車・自動車SNSみんカラ

  • 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
2016年12月05日 イイね!
GT—R MY17はなぜか艶歌がよく似合う〜『ベスモ同窓会編集部』カズマ君の試乗記もどうぞ〜


 あっという間の師走入り。取り掛かったまま、いくつかのテーマが眠っている。申し訳ない。怠け心に鞭打って、iMacに向かっている……。
 ⭐︎    ⭐︎    ⭐︎    ⭐︎    ⭐︎
 2017年モデルのR35 GT-Rを専有して3日目、RJCカーオブザイヤー最終選考会で「ツインリンクもてぎ」に遠征する朝が来ていた。

 真っ先に血圧を計測した。120/67/60。うむ、この数字なら大丈夫だろう。
 なにが大丈夫なのか。決まっている。この日はMY17との時間をたっぷり楽しむつもりであったからだ。
 しかし、単独のドライブについては、最近、周りからブレーキをかけてくる気配がヒシヒシと感じ取れるだけに、遠出の場合は、どなたか、都合の一致する方にお付き合いいただくようになった。
 運よく今回も、同行者、めでたく調達。

 午後2時。実は、最寄り駅前のロータリーで、同じRJCメンバーの飯嶋洋治さん(このところ、頻繁に、いや常時、登場していただいてますな。お世話になります)と待ち合わせていたのである。
 何しろ、MY17の地を這う姿をご存知ならお分かりいただけるだろうが、一段高いところに陣取っているわたしの棲むマンションの駐車場への出入りには、やたらと神経を使わなければならない。
 アプローチの傾斜で、かりにバックで入ろうとしても、かなりアングルを斜めにしていないと、間違いなくチンスポイラーをガリッとこすってしまう。

 それが嫌だから、2キロほど離れた懇意の自動車修理工場に預けてあった。だから出迎えた車がプログレになってしまった。

「えっ!?」と飯嶋さん。この日の主役に異変でもあったのか、と心配する想いと、落胆しそうなのを一つにした表情が、素直に出ていた。


*いつもお世話になります飯嶋さん。でもこの恍惚の表情。クルマ好きガ滲み出ていますなあ



 20分後、オレンジカラーのMY17は関越自動車道を北へ向かって快走していた。ステアリングは当然、この日を楽しみにしていたRJCのホープさん。MY17を引き取った時にオートロックKEYを渡し、一旦、わがマンションまで引き返しプログレを駐車スペースに納めてから、関越・圏央道経由で真岡に出て、モテギ入りするよ、と告げていたのだ。

 助手席に収まっていると、ドライバーの心理が結構、読めるものだ。
 ETC専用の料金所のバーが跳ね上がると、前方がいきなりひらけた。
 と、それまでの「CONFORT」モードで「街走り」をキープしていたドライビングスタイルを、飯嶋さんが豹変させる。

 左手がスッとセンターコンソール上部に陣取った「セットアップスイッチ」の右端に伸びる。
 そしてセットアップスイッチを上へ押し上げた。
 続けて真ん中の足回りを決め込むバーを、チョンと押し上げた。
 それに合わせてアクセルを踏み込む。
 恐らくそれをやりながら、ステアリングの裏側に位置するパドルシフトを手前に引き、マニュアルシフトにしておいたのだろう、いきなり MY17はセクシーな喚声をあげると、猛獣と化した。
 おお、これがGT—Rだよ。
 路面を掴む、猛獣の昂りが、なんともセクシーじゃないか。
 しかし、それもほんの30秒足らずの「特別の時間」で、すぐに周りの流れに従わなければならなくなる。

「この先の三芳サービスエリアで珈琲ブレークにしょうか」
 サッと左側車線へ寄る飯嶋GT-R。この方、いつも素直なンだよね。

 スタバ珈琲で一息入れたところで、ここからのドライバーはお任せあれ、と宣言する。
 スポッとお尻が収まる快感がなんとも好ましい。
 日産のクルマって、どんなにご無沙汰していても、操作系のスイッチが同じ位置に収まっているので、戸惑うことはない。扱いやすい。それに1972(S47)から6年間、スカGを3台乗り継ぎ、富士フレッシュマンレースでは、サニー、パルサー、EXAのお世話になっている。日産のDNAがしっかり染みついている。



 好ましいスピードレンジに MY17を導いた。 
 オートマティックに預けたままだから、こちらは鼻歌交じりとまでは言わないが、なんだか咄嗟に浮かんできたメロディーと歌詞がある……。

♪好きよ あなた 今でも今でも  
 暦はもう少しで 今年も終りですね

 おひょ! 吉幾三の『雪国』じゃないか。なぜ『雪国』なのか?
 答えは簡単。MY17に向かって、ただ、「好きよ、あなた」と歌いかけたまでのこと。でもなんだか、MY17って艶歌の匂いがするよ。

 と、その時、背後から黒いスポーツカーが迫ってきた。おお、RX-8。そして左サイドにひらりと車線をかえると、あっという間に、こちらを誘うようにして前へ駆け抜けて行った。

 ♪逢いたくて恋しくて 泣きたくなる夜
 追いかけて 追いかけて……追いかけて 雪国

 ほんとうは、無礼なRX-8を追いかけてやりたかった。が、もうすぐ鶴ヶ島JCTで圏央道へ分岐点が迫っていた。あそこのループが結構、きついんだよね、と減速モードに入り、川島、桶川方面を目指した。





 路面にぴったり貼りついた4つの脚。まるで、いま流行りの運転支援システムに導かれているかのように、軽く切り込んだスレアリングが、無修正のまま、ループに対応していく。ドリキン土屋が筑波の第1コーナーに飛び込むなり、
「動きがいいなあ。しなやかだなあ。ヒューっと入っていくよ」
 を、連発したのを思い出してしまう。おっしゃる通りだよ。そう共感できたところで、アリティメイトシャイニーオレンジ色のMY17は、待ちに待った直線路へ流入していく。待ちうける「Rモード」への変換……その誘惑に、わたしは耐えた。菖蒲SAの標識が見えたところで、わたしのこの日のドライビングは完了。改めて、飯嶋さんにバトンを託したのである。
(この項、つづく)

 さて、ここで「リトルマガジン」を同載したい。
「ベスモ同窓会編集部」研修スタッフの一人、九郎田一馬君(ご存知のカズマ君のペンネーム)の試乗レポートを紹介させていただく。モテギへ赴いた前々日の土曜日の箱根で、仁川一悟君とペアで試乗する機会をプレゼントした時のものである。

