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2011年08月28日

天の配剤か ~まだ振られないチェッカーフラッグ②~



はて、面妖な。キツネにつままれるとはこのことでしょうか。

8月24日の昼食を、「1974.06.02 まだ振られないチェッカーフラッグ」の著者である中部博さんとご一緒しました。1カ月ほど前に、ガンさんと懇談した時と同じ、東京プリンスホテルの「和食処・清水」で、やはり同じように信州蕎麦と海鮮丼を組み合わせたランチを注文しながら……。
「こうやって、ゆっくり逢うのはいつ以来だろう?」
ぼくの方から切り出す。中部さんが柔らかい笑顔で、間を置かずにレスポンスしてくれます。
「日本カ―・オブ・ザイヤ―の選考委員会とか、鈴鹿F1観戦、その次の日のHONDA車の走行会があったころにはよく……」
「そうだった。スーパーCIVICのレース仕様車で、ご一緒にスプーンから西のストレート、シケイン、第1コーナーからS字、逆バンクを並走しましたね。イヤァ、あなた、なかなか疾かった」
「何をおっしゃる、そちらこそ」
「そうやって、お互い、モータースポーツをやったものなら感じ取れる、あの事件のもつアンタッチャブルな部分、どうしようもない宿命性、そしてジャーナリストだから看過できない悲劇の下地となる闇の部分。そこに踏み込んでいただいていたんですね」
「そこまで読みとっていただけて光栄です。あの連載が終わってもう2年以上がたって、実はまだ単行本として出してないんです。ですから、こうやって改めてぼくの仕事に注目していただけて、うれしいです」
「どうして、本が出てないのか、ちょっと不思議に思っていました」
「連載が終わって、もう3度、書き直し、それがようやく終わりになりそうです。連載は勢いでやれますが、1冊の本となると、文体が問われます。それが書き手には大変でして……」
「書き上がったんですか。それは楽しみだ。で、レースの方はまだ走ってるそうですね」
「1953年生まれの男としては、結構、頑張っていますでしょ?」
訊けば、ハイブリッドCIVICで富士スピードウェイのECOカ―レースに出場しているという。

「あ、忘れないうちに」
こういって、中部さんから宅急便に使われるボール紙の書類袋を手渡された。特にお願いして、連載第1回が掲載されている「レーシングオン」の2007年11月号の現物を、持参いただいたのでした。



このあと、たっぷりと1時間半、貴重な取材経過や重要人物の現状、残念ながら、あの事件が起こった時のこの国のモータースポーツ界はたかだか10年の歴史しかない未熟きわまる世界だったことなど、お互いの意見を交歓し、共有し、再会を約束したのです。

さて、帰宅してすぐに、お借りした「レーシングオン」の該当ページを開いてみて、わが目を疑ったのです。
表紙はTOM‘Sの重鎮ふたり、『舘と大岩』、これは国立国会図書館で、まとめて借り出したものも、そうだったような気がする。83ページ目を開く。おお、中部さんの連載第1回が始まっている。「レーシングドライバーたちの挽歌」という通しのサブタイトルがつけられている。
扉を開く想いで、左側におさまった83ページをめくります。と、予想もしないページが現れたではありませんか! うん???。

そこに現れたのは、筆者が、33年まえに起きた悲惨なカーレース事故の現場へむかっている、という書き出しではないか。

「富士スピードウェイへむかうクルマのなかで、複雑な気持ちがわいてくるのが手にとるようにわかった。その気持ちをおさえつけて、運転に集中しなければならなかった」

富士スピードウェイへの道案内看板に導かれて走っていると、急に風景がひろがり、富士霊園につきあたった。そのT字路を右にまがると富士スピードウェイだ。

広大な富士霊園には、その33年前のレース事故で死亡した若きレーシングドライバーの墓がある。筆者はその墓参りをしてから、事故現場の検証をしたほうがいいと考えていた。そして、霊園の事務所で、墓の場所をきく。亡くなったレーシングドライバーの氏名を伝えると、事務員は「ああ、レースの事故で亡くなられた方ですね」と言った。

