東証

　産経新聞が運営するニュースサイト｢MSN産経ニュース｣の配信記事『西武鉄道の１日乗車券、再上場を記念して発売』に注目。

　10年前の2004(平成16)年暮れに上場廃止されて以来、株式市場での取引ができなかった西武鉄道株が、今年4月23日に東京証券取引所へ再上場された記念として発行される乗車券の紹介記事。


　しかし個人的には、西武鉄道の再上場を祝うつもりは無いし｢記念乗車券」とやらに興味も湧かない。




　一昔前のことなので、上場廃止に至った経緯をお忘れの方も多いかと思う。かいつまんで解説するなれば創業者一族が鉄道会社という極めて公共性の高い企業を私物化、遵法意識の欠片もなく有価証券報告書の虚偽記載を続け、多数の投資家に損害を与えた末に株式市場から退場を命じられたのだ。

　相応の資産を有し利用者数が安定的に推移している、西武鉄道始め大都市圏に路線網を持つ鉄道会社の株式は多くの機関投資家が保有しており、上場廃止で市場価値を喪失した西武鉄道株により数十億円単位の損失を計上させられた。　　


　それら機関投資家に対しては訴訟を通じて損害賠償が確定し、補償が進んでいると聞くが、金を返せばそれで終わり……というものではない。

　前世紀までは積極的に証券会社に出入りし、投資に興味を抱いていた若者(＝私)が、一切の金融商品から手を引いた最大の原因は、まさに出入りしていた山一證券の経営破綻。そして金融商品そのものへ不信を決定的にし、止めを刺したのが西武鉄道の証券取引法違反事件だった。
　山一證券から資金を引き揚げて以降、私は一度も証券会社の敷居を跨いでいないし、銀行その他の金融機関を経由しての金融商品取引にも手を出していない。

　
　私の中で「落とし前」が付いていないのに、どうして再上場だ記念乗車券だと浮かれられようか。




　一個人投資家、しかも些少な資金しか捻出できないゴミインヴェスターが何を言うかと笑われるかもしれない。
　そんな掃いて捨てる程いる個人投資家が差し出す小口資金でも、投資先企業に対する不信が連鎖し、東京証券取引所から一斉に引き揚げられた時に何が起きるか。投資の素人でも想像できよう。

　西武鉄道が本当に再上場を祝っていいとすれば、株式市場から締め出されていた10年間に投資から遠ざかってしまった人々全員の信頼を回復し、株式市場にお金を提供して貰えるようになってからだと思うのだが。