 わたしが踏み込むのをグッと我慢した「Rモード」の世界がそこにあるので、ご参考までにぜひどうぞ。

●GT-R 2017年モデルの「進化」を試食する   九郎田 一馬

 10年ひと昔…とはよく言ったもので、2007年のデビューから来年で10年目を迎える日産GT-R。普通に考えれば次期モデルの声が聞こえてきても何らおかしくはないタイミングではあるものの、いまだ一級品の性能と名声を備えているのは、ここに至るまで毎年のように絶え間なく進化を続けてきた成果とも言えるでしょう。

 そして今回の2017年モデル。外装はコストのかかる鉄板プレス部品も変更、内装にいたってはフルモデルチェンジとも言えるほどのデビュー以来最大規模の変更が施された1台。おそらくはあと最低でも3年は現行モデルをつくり続ける!という日産の強い意志を感じるその進化のほどをお届けしたい。



 と言いつつ、毎年のように絶え間なく進化を続けてきたとはいえ、いまでもディーラーでの試乗が実質的に不可能とも言える状況である以上、実際にそれら全てを毎年つぶさに乗り比べることができたのは一部の関係者、もしくは毎回買い替えを繰り返してきた熱狂的GT-Rファンしかいないでしょう。
 かくいう私も、R35 GT-Rは2009年モデル以来。いまやエンジンパワーは570psと、当初の480psから90psも向上。ゆえに価格も2007年モデルは777万円スタートだったものが、17年モデルはPure editionで922万3000円(ともに税別価格)とおよそノート1台分の約145万円上昇しています。もっともこれは初期型777万円スタートが大バーゲンかつ戦略的な値付けだったともいえますが……。



 特徴的なドアノブを指で押しながら引っ張り着座。シートも初期型から比べれば随分と進化を遂げているものの、GT-Rの戦闘力の高さを考えるとやはり専用RECAROかNISMOに装着されるホールド感とローポジションなシートが欲しくなるところ。インテリアはものの見事にガラリと雰囲気を変えて一新。質感も増しており、ナビの画面の大きさ・操作系もイマドキのものとなって、10年間のギャップは随分と埋められた印象です。逆にメーターまわりだけが従来と大きく変わらない事の方に違和感を覚える方も多いのでは? ステアリングも新たなGT-R専用品を採用…ではなく、今度から北米向けスカイラインクーペと同形状になるのがスペシャル感という意味でも少し残念。コラム固定からステアリング固定に変わったパドルシフトもこのあたりの事情が関係しているものと思われます。

 エンジンをスタートさせゆっくりと動き出す……。確かによく言われている通り、以前のGT-R比べて静かに、滑らかになったのが印象的。とくにリアから聞こえてくるトランスミッションの賑やかな音は随分と影を潜め、路面からの衝撃も幾分和らいでいる……と感じるのは、あくまで従来型GT-Rに乗ったことのある、経験のある方が相対評価で得られる印象。絶対評価でいえば、“最速の称号はあくまでNISMOが請け負い、ノーマル基準モデルでニュルブルクリンクのタイムを追う必要がなくなった” この17年モデルでも、“タダモノではない”感は相当に強いというのが率直な感想。脚はハードで(これでも随分改善されたほう)ボディ剛性は減衰の逃げが全く感じられないほど強靭で、油圧式パワステはずっしりと重く(再:これでも随分改善されたほう)、動き出しにちょっと癖のあるDCTに、とにかく抜群によく“キク(効く)”けれど同時によく“ナク(鳴く)”ブレーキなどなど……。しかしながらモデル中盤で追加された“SAVEモード”を利用すると、街乗りでの柔軟性は随分と増しており、ある程度の取り扱い易さは実感できます。



 と、そんな細々した事を考えていても仕方がないので、いざGT-Rらしさを発揮すべくスピードを上げていくと、その破壊的な加速力とトラクション性能の良さに惚れ惚れ…否、ちょっと恐怖を覚えるほどに圧倒されます。アクセルペダルのストロークが長めな事もありますが、スロットルOFFの減速だけで首がつんのめる(それだけ加速Gが強烈)感覚を味わえるのがこのGT-R。DCTのつながりもよくスムーズに吹け上がる……なんて考えている余裕なんてなく、1~2速はあっという間。3速に入ってようやくエンジンフィールを確認できるゆとりが産まれます。アクセル全開を公道で合法的に味わえるのは、おそらく2~3秒あたりでしょうか。少しでも路面温度が冷えていれば、前255後285の巨大で強烈なグリップのダンロップの20インチランフラットタイヤを空転させるその加速力。のんびりゆっくり走っている時にはいまいちスムーズでない6速DCTも、飛ばす際には待ってました!と言わんばかりの電光石火シフトで何の躊躇も違和感もなし。その圧倒的な速さと重さをキチンと支え限界領域が全く分からなくなるサスペンションとボディ、そして何よりこの高速巨体をがっしりと受け止め速度を殺すスチール製で最高峰といえる(あのポルシェに負けるとも劣らないと思わせてくれる!)素晴らしいブレーキ。この圧倒的な速さというステータスを見せつけられると、いやはや参りました……そういってしまう迫力がこのGT-Rには備わっています。そこに10年という月日は良い意味で熟成と進化という形で表れていると言えるでしょう。

 そうは言いつつさすがに古さも隠しきれない……速いという価値を除けばクルマとしての味わいってまだまだ薄いんじゃないか……そんな声も聴かれることでしょう。しかし、他のどの車にも似ていないし真似できない、この車でしか味わえない世界観“GT-R world”がしっかりと築き上げられていることは、日本車として賞賛に値するレベルにきている事は間違いありません。昨今の第2世代GT-Rの中古車高騰の話題を耳にする度に、実は世界でGT-Rの良さ凄さを1番スルーしているのは日本人なのでは……そんなことを考えつつ、「紅葉と蜜柑色との濃厚なアンサンブル」を存分に味わうことができた秋晴れの1日でした。
       (もう一人のインプレッションレポートは次回に)
Posted at 2016/12/05 23:05:35 | コメント(1) | トラックバック(0) | 還暦+20歳の青春 | 日記
2016年11月25日 イイね!
初雪が招き寄せてくれた『探し物』  〜「諦めさえしなければ、きっといつかは」のこだわりを!〜




 韓国語で初雪のことを「チョンヌン」と呼ぶことを教えたくれたのは、韓流ドラマブームに火をつけた『冬のソナタ』のぺ・ヨンジュンとチェ・ジウ姫のカップルだった。

 韓国の恋人たちは初雪の日をとても大事にしている。プロポーズや告白をしたりするほか、初雪をみると連絡を取り合ったりする。連絡を取らなければ、別れの原因になったりもする、という。