レースの事故で死亡したということがいかに強い印象をもたらすかについては、もうひとりのレーシングドライバーの墓参りしたときにも、筆者は感じたことと述懐した後で、ひとつのレースの、ひとつの事故で、ふたりのレーシングドライバーが同時に死亡したのは、130年に及ぶカーレースの歴史で例をみない、といささか声を荒げている。

こうして筆者=中部さんは、2003年から2年近くをかけて大きな改修工事をうけた富士スピードウェイの新しいゲートをくぐるわけですが、正直言って、この書き方はオーソドックスすぎる。雑誌の連載だから、とくに若い読者のために優しくリードしたい気持ちはわかるとしても、この手法は、富士スピードウェイへ向かうレポートを書く時に一度は通ってしまう道筋なのだ。ぼくなんか、当ブログの「青春のメッカ・FISCO」の項で、似たような感情移入をしています。



その点、ぼくの手元にある「第1回」の書き出しは違う。独自に入手したものと思われるレース中継録画番組の音声テープからうかがえる、禍々しいレースのインターバルからはじまっていた。少しでも、このレース事故の予備知識さえあれば、ズバリ核心にいざなう、なんという新鮮な書き出しだろう。ぼくは唸っていたのです。だから、いっきに「運命の第2ヒート」を、中部さんと面談する前夜にアップできたのです。

それが、「レーシングオン」の現物を手にしてみると、まったく異なる内容となっている。あわてて、手元の複写コピーのものと照合してみると、富士スピードウェイへ足を運ぶくだりは、ちゃんと第5回に、そっくりそのまま、収まっているのです。

まさか、「レーシングオン」が復刻版として再構成したのだろうか。それはない。発行年月日がまったく同じなのだから。ただ、気になるのは、ほかの17回分の構成も、これと同じように、もう1種類が存在するのだろうか。

早速、中部さんに電話を入れました。ご本人も「え!?」です。

8月26日、中部さんから、「レーシングオン」の残り17冊が、宅配便でどさっと送られてきました。ただちに、こちらの複写コピーと照合。どうやら、この摩訶不思議な出来事の原因が読めてきました。

ぼくが国立国会図書館へ「レーシングオン」のバックナンバーの確認に赴いたのが、8月12日の午後4時。即日複写の受付は午後6時まで。しかも、1回の貸し出しは3冊までの決まりがあり、さらにつぎの号を閲覧するには、返却が済んでいなければならない。幸い、探していた「中部博・1974.06.02 まだ振られないチェッカーフラッグ」はすぐに貸し出し可能でしたが、これで間違いなしとわかったからには、内容を読むのはコピーしたもので十分なはず。それよりも、時間内に18冊すべての該当ページを、複写注文ができるのだろうか。まさに時間との勝負で、借りては複写指定をし、複写が終われば直ちに返却、そしてあわただしく次の注文をする。それを2時間の間に6回も繰り返したのです。最後の注文は5時57分。

そうして手元に揃った5ページ×18回=90ページ。たいへんな宝物です。ただ、1ページ1ページがバラバラなため、順番がとっちらかりやすい。で、読みながら、クリップ止めをし、整頓した記憶があります。その際、第1回と第5回がそっくり入れ違ったのに、それに気づかないぼくが、第5回分のページの記述を、書き出しの第1回分と信じ込んでしまったのか、ということです。それを実証するには、もう一度、国立国会図書館に足を運び、第1回分がどちらなのかを確認すればいいのです。

中部さんからの宅配便を受け取ったその足で、豪雨のなか、ともかく国会図書館へ。
胸を高鳴らせて、係員から手渡された「レーシングオン」2007年11月号の83ページ目を開き、さらに84ページ目を……。

勝負あり! 著者は富士スピードウェイへむかうクルマのなかにいたのです。ぼくの推測どおり、入れ替えばや物語だったのです。しかし、これは「天の配剤」ではなかろうか。単行本として推敲を重ねている著者への「天の啓示」ともいえないだろうか。倒置法を駆使したテストを、はからずも、ぼくが代行した、ということで、この騒動をおさめさせていただきます。

お騒がせして、御免!

ブログ一覧 | 実録・汚された英雄 | 日記
Posted at 2011/08/28 00:58:40

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