丁度一週間前の5月28日、9年間一緒に暮らしてきた猫のトラが亡くなりました。18歳でした。猫としては決して短くはない、大往生と言って良い年齢です。
ことしの3月末に風呂に入れた時、お腹が膨らんでいることに気付きました。排便に問題があったのかと思う一方、お腹が膨らんだ時に考えるのは腹水。腹水がたまりはじめたら、基本的に楽観できない状態になっていることがほとんどです。イヤなことが頭をよぎり、動物は馴れていませんが、そっと診察してみました。ほぼ間違いない腹水。いや、そんなはずはない、お腹の動きが悪いから便が残っているんだと思いたい。音を聞いてみるとお腹は動いている・・・。
急に悪くなるわけではないので、すこし様子を見ようかと思っていましたが自然にひいてくる気配はないので、若い猫たちがお世話になっている獣医さんのところに行きました。丁度年度末に連休をもらっていたので。
血液検査とレントゲン撮影を行い、予想通り悪い結果でした。予想以上の腹水が溜まっていました。この時点で一度しっかり悲しみました。でもいつか必ず分かること。
さて、どうしようか。予め猫に腹水が溜まった時にどんな病気があるか調べてみましたが、良性の病気はない。ウイルス性腹膜炎や脾臓の炎症、そして悪性腫瘍。ウイルス性腹膜炎と悪性腫瘍は回復の見込みはない。脾臓の炎症だとしても年齢を考えると難しい。となると選択肢はほとんどありません。
獣医さんは、もっと設備のある病院で精査し原因を突き止めて積極的に治療を試みる方法もあると話されました。が、私たちは望みませんので、苦痛を取り除くことだけにしました。人間ならば本人の意志が最優先ですが、ネコなのでパターナリズムにならざるを得ない。
それからは、利尿剤とビタミンの注射と内服を開始。1週間に一度ほどのペースで通院を続けました。急に進行する気配がなくまだ行けそうだと期待が膨らんだり、やっぱり良くはならないと悲しくなったり。そんな状態で1ヶ月半ほど経過。この夏は越えられないだろうけれど、もう少しもう少し。
でも、きれい好きなトラがトイレに間に合わなくなり床でおしっこをするようになってきました。次第に移動できる距離が短くなり、家中にペット用の吸収パットを敷き詰めることになりました。歩ける距離は次第に短くなり、足腰が立たなくなってくる。でもとっても食いしん坊なトラは少しゆっくりではあるけれど、しっかりご飯を食べていました。その一方、お腹が張ってくるので息が苦しくなり呼吸数が正常の1.5〜2倍くらいになっておりこれが進行すると腹水を抜かなければならなくなるかもしれない。腹水を抜くと水分だけではなくタンパク質や塩分も抜けてしまうので、一気に体力が落ち寿命を縮める。人と違って苦痛の度合いを言葉では知らせてくれないので、呼吸数となでた時にゴロゴロ言えるかどうか位しか判断材料がない。
幸い、移動が難しくなりお気に入りのソファーにのぼるのが辛くなっては来るものの、それ以外は落ち着いていました。こんな状態が続いていました。
この時期、パートナーは出張の多いのですが、先週は時間を作って家にいてくれました。昼に一度帰宅したりと、ずっとそばにいてくれました。なのでひとり(一匹)でいるときに急変したらと心配していましたが、安心でした。
そして27日から急に食べなくなり水も飲まなくなってしまいました。冷静に考えるとこの状態からは持っても3日。でも何も考えないことにしていました。いや考えられなかった。
28日。パートナーは遠方まで出張。わたしは家にいました。ちょっと仕事がキツくて気分転換にいつものドライブコースに向かう。午前6時。出掛ける前に、突っ伏して寝ているトラにいつものように「いってくるぞ」といい呼びかけに反応することを確かめました。反応はほとんどなかったけれど、呼吸はしていました。しんどい時でもしっぽだけは動かして反応するのですが、それもない。
8時半に帰宅、ドアを開けるなりトラのところにいって「帰ってきたぞ」と呼びかけるも反応はない。近づくと呼吸をしていない。一瞬頭が真っ白になり、急いで抱き上げると力なく、口元は硬直し始め、かわいい赤い舌がみえる。亡くなったのは、この2時間ほどの間なのははっきりしているが、何故いない時に、でも何時までも最後の時を待っていられなかったし、でも・・・。後悔してもどうにもならないことは思い知っているのだけど。