 クリスマスイブの日、約束の場所に立ってチュンサンが現れるのを待つユジンに、白いものが降りかかる。
「あら、チョンヌンだわ。嬉しい」
 しかし、ヨンさんはやってこない……いや、来ることのできない哀しい事情が起こっていた。あのラブストーリーを家人と一緒に見てから、もう10年が経ってしまった。
「冬ソナの舞台、春川(チュンチョン)に連れ行ってやるよ」
 あの約束は、空手形のままだなア。

 前夜から、TVの天気予報が盛んに、祭日明けの24日は積雪するだろうといっていたが、的中した。午前8時、西側の窓の外を、白いものが舞いはじめていた。向かいの邸宅の屋根はすっかり白化粧を終わっているではないか。



 特に外出する予定はない。「みんカラ」も「R35 GT-R MY17」の続編に取り掛かったが、気になる調べごとがあって、そちらへ方向転換する。

 そろそろ公開してもいいだろう。
 半年ほど前の「みんカラ」Special Blog(6月6日掲載)で“『局長』が局長になるまでの『仕事』を掘り起こす”(こちらをクリック)を連載すると予告し、週刊現代の創刊期に新入社員のわたしが体験したことをボチボチと書き進めはじめたところ、それを是非、大急ぎに仕上げて単行本にまとめないか、といってくれる出版社が現れたのである。

 旧知の間柄だし、こちらも、取り組むとしたら今しかない、と考えていたから話はトントンとまとまった。

 出版の目標は2017年の3月。果たして書き上げられるかどうかは別にして、改めて確認したいことや、読まなければならない資料が山ほどある。そんな中で関わりのあったジャーナリストや評論家、作家からいただいた書簡もあるはずなのに、行方不明なのだ。この1ヶ月、時間をつくっては心当たりの書類袋や収納棚をゴソゴソやっているのだが、なかなか辿り着けないでいた。半年前にはどこかにあったのを見ているのに……。


*右から作家の藤原審爾さん、中央が大森実さん、そして左が日刊ゲンダイの元社長だった川鍋孝文さん。残念ながら、皆さんはすでに鬼籍の人となった。

 雪の降りしきる窓の外をぼんやりと眺めていたら、ひょいと頭に浮かんでくる場所があった。家人が封筒や切手を収納している、抽斗のついた、ガラス張りの扉を持つ、北欧家具調の本棚である。

 期待をこめて南ベランダ寄りのリビングルームへ。抽斗は上下に2段、それも4つあった。その左端、上段の抽斗に目星をつけて、手前に引く。おお、手紙類の束があるではないか。その中に、国際事件記者で鳴る大森実さんがカルフォルニア・ラグナビーチから送ってくれた7枚綴りの「近況」や、国民的歌手、三波春夫さんからの見事な筆書きの礼状が、家人の手で保存されていたのだ。
「あったぞ!」
 歓声をあげると、家人が何事かと顔を出す。説明すると、
「あら、それなら訊いてくれればよかったのに……」
  蔵ってある場所は決まっているじゃない、と、いつものやりとり。

 黄ばみ始めた大森実さんの名前を刷り込んだ便箋を読んでみる。そうだった、と往時の記憶が蘇る。大森さんとは、2度目の週刊現代務め(1972=s47から2年間)をした際に、大ヒット連載『直撃インタビュー』で深く関わり、爾来、数多くの仕事を共有してきた。

 真っ先に用意しないといけないレジュメの構成に、だんだんと肉付けができはじめたぞ。初雪の効用のおこぼれだな。

 窓の外は、雪が斜めに降りしきっている。風が出て来たのだろうか。
 午後4時。また、ひょいと気がついた。近くの図書館で借りていた葉室麟の『日本人の肖像』の返却日が過ぎていないか、ということだった。案の定、23日が返却日。早速、図書館に電話を入れてみた。祭日の翌日だから休館している恐れがなくもない。が、大丈夫、やっていますという返事。

 薄く雪化粧をしたマンション玄関からの階段を、傘をさして下りていく。雪の降りかたは弱くなっていて、足元も雪で滑るほどではない。マンションを出る時、ちらりと駐車場を見る。わがプログレのルーフは白雪を冠っていた。あとで雪下ろしをしてやらなくては。



 1日遅れの返却を咎められることもなく、さらに新しく1冊の本を借り出した。同じ葉室麟の小説『鬼神の如く(黒田叛臣伝)』である。秀吉の軍師・黒田官兵衛の跡を継いだ長政の嗣子・忠之と、その陪臣・栗山大膳との葛藤を描いた「お家騒動」もので、かねてから一読を狙っていたものだが、なかなか借り出す機会に恵まれなかった。これも「チョンヌン」の効用か。「OH、ラッキー!」と相成った。

 早く読んでみたい。ついつい、心を急がせて、雪上がりのいま来たばかりの道を、速足で取って返した。

「ただいま!」といった途端に、何か変だと気づいた。そうだ、図書館の傘立てに、傘を置いてきたままだよ、と。いけない、あの傘はとても大事な想い出のこもったものの一つであった。

 再び、急ぎ足で2度目の、図書館への道を急ぐ。「アリマツの花見傘」と名付けている、今はなき旧友の遺品は、大人しく傘立ての端っこでわたしが迎えに来るのを、待っていてくれた。

 雪は完全に上がってしまっているが、昏(く)れはじめた空へ向かってパッと開いてやった。地色が淡いベージュの布地。グリーンのストライプが3本ずつ粗い束になって、縦横に交差している。そしてもう1本、薔薇色の線が走っていた。どこかで出逢ったことのある織物の世界! 雪に塗れた地色が鈍い光りに透かされて、沖縄特産の芭蕉布を連想させたのだった。

 グリップの感触が妙に温かい。クルリと湾曲しているあたりが偏平になっていて、男性用香水で有名なブランド名の「ARAMIS」と焼印が捺されている。






 図書館に続く銀杏並木の下へ一歩、踏み出した。わが左手は、いまは亡き友の指と連帯しているみたいだった。なんという心地よさ。アラミスの傘、か。ふと気づいた。アラミスのスペルにTUを加え、ちょいと順列を崩してやれば、「ARIMATSU」となってくれるじゃないか。TUって、フランス語で親しい意味をこめた「きみ」だったな。
「おい、有松よ。そうだろ?」
 にわかに、風が騒いだ。樹々がざわつき、ヒラヒラと黄色の葉が舞い落ち、傘が揺れた。
「おっ! 有松が返事している!」

