激になり過ぎないうちに軌道修正を行います(笑)



●まとめ

・街乗りではダブルクラッチは特に必要なし。
・速く走る・楽しく走るためにダブルクラッチは必要。


街乗り程度ではダブルクラッチは基本的に不要だけど、様々なシーンでスムーズに走るという点では是非ダブルクラッチは欲しいかな。

変速ショックを無くすにはブリッピングでもいいけど、どうせやるならダブルクラッチをやって欲しい。(慣れれば手間はさして変わらない)

半クラッチ頼りで運転しているMT車乗りは・・・頑張ろう。安いオートマのキックダウンみたいなシフトダウンをしていては恥ずかしいでしょう。



●最後に・・・「これから習得を目指す人へ」

・ダブルクラッチが出来ない人はまずブリッピングによる回転数を合わせたシフトダウンから練習しましょう。
 ※まずは1速分落とす所から始めていき、慣れたら2速分落としたりしていきます。
 ※5→4速など高速ギアの方が簡単です

・ブリッピングによる回転数合わせが安定して出来るようになったら、途中にNギアに入れるという操作を追加しましょう。
 ※操作手順が増えて戸惑うでしょうが、とにかく手順に慣れましょう。

・その操作自体が出来るようになったら、色んなシーン色んなギアへシフトダウンできるように練習しましょう。

これでダブルクラッチは習得完了。

あとは、ヒールアンドトゥはブレーキしながらダブルクラッチをするだけ。簡単でしょ?


車速と各ギアの回転数は計算で出せるので、「5速→4速に落としたいのだけど、何rpmにすればいいのか分からない。」という場合は計算して目安を作ることをオススメします。



●おまけ



インプレッサの6MT(TY85)のモデル図

TY85の資料が少なかったので多少違うかも?大体は合ってる筈です(笑)
テーマ 日記
カテゴリー クルマ関係
ユーザー 由埜

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