超小型車の規格が新設されるらしいが・・・
この記事に挙げられている規格を見ると、昔からある「オート三輪」的なものを想定しているように感じられる。125ccのエンジンでは15ps程度しか出ないだろうから、車両重量250キロ、車両総重量400キロ程度が限界だろう。最高速度は60キロ、もちろんエアコンなんて無理である。こういう近距離用の簡易な自動車に対して税の軽減や車検・安全基準の不適用といったような優遇を図る制度は多くの国で見られる。「本格的な自動車と違う、コミュニティ内限定のモビリティ」として認知されているということであろう。
現在の軽自動車も当初は「本格的な自動車と違うコミュニティ内限定のモビリティ」として規格されていたものである。全長3メートル、全幅1.3メートルという外寸は小さく、エンジン排気量も360ccだった。免許も「軽免許」が存在し16歳から取得することができた。車検がなく、車庫の確保も不要、そして何より、1958年のスバル360の発売まで、大人4人が乗って遠くまで走れる本格的な自動車としての軽自動車は存在しなかったのである。
しかし、スバル360の発売以降、軽自動車はおかしなことになってくる。もともと「本格的な自動車と違うコミュニティ内限定のモビリティ」であったはずの軽自動車にユーザーは「本格的な自動車」の機能を求めるようになる。ユーザーの求めに応じて外寸は三度にわたって拡大され、エンジン排気量も660ccと大幅拡大された。軽免許は廃止され、車検が義務付けられ、都市部では車庫の届け出も必要になった。衝突安全基準も普通車と統一され、今や軽自動車は諸外国の「スーパーミニ」と比べて幅がちょっと狭いだけで機能・性能的になんら遜色ないものになった。これはもはや「本格的な自動車」であり、軽自動車の本来の趣旨とはかけ離れたものになってしまっている。
もっとも、これは経済成長が続き旺盛なマイカー需要があった頃にそれに応える形で軽自動車が肥大化してきたのであり、今後は超高齢社会の到来により「本格的な自動車」の需要はどんどん減少していくと予想される。軽自動車メーカーは軽自動車ビジネスの終焉を見切っているものと思われる。軽自動車生産からの撤退を各メーカーとも視野に入れている段階であろう。そこに加えてアメリカからの軽自動車枠撤廃の要求もある。国産メーカーとしては終末を迎えつつある国内の軽自動車市場よりも、環太平洋地域(とりわけ北米)の市場のほうがはるかに重要で、ある意味アメリカの要求は「渡りに船」のようなものなのかもしれない。「外圧によりしかたなく」と言えば消費者の反感を買わずに済むからだ。
今回の「超小型車」規格の新設はいわば軽自動車の原点回帰であり、役目を終えた軽自動車規格撤廃への布石ではないかと想像している。
運転日報(スプラッシュ)
天候:晴れ
積算走行距離:21652キロ
走行条件:市街地
乗員1~2名
Posted at 2012/05/28 23:13:13 | |
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