  このすでに20年も昔に鬼籍の人となってしまった旧友・有松正豊は中学時代からの仲。北九州で歯科医を営んでいたが、台湾へ旅立つ飛行機のなかで変調し、異国で逝ってしまった。

 きみ逝くと 電話の奥で 妻のふるえ声     
 信じてなるかと こころ踏んばれど
 ふき出る涙 とめどなし
 きみよ いま一度 逢いたし
 いま一度 きみが笑顔に 染まりたし
 きみが笑顔は われらが宝物なりしを

 有松の死を確認した日、詩のようなものを記ためてしまった。そうでもしなければ、心が鎮められなかった。もちろん、彼との別れの式に北九州まで向かい、列席させていただいた。

 有松家を辞して斎場へ向かおうと外へ出た。雨足が強まっていた。
「どうぞ、これを使って。有松が使っていたものよ」
 差し出された傘にこめられた夫人の想いが、切なかった。
「うん、遠慮なく。東京まで持って帰りますね」

 それ以来、ずっとこの傘だけは、わたしと一緒に暮らしている。

 この旧友については、いまや幻となった西日本サーキット(美祢サーキット)を舞台にした「《お邪魔虫》故郷に錦を飾る!」と題した長いレポートの後半で紹介してある。よろしかったら、ぜひお立ち寄りいただければ、この辺のニュアンスがもっと深くお伝えできるので、是非どうぞ。





 賑やかな、子供達の歓声がきこえる。台地の斜面を利用して出来上がっている公園が、にわかに白いゲレンデと化していた。その楽しそうな光景を、おそらく「ムクゲ」とおぼしき、アオイ科のピンクの花が、見守っていた。(追記:後日、皇帝ダリアとその名が判明)

 11月24日。この初雪の日に、もうひとつ大事な探しものが手元に帰って来るのだが、それは別の機会に譲り、これにて「FIN」としよう。
Posted at 2016/11/25 21:24:13 | コメント(2) | トラックバック(0) | 局長の仕事 | 日記
2016年11月18日 イイね!
GT—R 2017年モデルで行く『RJCイヤーカー選び』の日〜日産セレナ2部門制覇とVOLVO XC90の栄光〜

【左のショットは色づく秋を楽しみながら、ホテルツインリンクからサーキットへ向かうR35 GT-R MY17]】


 年に1度の「ツインリンクもてぎ」詣でがやってきた。日本自動車研究者・ジャーナリスト会議(通称RJC)の2017年次カーオブザイヤーの最終選考会は、そのテストデイに備え、サーキットに隣接する高台のホテルに前泊できる(もちろん、自前)仕組みになっている。さて、今年はどの車で行こうか? そちらの選定の方が、正直いって、気軽で楽しい。

 4年前の2013年次はNISMOバージョンのフェアレディZで往復した。何しろその年の日産からは、三菱自動車とのジョイントで送り出した「デイズ」が辛うじて予選(シックスBEST)を通過したに過ぎなかった。加えて、その年の9月の8日間、2012モデルのGT—Rと「同棲」した余韻がたっぷり残っていた時期だ。ためらいなくNISMO特製のZを選んだのである。

 2014年次は、予選落ちで試乗する機会を失った日産ティアナにしようか、それとも、もうすぐ走行距離が10万キロに達するわがプログレにしようか、と悩んだが、結局、ティアナにした。
 この車幅1.83mの2.5ℓのFFセダンの正体は、北米市場向けの秘密兵器だった。それに盟友・徳大寺有恒さんが彼岸に旅立ったばかりで、ホットなマシンは遠慮したい気分でもあった。


*2013年はNISMOバージョンのフェアレディZで


*2014年はティアナで


*2015年はクラウンアスリートで

 そして2016年次。デビューしたばかりのクラウンアスリートで。ご自慢のボディカラーは「天空(そら)」で、町走りでも、駐車場でも目を惹いた。
 クラウンはマイナーチェンということでエントリーされてなかったが、クラウンアスリートに搭載されたダウンサイズターボは、たしかにレクサスサウスのNX、ISに用いられているためブランニューではないが、ボディ構造のスポット溶接打点を100箇所近くふやすという「TOYOTA秘伝」を駆使している。それらを「試食」するいい機会だ。途端に心配になった。最終選考テストに残った6ベストの各車を診る目が厳しくなり過ぎはしないか、と。

 2016年11月15日AM6:00。 iPhoneが律儀にコールする。そうか、ここはホテルツインリンクの一室だった。今回はスタートの練馬からずっとご一緒の飯嶋洋治さん(RJCに入会して2年目。やっと今年から投票権を取得)と、ゆったりしたツインルームでの、同宿だった。
「朝食は?」
「7時からです」
「じゃあ、それまで、『みんカラ』BLOGとメールのチェックを済ませておこう」
 飯嶋さんに断って、持ち込んだ「Dyna Book」の電源をONにする。80歳の超シニアがよくやるなア。表情にこそ出さないが、飯嶋さんは心の内で呆れ顔を噛み殺しているに違いなかった。

 7時。1Fのレストランへ。バイキング式になっていて、和食には目も向けず、サラダ、ヨーグルト、パンと牛乳、それにフルーツの順でピックアップする。それはいつも摂る朝の食事と全く同じものではないか。結局、誰かに飼い馴らされて、こうなるものらしい。


*圏央道菖蒲PAにて。RJCメンバーの飯嶋洋治さん。結局、往路のドライビングはほとんどを担当してもらった。



 ヒョイと窓の外を見やると、夜来の雨も上がって、八溝山地の名も知らぬ山々が、雲海に浮かぶ島々という風情で、こちらの目を和ませてくれる。いいテスト走行と選考会になってくれそうな予感がする。
 前夜にホテル入りし、懇親会で親しく交流した各自動車メーカーの商品開発の関係者や、広報部員、RJCメンバーも三々五々、朝食を済ませると、ホテルを後にして、試乗会場の基地となるサーキットのパドックへと急いでいる。緊張した空気が伝わり始めた。

「われわれもソロソロ……」
「はい。受付は8時からです」 
  飯嶋さんのレスポンスは、いつも小気味よい。部屋に戻ると、忘れ物はないか、をチェックして(必ず何かを置いていく癖は、年とともにひどくなっている)、チェックイン時に支払いを済ませてある1FのフロントにKEYカードを返して、駐車エリアへと急ぐ。待っていたのは、オレンジカラーのR35 GT—R MY17であった。



