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イイね!
2006年04月11日

Nジャンのブログに応える

お友達の N‐JUNKIEさんの、このブログに応える。


暑い夏だった。

通りの向こう側の茂みからはセミの鳴き声が聞こえてくるのだが、まるで自分の頭の内側で鳴いているようにさえ感じる。
頬を伝ってきた汗は、気化熱を奪って一瞬の冷たさをもたらす筈だが、そんな効果もないままに、顎の先端から表面張力に耐え切れずにポタリと舗装路面に落ちた途端に染みるよりも先に蒸発して消えた。
茂みの向こうでは、救急車の音が鳴っていたが、セミの泣き声が聞こえるだけだった。



校舎裏に建てられた2階建ての体育館の一階にある武道場。さらにその裏では、夏休みもあと1週間だというのに、汗臭い柔道着をさらに汗でグショグショにした3人の男と、真っ白なポロシャツに、真っ白なスコート姿のテニス部員の女が5人、さらに何も部活動には参加していないが、どこの部にも顔を出す、いわゆる人気者のソイツがいた。

当番の教員しかおらず、切り開かれた丘の上に建つ高校の校舎裏には人目がない。彼ら彼女らは卑猥な話もすれば、とりたての免許と真新しい新車のバイク、いきさつは別として“先輩”から譲り受けたクルマの話題で盛り上がり、暑い午後をなんとか楽しく過ごそうとしていた。

「吸う?」目の前に差し出されたマイルドセブンと¥100ライター。
そいつとは1年の時に同じクラスで、身体の大きなオレに懐いていた。2年のクラス替えで別々になったが、こうしてツルむ間柄であった。小さな弟を可愛がり、いつも弟を学校帰りに迎えに行くという、なんともやさしい不良でもあった。身体は小さいけれど、「おれのドカンの方が太いぜ」と黒目がちな目をキラキラさせていやがった。

『んん?今はいいよ。練習が終わってからな』そう言って断ったが、似た台詞を1年前の夏にも言ったと、同じように断ったといって、腹を抱えて笑っていた。そんなに面白いかな?と不思議に思ったが、その時のそいつの笑顔が最後に見せた笑顔になるなんて、ちっとも思っていなかった。

「じゃあ、差し入れ買ってくんな」

そういってバイクに跨ったソイツは、2ストの音とオイルの匂いを残して、ウイリーして去って行った。


まるで帰ってくる気配はない。きっとそのままどこかへ遊びに行ったと思っていた自分らに、当直の教員が駆け寄ってくる。

アイツが病院に運ばれたと告げられたその教員の口の動きと、サンダルの先から見える白い靴下のつま先を妙に覚えている。

駆けつけた病院には、まだ幼い弟を連れたたった一人の肉親の父親がベンチからヨロリと立ち上がり、弟の手を引いたままペコリと頭を下げた。

「見てやってください。今寝ていますから」

きっと、包帯でグルグル巻きになって、折れた足を天井から吊っているんだろう。麻酔で寝ているんだろうと、初めて集中治療室という場所に足を踏み入れた。


いったい何本のチューブで繋がっているのだろう?

なんで、半分目を開いたまま寝てるんだ?


一車線の他愛のない交差点で、コンビニに向おうとして右折したソイツのバイクを、右折中の車両を掻い潜った車両が跳ね飛ばす。

いわゆる“右直事故”

1.5tにもなる車両が時速30キロほどで衝突したその瞬間に、ソイツは毎晩バイトをして買ったピカピカの新車とともに空を飛んだ。無残な姿になったバイクは公衆電話のブースの上に落下してブースを破壊した。おそらく空中でそのシーンを見ながら飛んだのだろう、そいつはその先の街路樹にたたきつけられた後に、奇妙な形でぶら下がっていたそうだ。救助にあたった隊員からその状況を聞いたと、親父さんがボソボソと教えてくれた。

今目の前に寝ているソイツの半分開かれた目は、その時の瞳のままなのだろう。


その後回復を祈るオレたちの祈りは1週間続いた後に、もう祈る必要がなくなってしまった。

ソイツは、もう帰って来ない。



夏休みが終わり、教室に入るとソイツの机に花束が置かれている。病院に勤める母親を持つ子が、一番新しい、そして一番聞きたくない事実を聞き、登校前に買った花束を手向けてくれたのだ。ユリの花の白と、花粉の黄色が濃かった。


学校側の発表では、このクラスの級長の男女だけが告別式に参列し、他の者は通常通りの授業を行うとのことだった。参列したい気持ちは分かるが、授業を抜け出したものは欠席扱いにするとも告げられた。

が、告別式会場には同学年のものが殆ど集まっていたので、通常通りの授業ってのはどうなったのだろう?と、ずいぶん経ってから思ったものだ。

「野菜を喰わなくちゃダメなんだ!」いつも弁当箱にキャベツをたくさん詰め込んでいたソイツの最後の乗り物には、多くの野菜が詰め込まれた。葬儀屋が生モノは止めてくれと散々言ったにもかかわらずに。

そして、大好きな野菜と一緒にソイツは、本当に俺たちの前からいなくなった。




今でもその交差点を通ることがある。
いや、なにかに理由をつけて通っていると言ったほうが正しいだろう。

町並みはすっかり変わり、アイツが行こうとしていたコンビには、姿を消してマンションになってしまった。
公衆電話はISDNのものに代わり、あの街路樹は大きくなって、暑い夏には大きな大きな日陰を作っている。

今でも手向けられた花束の空き缶が、サビサビになってガードレールに括り付けられている。

くくりつける針金は何代も替わったけど。
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Posted at 2006/04/11 10:55:54

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この記事へのコメント

2006/04/11 22:23:48
なぜ、皆さん 取り返しのつかない悲しい思い出があるのでしょう?

お前はいいなぁ~ 今でも若くて・・
でも、一緒に歳を取りたかったぞ!

ふたつ下の親戚は、トレーラーに突っ込まれて・・
彼の命日も夏・・もうすぐ23回忌。
コメントへの返答
2006/04/14 13:26:43
悔やんでも悔やみきれない

泣き喚いても、どうにもすることが出来ない

同じ過ちを繰り返さない、繰り返させない、その思いだけが残っています。
2006/04/12 00:02:21


交通事故に明日はない・・・
  ・・・加害者も被害者も

この言葉が胸に突き刺ささる思いです





コメントへの返答
2006/04/14 13:30:04
ビタッっと止まった時間軸だけが、いまでも胸の中にあります。

2006/04/12 21:07:14
どうもです。

書き込み教えてくださればよかったのに・・・・。

私もあんなことがあったので我が愛車GT-R購入は自分の両親は猛反対。
購入までは至難の技でした。
コメントへの返答
2006/04/14 13:42:39
トラックバック忘れていました(謝)

自分は2輪を絶ちました。

いくら自分自身が安全運転を心がけても、どこから事故という“悪魔”が大きなカマを振り下ろすか分からないということを教えられたと思います。
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