2018年02月20日
佐山芳恵再び、・・(^。^)y-.。o○(29)
「大人なんだから泣いているんじゃないの。ちゃんと話しなさい。」
こんなことに付き合わされてだんだん腹は立ってきた僕はさらに畳み掛けるようにテキエディに尋ねた。
「ねえ、そんなにきつく言わないでもう少し穏やかに優しくしてあげないと言えることも言えなくなってしまうわ。だからもう少し穏やかに、ね。」
女土方は優しいが、僕にはどうしても理解ができない。僕が男だったころもその手の写真やビデオなどを残そうという気は全くなかった。その最中は愛があろうとなかろうと優しく楽しく、そして淫らに楽しくがモットーだったが、それを記録に残してもリスクになるだけというのが僕の思うところだった。
「女ってやっぱり好きな人にせがまれると弱いんだと思うわ。それは私も分かるような気がするわ。」
女土方がそんなことをつぶやいた。こっちは立場としてはせがむ方を長く続けてきたので、せがまれればアジの開き写真を撮らせるという気持ちは何と言われても理解はできなかった。それなら女土方は僕が頼めば応じてくれるのかな。でもそんなものを残してもそれが何時どこで僕らに牙を剥くか分からないじゃないか。そうした潜在危険因子は排除するのが危機管理の原則だろう。
「それで私は何をすればいいの。このことで。」
「それを相談したいの、こんなことを止めさせるためにはどうすればいいのか。」
何をバカなことを言っているんだ。事ここに至った以上話し合いの余地などあるものか。自存自衛の場合には武力行使も認められるんだ。止めさせるには相手が『もう参りました。勘弁してください。』というまで戦うしかないだろう。
「とことんやるしかないでしょう。相手が『もう参りました。もうしません。』というまで。」
「話し合う余地はないのかしらね。」
女土方は外交交渉に一縷の望みを託しているようだが、もう外交交渉で何とかなる時期は過ぎている。敵はすでに写真をネットで公開するという武力行使に出ているのだからこれを止めさせるには法的措置という武力行使しかないだろう。
「復縁を迫ったり危害を加えるなんてことはないの。ストーキングっていうの、その手の行為は。」
僕はテキエディに聞いてみた。それでもテキエディはしゃくり上げるばかりで何も答えなかった。
「ほら、何を泣いているのよ。自分がしでかしたことでしょう。これはあんたの命にかかわることなんだからしっかりしなさい。危害を加えられてからじゃあ泣くこともできないのよ。こうなったことはあんたにも責任があるのよ。相手の男ばかりが悪いんじゃないの。あんたも悪いのよ。分かっているわね。」
僕はめそめそしているテキエディに気合を入れてやった。
「メールが来たり、郵便受けに手紙が入っていたり、・・・。戻って来なければ考えがあるって、・・・。」
テキエディは途切れ途切れに脅迫を受けていることを話した。
「ねえ、ちょっとクレヨンを呼んでいい。」
女土方がちょっとけげんな表情を見せた。ここでクレヨンを呼んでもあのサル並みの知恵では役に立たないと思ったのだろう。
「あんたは一人暮らしでしょう。取り敢えずは身の安全を確保しないとね。あの家なら警察よりも安全でしょう。」
僕がそう言うと女土方も納得したように肯いた。この先のことは打つ手はいろいろとあるだろうが、僕は民事訴訟による画像の削除と慰謝料の請求、そしてそれが聞き入れられない場合は刑事告訴という方法を考えたが、弁護士とよく相談してから決めようと二人に言っておいた。テキエディの一時避難についてはクレヨンも一も二もなく受け入れて金融王に電話をすると同居人が一人増えると伝えた。
金融王もクレヨンが言うことにはほとんど無条件で受け入れるようで何の問題もなかった。もっともあの家で同居人が一人二人増えるくらいは何でもないことだろうが。その晩は金融王の家でクレヨンの部屋にテキエディを押し込んだ。こいつ等は、お互いに何だかんだと言いながらレベルが同じなのか、結構気が合うようだ。このところ沈み込んでいたテキエディの表情にやっと笑顔が戻って来た。しかし、テキエディの笑顔を取り戻すのが目的ではない。問題を解決するのが目的だ。それには何があったのか、どんなことが起こったのか、状況を把握しないといけない。
「ねえ、これからいろいろとあなたのことを聞かないといけないの。でもね、脚色しないで正直に話してね。言い難いこともあると思うけど。」
テキエディはまた暗い顔に戻ってしまったが、これもやむを得ないだろう。まあ、そうしてあれこれと聞いてみたところ、相手というのは我々と同業の編集者のようだった。テキエディはいわゆる非常勤派遣社員だから特に他の会社の仕事をしても問題はなかったし、それなりに手広くやっているのは知っていた。そしてそんな手広い人間関係を利用してその中で適当な相手を見繕っては恋愛を繰り返しているのも知っていた。それはそれで生き方なんだろうし、恋多き人生をとやかく言うつもりもなかったし、僕自身も人様に誇れるような生き方をしてきたつもりもなかった。ただ、こんな問題を背負い込まないと良いとは思っていたが。
ずっと以前にクレヨンに聞いたことがあったが、そしてそれが女土方と大問題を起こすきっかけとなったことだが、それは、『女はどういう時に男に抱かれたいと思うのか、それを決心するのか』ということだった。体は女でも僕のソフトは男だから八つ裂きにされようとも男に抱かれたいなんて欠片も思わないが、女にはそれなりに思うところがあるんだろう。でも、テキエディは時々クレヨンと、『昨日さあ、ちょっとやり過ぎちゃってさあ、そんなつもりはなかったんだけど、まあいいか』なんて会話をしていたので案外お手軽なことなのかもしれないが。それでその編集者からそれなりに仕事を回してもらったりしているうちに食事に付き合い、酒に付き合い、そしてまあそういう関係になったらしい。
テキエディは相手が所帯持ちとは知っていたようだが、相手があまり親身になってくれてそのうち情が移ったようだった。それでも相手が所帯持ちということで添い遂げるなどということは考えていなかったようでどこかで区切りをつけないといけないとは思っていたようだった。
ブログ一覧 |
小説3 | 日記
Posted at
2018/02/20 17:07:36
今、あなたにおすすめ