 10月上旬に届いたHot-Version vol.142の巻頭企画『GT—R 2017年モデル 全開アタック&BATTLE!!』で、まず味見する。ドリキン土屋が「足がしなやか。動きがいいなあ。ああ、いい感じ、ヒューっと入ってくれるよ!」を連発しながら1分4秒台を軽くマークするのにも、当然惹かれたが、決め手はこの人のコメントだった。

「ベスモ同窓会」のメンバーでなおかつ「R35 GTRクラブ」会長でみんカラネーム「あど」さんこと、折戸聡氏が語りかける。
「見た目がガラッと変わって、(ボディカラーも)新しい色が出て、新しい物好きには評判がいい。街中を走っても抜群に……」




 
「ツインリンクもてぎ」までの往路ドライブは、ほとんど飯嶋さんが担当したので、もっぱらこちらはカメラ係に徹した。紅葉の始まったホテルからサーキット専用路までの下り坂は絶好の撮影ポイントだった。そしてパドック手前の、いつもの定点撮影も無事クリアして、午前8時からの受付を済ませ、試乗開始前のブリーフィングに臨んだ。

 午前9時。試乗開始。真っ先に足を運んだのは、コントロールタワー寄りの手近なピットを割り当てられている(正岡註:これは第1次選考会終了後の抽選による=今回は国産車グループが最終コーナー寄りの遠い方へ)VOLVOのXC90である。

 ともかく誠実に、国産車、輸入車両部門の「シックスBEST」に選ばれた12車種すべてのステアリングを握って、ロードコースの外周と東コースとを組み合わされた4キロほどの特設試乗コースを走りたい。しかし、与えられた時間は午後1時まで。その間、せっかくの機会だから、各車の担当者とも歓談したい。となると、時間があるようで足りるはずがない。実際にはある程度、緩急をつける必要があった。

 VOLVOを試乗の1番手に選んだ理由はもう一つ。RJCが「イヤーカー選び」を終えた後、年次報告書として発行予定の『Bulletin』で、「XC90試乗記」の原稿執筆を要請されており、いくつか確認したいこともあったからだ。


*試乗コースに組み入れられた東コースへ入るXC90

 XC90のおっとりした顔つきとがっしり体躯。北欧からやってきたSUVの新しい挑戦者。2017年モデルでアップデートされた先駆機能を、改めて確認したかった。販売も好調らしい。スタッフの対応もキビキビしていて、今回は故あって欠場しているSUZKI顔負けの熱っぽさが印象的だった。加えて、4人乗り限定の受注生産車『VOLVO XC90 EXCELLENCE』が持ち込まれていて、よかったらドライバーを用意しているので、後部座席でゆっくり「VIP気分」を楽しんでください、と来た。「有難いお誘いだが、それは時間の余裕ができたら、ぜひお願い」と断って、お隣の「プジョー」ピットへ移動する。

「プジョー」「アウディ」「Jaguar」「メルセデスベンツ」「BMW」とインポート部門を順序よく訪問し終わる予定が、顔なじみの広報責任者の陣取ったピット・ブースでは、ついつい話し込んでしまい、気がつくと、すでに午前12時が迫っていた。そこで作戦を変更、「国産車部門」はすぐ乗れるクルマを優先することにした。

 結局、「インプレッサ」「プリウス」「アクセラ」「ムーブキャンパス」の順に「対話」を済ませ、直近に試乗したばかりの「セレナ」と「フリード」はパスせざるを得なくなった。ま、わたしの中での採点を再確認するための試乗は、これ以上、必要としなかったわけでもある。
 
 午後1時、ブリーフィングルームに集合、名札と引き換えに事務局から投票用紙を受け取った。

 午後2時、開票が開始された。まずテクノロジー部門。競り合っていたのは前半だけ。日産セレナ搭載の「プロパイロット」があっという間に、メルセデス・ベンツ Eクラス搭載の「インテリジェントドライブ」に62ポイントの差をつけてしまう。これで日産の悲願である「2部門制覇」が現実味を帯びて来た。



 続いて「インポート部門」。こちらは「アウディ A4」が最後まで「VOLVO XC90」を追走したが、最後には29ポイント差で力尽きた。
 注目すべきは、プジョー・シトロエン・ジャポンからの「プジョー318 Blue HDi」ではなかったろうか。ちょっと小粋なハッチバック。最新の排ガス対策を施したディーゼルエンジン搭載。第1次選考では「ルノー・トゥインゴ」のエントリー辞退で繰上げ出場という形であったにもかかわらず、本選では3位にランクアップしている。乗ってみての好感度が高かったからだろう。

 無念さがこみ上げる。順位はともかく、こうしたステージにポルシェ718ボクスターが混じっていれば、もっと味わいのあるテスト試乗ができただろうに、と。


*プジョー318 Blue HDi



 国産車部門に与えられる「カーオブザイヤー」の栄冠は、開票と同時に「日産セレナ」が独走した。運転支援装置の「プロパイロット」人気に加えて、ミニバンに先進技術を傾注し、利便性を格段に高めた点が評価された。それを情熱を持ってアピールした開発担当、広報担当それぞれの働きが、快く実ったクルマ、それがセレナというミニバンであったのか。
 



*XC90でインポート・カーオブザイヤーを獲得したVOLVOジャパンチーム。


*カーオブザイヤーを狙って、栄冠に輝いた日産セレナチーム。


*「テクノロジー」までゲットした日産セレナチーム(技術担当組)

 午後3時、結果の発表。散会。ピット・ブースに戻っての記念撮影を見守ってから駐車パドックへ。ひと際、存在感をアピールしてくる佇まい。R35 GT-R 2017バージョンが待っていてくれた。さて、このKEYを飯嶋くんに渡したものかどうか、まだ心が決まっていなかった。  (この項、次回更新まで)


*西日が落ちて行く。シルエットは筑波山。復路のGT−Rは常磐道を経由?
Posted at 2016/11/18 16:17:11 | コメント(5) | トラックバック(0) | 還暦+20歳の青春 | 日記
2016年11月10日 イイね!
ポルシェの殺し文句 「最新は最良!」の呪文は本当か?「ベスモ」のリトルマガジン的『718ボクスターS試乗記』


 ポルシェJAPANが新しく居を構えた虎ノ門ヒルズの地下3階の車寄せで、赤の718ボクスターSを受け取ったのが午後の4時過ぎ。お堀端沿いの千鳥ヶ淵の撮影ポイントに立ち寄ってから、代官山の蔦屋書店に向かったときには、立冬を間近に迎えて、足早に夕闇が迫ってきた。