話しかけることばは、「ありがとう、お腹苦しかったね。楽になったかな?」これだけ。いつものソファーにちょっとかわいいピンクのバスタオルを敷き、そこに寝かせて顔を整えました。「ありがとう」の繰り返し。
動物病院が始まるのをまってお礼の電話をし、葬儀屋さんを教えてもらいました。
その後出掛ける用事があったので、普段通り「出掛けてくるぞ、なるべく早く帰ってくるから」と声をかけ用事を済ませ帰宅。帰宅後は部屋の温度を下げるのにクーラーを効かせました。気温が高く、時間稼ぎが必要ならドライアイスを用意しなくてはならないと比較的冷静に考え、室温計を確認したり。貯まっていた洗濯をしながらパートナーが昼過ぎに帰ってくるまで待つ。帰る前にメッセージが来てトラが大丈夫かを訊かれましたが、これから150km運転して帰ってくる時にはっきり知らせることは出来ないので、「眠っているよ」とウソではない表現で。
その後の数時間は長かった。
玄関で帰りを待ち、帰ってくるとクルマをその場に止めてもらい「トラ亡くなったよ」「やっぱり。連絡の前に亡くなっていたんでしょう」隠せないことは分かっていましたが、そう言うしかなかった。
それからはふたりでしばらくトラの側に。この時になってようやく涙が出ました。
それからは、亡骸をどうするか相談しました。火葬したあと、お骨をしばらく手元に置くか、埋葬するか。私は、決めかねていたのですがパートナーは決めていたようです。動物管理センターに依頼し火葬してもらいそのまま合同埋葬する。ただ、土曜日は市が運営しているために、やっていない。そこで、獣医さんに訊いておいた、民間の動物霊園に依頼することに。お骨はそのまま共同墓地は埋葬することに決めました。家にはじめてやってきた猫はほぼ放し飼いだったので、ある日出ていったきり帰ってこなかった。もう一匹も同じ。今回もできればそれに近い状況にして、墓に拘るのはやめようと。みんな同じところにいくと考えると心の整理もつきやすい。
早速電話をして、C5にのって一緒に霊園に行きました。引き取りに来てもらうことも出来ましたが、あまりクルマが好きではないトラを知らないクルマに乗せたくなかったので。その時は、私が運転を。辛い気持ちだけれどどうしても運転しなければ行けない時C5には本当に助けてもらっています。今回もまた。
霊園ではお別れの式が用意されていたのですが、もっともシンプルに音楽その他の演出一切なし。祭壇に寝かされたトラをしばしなでて、ありがとう、と言って霊園を後にしました。
帰宅すると、部屋中に敷き詰められたシートを片付ける。使い切れなかったシートや高齢猫用のエサの数々。丁度使い切りなんてことはないに決まっているんですが、なんだか虚しい。
この時点で15時半。トラが亡くなってから8時間ほどで全て終わりました。
今になってみると、ネコはいつもふらっと出ていってそのまま帰ってこないのがほとんどですので、別れに時間をかけないのは良かったかも知れません。
片付けが終わるとなんだかぽっかり。たまたま二人が揃い、しかもたまたま2連休の週末1日目に亡くなったトラ。月曜から普通に仕事するように考えてくれたかのようです。とっても賢いトラは最後まで賢かったのかな。トラがそこまでお膳立てしてくれたのだから、後はゆっくり受け容れよう。
ウチには2年半程前に2匹の子猫がやって来ました。もう子猫じゃないけれど、トラと比べるとほんの子供。トラはいつも留守番してくれていたので、世帯主という事になっていました。次の世帯主は?
左側の灰色(サジ)方は、トラが大好きでつきまとっていたのですが、亡くなった時は見向きもしなかった。その代わりどういう訳か最後の日に限って右の茶色(ミエル)がトラの側に来ていました。その所為なのか、気のせいなのか、跡継ぎの自覚がでたようで、トラと同じような振る舞いをするようになってきました。最後に何か言われたのかな。大丈夫かな。頼りないな。まだまだ、先は長い。ゆっくり見守ります。
そして、トラ、ありがとう。この頼りないネコたちと進んでいくよ。ありがとう。