先日、”イノバティブ体験”とのタイトルでブログを書き、プロダクトの価値を考える際に重視されるべきものの一つは革新性であるが、プロダクトに本来的に備わる革新性とは別に、個人体験としての革新性もある、といった主旨の話をさせていただきました(No.282)。今回は全く別の話題にはなりますが、この”プロダクトに属する革新性”に関連した話をしたいと思います。
さて話をがらっと変えて進めますが、日本のクルマ業界における権威ある賞として皆さんよくご存知のとおり日本カーオブザイヤー(Car Of The Year; COTY)があります。実はこの賞の選考基準は明確には決まっていません。おおよそ、世に存在する賞において選考基準が明確にされていない賞には碌なものはないというのが通り相場ですが、この点を取り上げて批判したブログを過去には書いたりもしました(
ここ)。
今回、直接批判とは別の視点からアプローチすべく、COTYを反面教師とし、かつそのデータを利用して、「真に価値のあるクルマとは何か」について自分なりに考察したいと思います。すなわちクルマの明確な評価軸として、「広い意味での革新性の大きさ」を基準として設定し、過去のクルマについて再評価するのです。それにより、「歴史的視点から見て革新性を有していたと明確に評価されるクルマ」として ”Innovative Car Of The History”、すなわちCOTYならぬICOTHを贈呈しようというアイディアです。
具体的には、以下の①~③のステップを踏んで進めるプロセスを考えています。
①受賞後10年を経過したCOTY受賞車を対象とする
②登場10年を判断時期として、そのクルマが「革新的であったか」を評価して
Innovative Car Of The Decade; ICOTDを選ぶ
③ICOTD車の中から、さらにICOTHに相応しいクルマを選択する
①を採用したのは、過去の全てのクルマを一から評価することは自分の手には負えない難事業になりまず不可能なこと、また基準が不明瞭とはいえ、COTY選考にはその時点での革新性の有無が考慮されていることはまあ間違いないと思うからです。なので、ここでCOTY受賞車をベースに検討を開始しても致命的な取りこぼしや誤判断はないであろうと考えました。次に対象を受賞後10年以上とし、②のようなプロセスを踏むのは、今回の試みの核心でもあるのですが、おおよそ、モノの革新性については、登場後に世の中に及ぼした影響を評価することなしには、正確には判断できないから、という理由です。ただし、評価の目線を合わせるために対象期間は登場後10年を一つの目安にしたいと考えています。
さて、如何でしょうか?これから複数回に渡り、このような段取りで話を進めていくとして、今回は評価の対象となるクルマたち、24台を以下にリストしたいと思います。
(第一期)
1980年 ファミリア(マツダ) ~1989年まで
1981年 ソアラ(トヨタ) ~1990年まで
1982年 カペラ/テルスター(マツダ/フォード) ~1991年まで
1983年 シビック/バラード(ホンダ) ~1992年まで
1984年 MR2(トヨタ) ~1993年まで
1985年 アコード/ビガー (ホンダ) ~1994年まで
1986年 パルサー/エクサ/ラングレー/リベルタビラ(日産) ~1995年まで
1987年 ギャラン(三菱) ~1996年まで
1988年 シルビア(日産) ~1997年まで
1989年 セルシオ(トヨタ) ~1998年まで
(第二期)
1990年 ディアマンテ/シグマ(三菱) ~1999年まで
1991年 シビック、シビックフォリオ(ホンダ) ~2000年まで
1992年 マーチ(日産) ~2001年まで
1993年 アコード(ホンダ) ~2002年まで
1994年 FTO(三菱) ~2003年まで
1995年 シビック、シビックフォリオ(ホンダ) ~2004年まで
1996年 ギャラン/レグナム(三菱) ~2005年まで
1997年 プリウス(トヨタ) ~2006年まで
1998年 アルテッツァ(トヨタ) ~2007年まで
1999年 ヴィッツ/プラッツ/ファンカーゴ(トヨタ) ~2008年まで
(第三期)
2000年 シビック/シビックフェリオ/ストリーム(ホンダ) ~2009年まで
2001年 フィット(ホンダ) ~2010年まで
2002年 アコード/アコードワゴン(ホンダ) ~2011年まで
2003年 レガシー(スバル) ~2012年まで
次回から第一期に属する10台について順に取り上げていって、ICOTDとして何を選ぶかにつき考察を進めて行きたいと思います。さて、どうなりますことやら(汗)。
追記:
今回、COTY受賞車をリストしましたが、これはこれで結構面白いですね。クルマの記憶が蘇り、「ああそんなクルマもあったなあ」、と思うとともにに、その時代の自分自身についての思い出も同時に呼び覚まされる訳です(笑)。またリストを眺めているだけでも、今回のこと以外にも色々と考察できそうですが、それはまた別の機会にということで。
ちなみにひとつ。COTY受賞メーカーを回数順に並べると、ホンダ(8)、トヨタ(6)、三菱(4)、日産(3)、マツダ(2)、スバル(1)となります。企業規模にも必ずしも一致してませんが、独立不羈のトップ2はやはりCOTY受賞歴でもリードしているといえます。対照的に技術の日産などとハードウエア作りに一定の評価がある日産が今ひとつ受賞歴が振るわないのも興味深いところです。
了
Posted at 2013/02/24 13:54:11 | |
トラックバック(0) |
クルマ評価 | クルマ