 撮影を済ませてからも、この日、RJC第1次選考会からずっと一緒の飯嶋洋治さんは、まだ718ボクスターSのステアリングを握っていたそうだ。
「いいですよ。このまま代官山の蔦屋書店まで、どうぞ」





 多分、こうなるだろうと先読みして、ポルシェ広報室への試乗手続きには、飯嶋さんの名前も登録してあった。彼のドライビング・スキルの適確さは、この2年間、触れる機会が多く、安心してお任せできるのを誰よりも知っていた。何といっても『スピードマインド』の編集長も務めたモーター・ジャーナリスト。期待の星である。

 それに……彼は最近、『GOIN(ゴーイン)』というDeNAが立ち上げたWebマガジンの執筆者として活躍中、つい先日もこんな試乗記を書き上げているので、ぜひ『こちら』にもコンタクトして、ご一読を願いたい。


 靖国神社前をひらりと左折。車の量のすくない内堀通りを、桜田門方面へ、それなりの活発な速度で疾走する。この大通りは適当なアップダウンが連続することで知られている。背後で奏でるボクスターの心臓の脈動音。交差点を一つ、運良く青信号でパス。イギリス大使館。半蔵門。国立演劇場。4車線にふえた右寄り側をキープして、下り勾配を意識しながら、三宅坂交差点を右折して R246に合流した。

 伝統の「718」の称号に恥じない……それがポルシェのプライドと進化の「哲学」なら、その片麟がうかがえるはずだったが、そこまでの2キロを飯嶋さんは誘惑と闘い続けていた。この718ボクスターSにはポルシェの先進技術、デュアルクラッチトランスミッションの略称「PDK」が搭載されている。だから、MTモードに切り替えて、パドルシフトをパンパンとやって、加減速、コーナリングを、少しは楽しむことはできるのだが……。
「いや、このままAUTOでポルシェが選んでくれる設定で走って見ます」

 R246と呼ばれる青山通りをオープンCARで走るのは初めてだった。この日の午後、RJCカーオブザイヤー第1次選考会の舞台となった青学会館の脇を左折する。くだって行くと並木橋。代官山は目と鼻の先であった。



 午後6時きっかり、庭園風にしつらえてある「T―SITE」の駐車スペースへ718ボクスターを滑りこませ、蔦屋書店2号館へまっすぐ向かう。「車とバイク売場」の責任者S氏が笑顔で迎えてくれた。今年の4月末にこの蔦屋1号館で開催した『ベストモータリング・トークショー』のお礼をいったところで問うてみる。

「ポルシェ専用棚に置いてもらった『PORSCHE 偏愛グラフィティ』の売れ行きはどうですか?」
「ああ、80冊全部、売り切れました」
 この明るい声が聴きたくてここへやってきたわけではなかったが、やっぱり嬉しい。早速、本題の飯嶋さん紹介をする。発刊したばかりの『きちんと知りたい! 自動車メンテとチューニングの実用知識』(日刊工業新聞社刊)はまだ置いてなかったが、何冊かの彼の著書は書棚に飾ってあって、飯嶋さんを喜ばせる。
「また、トークショーのような楽しいイベントをやりましょうよ」
 S氏は上手にこちらの気持ちを盛り上げてくれたのだろうが、その内容は、本気に取り組みたくなるものだった。ひょっとしたら、また来年の春には……。




 一段落したところで、3号館にあるコーヒーショップ「STARBUCKS」へ飯嶋さんを誘う。実はそろそろ、『偏愛グラフィティ』を創った時、編集・執筆を手伝ってくれた「ベストモータリング同窓会」メンバーの仁川一悟君がやってくる時間になっていたからだ。仁川君はボクスター981のオーナー。今日(11月1日)から4日まで、幸い、718を借り出せたから、新旧の比較を一緒にやってみてもらおうと企んでいた。

「ポルシェの『偏愛グラフィティ』に付録をつけるみたいに、新型車のインプレを紹介してみようか、と。そう、かつてのベスモに付けていた《リトルマガジン》と同じ発想で」
「あ、それは面白そう」と、飯嶋さん。そしてポルシェが今度の「ライトサイジング」開発が、かつてのエンジン水冷化と同等の、大きなマイルストーン(達成すべきプロジェクトの重要な節目)といっていることを論議し始めたところへ、仁川君がやってきた。

 しばらく歓談したところで、飯嶋さんが「じゃあ」と立ち上がる。そうだ、ボクスターは二人乗り。飯嶋さんは徒歩で代官山駅へと向かわなければならなかった。



 そして1週間後、仁川君から『最新は最良か? ポルシェ718ボクスターSに試乗!』とタイトルしたレポートが送られてきた。この「ベストモータリング同窓会編集部」の新しい試み、いかがかな。ややCG的なクールな筆致だが、間違いなく「ベスモDNA」が踊っているところが頼もしい。そっくりそのまま、紹介したい。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

最新は最良か? ポルシェ718ボクスターSに試乗!  仁川 一悟

『718ボクスターS、借りることにしたからよろしく頼むよ!』突然やってくるいつもの局長からの電話。なるほど、ポルシェがRJCカーオブザイヤーにエントリーするという前振りはそういうことだったのか!と気がついたところで、不安がやってきた。
『どうしよう、すごく良かったら……』旧型981オーナーに襲いかかるポルシェのあの呪文。
『最新のポルシェは最良のポルシェ』
 新型でどのように解釈されていたのか、新型の走りを報告する。

 911に引き続きボクスター・ケイマンシリーズもターボ化の波がやってきた。こちらは718という新たな名前をつけての再出発になる。水平対向6気筒NA、3.4ℓと2.7ℓだったエンジンは、それぞれ水平対向4気筒ターボ、2.5ℓと2ℓに置き換えられた。エンジンに加えて内外装もリファインされ、イメージを保ちつつ見た目も新たな車になった。

 待ち合わせの場所に置かれていた718ボクスターSは、なんとイメージカラーであるラバオレンジ!のボディーカラー。こりゃ目立つなぁと思いながら車に乗り込む。やや小径にそして握りも細くなったステアリングホイールに好感を抱きながらエンジンを始動するとボボボボボ・・・とターボであることが明確なエキゾーストを奏でながら、アイドリングが始まった。そして走り出すと今度はドロロロ…と不等長エキマニが奏でる聞き覚えのある音を出し始めた。NAとは明確に異なる音、しかしながらそれはポルシェであることが明確な迫力のある音を奏でながら。



 街中で乗る718ボクスターSは、明確に進化していた。何より乗り心地がすごくよくなったのは朗報だ。従来も悪いわけではないが『スポーツカーのわりには』という言い訳がついていたよさだったが、新型はそんな枕詞が要らない乗り心地だ。路面が荒れたところでもしなやかに動く足回りが、室内を揺らすことはない。2.5ℓターボエンジンの分厚いトルクとPDKのマッチングもさらによくなり、非常に乗りやすくなった。この印象は高速道路を走っても変わらない。非常に安定して速い車に仕上がっている。良くも悪くも、ゆっくり走っているとそれはポルシェなのか?分からなくなってしまうほど快適だ。

 細いワインディングに入ったところで、キャラクターの違いが明確になってくる。コーナーでの旋回速度が遅い。誤解を恐れずにいえば、それは十分に速いのだが比較をしてしまうと遅く感じる。同じペースで走っているとタイヤがむずむずと限界に近そうなインフォメーションを出し始める。もう少し踏み込むとすぐにESPが顔を出しはじめた。どうやら本当に限界のようだ。そして、PASMをシャシースポーツに設定しても相変わらずの乗り心地のよさと引き換えに、やや大きめのロールは変わらない。旧型のボクスターS、PDKはカタログ重量1,350kg、反面新型718は1,410kgと同グレードで比べても60kgの重量増となっている。足回りの印象も柔らかくなっている。



 新型718ボクスターは、明確によくなっていた。911と同じように乗り心地が良くなり、パワーがあがって燃費も良くなった。都内から箱根を往復して、ワインディングを飛ばしてたたき出した燃費は270km走って8.7km。アイドリングストップする範囲も広がって、停車する前にエンジンが止まるようになった。ターボエンジンの苦手なところはPDKが巧みにカバーして普通に乗ればターボラグを感じることはほぼ無い。新型718ボクスターSは燃費も含めて最良に進歩した。これならスポーツカーに乗るぞ!とドライバーの心の準備ももう要らないかもしれない。反面、心の奥底では別の感情も湧き上がる。スポーツカーってそれでいいのか? ポルシェってそれでいいのか!? 環境との共生を考えれば、それが正しいのは分かっている。他のメーカーのスポーツカーに比べれば、これがポルシェだ!という説得力は十分な車に仕上がっている。しかしながら乾いたフラット6のNAサウンドを知っているものには、新型のポルシェ密度が『薄味』に感じるだろう。初ポルシェとしてお勧めできる車が増えたことは、歓迎できることかもしれないが。


*フロントバンパーももちろん新デザイン。ウィンカーがバンパーインデザインになり、インテーク周りも変更。
ナンバー下については、PDKのオイルクーラー用インテークは廃止になり塞がれる形に。


*フロントバンパーのデザインも変わり、サイドビューはより伸びやかな印象に。


*ヘッドランプのデザインも変更。写真はOPのLEDヘッドライト。


*フロントフェンダーのキャラクターラインも強くなり、シャープな印象になった。
ミラーも支柱に穴が開いている新デザイン。従来は一部車種に手動しかなかったものが、
電動格納可能になって、全車標準採用!


*サイドのエアインテークもやや大型のデザインが標準に。


*リアビューは、ウィング部分が大きくなりややダックテール気味に。テールライトも一新され新しくなりました。
従来あった、リアウイング下のバックランプは廃止になり、ブレーキランプの下半分が兼用に。
なんとリバース時はレッドからホワイトに色が変わる仕様です!

<取材車両>
ポルシェ718ボクスターS PDK/RHD 8,520,000円
走行距離:13,990km 装着タイヤ:PIRELLI・Pzero
<装着オプション>
ボディーカラー(ラバオレンジ):426,000円
レザーインテリアパッケージ(ブラック):580,000円
電動ミラー:55,000円
PDK:524,000円
PASM:260,000円
PTV:238,000円
スポーツクロノパッケージ:379,000円
20インチCarerraクラッシックホイール:389,000円
カラークレストホイールセンターキャップ:30,000円
フロントウィンドウ クレーティント:21,000円
オートエアコン:139,000円
GTスポーツステアリングホイール:50,000円
シートヒーター:76,000円
フロアマット:20,000円
LEDヘッドライト:359,000円
合計:12,066,000円


                                    (この項、終わる)
Posted at 2016/11/11 01:20:05 | コメント(3) | トラックバック(0) | 還暦+20歳の青春 | 日記
2016年11月07日 イイね!
ポルシェが無念の予選落ちをした日〜RJCイヤーカー第1次選考会レポート〜

 ちょっとばかり心を昂らせ、そして同じくらいのボリュームの不安を抱えて、11月1日の午後、2017年次RJCカーオブザイヤーの第1次投票の公開開票場へ向かった。お決まりの青山学院に隣接する「アイビーホール」へ。



 国産車に与えられる「カーオブザイヤー」は、今回のエントリーがわずか8車とあって盛り上がりようもない。元気印で暴れまくった「SUZUKI」が例の燃費テスト問題でお騒がせした反省もあって、エントリーを事前に辞退、加えてGT—R、NSXといったスーパーマシンも選考委員への試乗に対応できないとあって、エントリーを辞退。となると、今年はどうやら、ミニバンの2候補におおかたの票が集まりそうな気配である。

 それに比べて、28車種がエントリーした「インポート」部門の熱気ぶりはどうだ。中でも初めてポルシェジャパンが「718ボクスター/ケイマン」と「911」でノミネートを受諾し、仮に第1次選考で「シックスBEST」に入っても、大丈夫、「ツインリンクもてぎ」での最終選考会に試乗車を用意します、と宣言した。
 日本市場を含めて世界市場で販売絶好調のポルシェ。この際、「今のポルシェのつくり込み」を味わう機会を提供したい、と新しい一歩を踏み出そうというのだ。日頃、ポルシェに触れることの少ない選考委員諸氏にとって絶好の機会なのだが、その気持ちが通じるかどうか。「いささかの不安を抱えて」とはその点だった。



 会場に着いてみると、すでに塚原久広報室長は席についていて、BMW広報のリーダーの前田氏となにやら懇談中。挨拶をすると、今回は初めてですから、いろいろ勉強をさせていただきます、と。
 
 定刻の5分過ぎ、開票が始まった。第1次選考の投票はFAX送信に決められていて、すでに10月31日(土)の24時に締め切られていた。

 まずテクノロジー(技術)部門から。エントリー名と得票詳細は同載の写真速報から読み取っていただきたいが、①プロパイロット/日産自動車:49、②インテリジェンスドライブ/メルセデス・ベンツ日本:43、③クリーンディーゼル「BlueHDi」/プジョー・シトロエン・ジャポン;37が上位に並んだ。投票総数56のはずが、この部門だけ1票、FAXの未到着があって、有効数が55となっていた。



 どうやら新型Eクラスに搭載したメルセデスの、完全自動運転に一歩近づいた技術に対して、300万円以下の新型セレナに搭載した日産の「自動運転支援技術」がガチンコ勝負という図式が出来上がったようだ。

 さていよいよ「インポート(輸入車)部門」の投票分が1票1票、読み上げられていった。
 10票を開いたところで、トップはアウディA4の10、ボルボXC90の9、MINIコンバーチブルの8、メルセデス・ベンツEクラスの7と並んで、ポルシェ718ボクスター/ケイマンは3票を集めて6位に位置していた。
 お! これはひょっとしたらヒョッとするぞ、という大健闘ぶり。加えて、飯塚昭三会長の説明によれば、ルノー・トゥインゴが「シックスBEST」に選ばれても、辞退したい旨、申し入れがあったという。それならば4票5位のルノーが脱落とあれば、ポルシェは5位に位置しているという計算になる。


*10票まで開票された時点の「インポート部門」。下から5番目、No.24をご覧あれ。718ボクスターは6位につけていた!



 それからの一喜一憂……結論からいえば、無念にも、13票で8位。ルノーの辞退があっても7位、いうならば予選カットラインに阻まれて、「ツインリンクもてぎ」での最終試走会に臨むつもりでいたポルシェの「新しい一歩」に、RJCは応えることができなくなった。ああ、無念なり。

 予選結果は1〜4位は、10票までの途中経過通りで、5位:ジャガーF-PACE、
6位:プジョー308 BlueDi(7位からの繰り上げ)の順であった。そして、8車がノミネートされた国産車部門は「スバル インプレッサ」と「日産セレナ」がそれぞれ55票を集めて1位を分け合って、最終選考に臨む。それを1票差で「トヨタ プリウス」が49票で追従し、さらに1票遅れて「ホンダ フリード」が追う。



 午後3時、開票終了。気が付いて会場を見渡すと、ポルシェJAPANの塚原室長の姿はすでになかった。ポルシェというピュアなスポーツカーが、こうしたイベントに馴染むにはもう少し時間が必要なのかもしれない。

 「行きましょうか?」
  隣に座っている、同じRJCメンバーの飯嶋洋治さんに声をかけた。去年に入会し、今年はカーオブザイヤー選考委員の資格を得た51歳。初々しくRJCでの活動を楽しんでいて、『きちんと知りたい! 自動車メンテとチューニングの実用知識』(日刊工業新聞社刊・2200円+税)を書き上げたばかり。これで10冊目です、と嬉しそうに報告してくれたのは、つい先日だった。
 
 じゃあ、第1次選考の終わったその足で、実は「PORSCHE 718BOXSTER S」を4日間、試乗する予定なので、受け取るときに一緒に、新しく虎ノ門ヒルズに移った「ポルシェJAPAN」にいってみますか?

 勿論です。飯嶋さんはM3のオーナー。心のエンジンはすぐにかかってしまう。そんなわけで、地下鉄銀座線「表参道」から「虎ノ門」へ向かう。

 午後4時ジャスト、わたしたちは虎ノ門ヒルズの地下3階の車寄せで、赤(正確にはラバオレンジ)の718ボクスターSを受け取った。2シーター、電動ソフトトップ、そして心臓部に水平対向4気筒のターボエンジン。気のせいか、暗がりの中でベソを掻いているように見える。

 ひとまず、ステアリングを飯嶋さんに譲って、ナビシートに座る。せっかくの2シーター・オープン。情報によれば開閉はそれぞれ9秒でOKだという。センターコンソールのスイッチを押す。あっさり、それも静かに、オープンカーに変身してくれた。ボロロンと背後からこちらを包んでくれるエンジン音。




 
 さて、これより、千鳥ヶ淵の撮影ポイントに立ち寄ってから、代官山の蔦屋書店に向かいましょうか。そこで、自動車関係の専門コーナーの責任者に、あなたを紹介しますから。

 頷く飯嶋さん。優しく、718ボクスターのアクセルを踏む。地下3階から出口までの螺旋状の走路を抜けると、いわゆるマッカーサー道路と呼ばれる築地・汐留への新しいルートへ出てしまった。まだ陽はいくらか西の空に残っているみたいだ。ひとまず、桜田門方面を目指し、お堀端沿いの千鳥ヶ淵公園を目指した。
「どうですか、このミッドシップのような世界は?」
「“もてぎ”で走らせたかったですね」
 ああ、飯嶋さんも口惜しがっているな。ボクスターが泣き顔をしていた、と書いてしまったが、それはわたし自身のことだったのかもしれない。





ct=f4f1f6761a98" target=_blank>



「ポルシェ偏愛グラフィティ」を2月に発刊し、4月に「ベストモータリング同窓会」で河口湖まで遠征して以来の、ポルシェとの親密な時間が、やっと戻ってきたのである。          (以下、次の更新へ)
Posted at 2016/11/07 01:37:19 | コメント(3) | トラックバック(0) | 還暦+20歳の青春 | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音
プロフィール
「GT—R MY17はなぜか艶歌がよく似合う http://cvw.jp/b/1135053/38963279/
何シテル?   12/05 23:05
1959年、講談社入社。週刊現代創刊メンバーのひとり。1974年、総合誌「月刊現代」編集長就任。1977年、当時の講談社の方針によりジョイント・ベンチャー開...
みんカラ新規会員登録
ユーザー内検索
<< 2016/12 >>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
リンク・クリップ
初雪が招き寄せてくれた『探し物』 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/12/03 11:39:45
ドキュメント『第5回ベスモ同窓会』スタート! 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/04/27 23:01:01
ドキュメント New 911 Press Conference 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/02/26 00:36:51
ファン
545 人のファンがいます
愛車一覧
トヨタ プログレ トヨタ プログレ
「NC」とは、ニュー・コンパクトカーの略と記憶している。(その後、NEO CATEGOR ...
QRコード
QRコード
このブログを携帯でご覧になれます
ヘルプ利用規約サイトマップ
©2016 Carview Corporation All Rights Reserved.