BMWのEV市販車として話題になった 「i3」 。
走行抵抗の削減、軽量化という真っ当なアプローチで、EVのネガティブなポイントを解消した思想に称賛の声が上がっているが、僕は、その姿を始めて見た時に、今から60年近く前のとある日本車を思い出していた。
フライングフェザー がそうだ。
昭和24年、それまで明確な基準が無かった国産車に対して、車両規則がきめられ、クルマは「軽自動車」、「小型自動車」、「普通自動車」、「特殊自動車」の四種に分けられた。
「軽自動車」とは、4サイクルで排気量150CC以下、2サイクルなら100CC以下とし、全長2.8m以下、幅1m以下、全高2m以下とされた。
その軽自動車の規格の登場によって、「これならウチにでもできる!」 とそれまでクルマなんて作った事のない色々なメーカーからクルマの様なモノが大量に発売された。
「ニッケイタロー」、「オートサンダル」、「フジキャビン」・・・・などなど、その中で、かつて日産に在籍していた「富谷龍一」氏が
「最大の仕事を最少の消費で」
というコンセプトで作り上げたのが、この「フライングフェザー」であった。
そのコンセプトを実現するために、徹底的な軽量化を推し進め、安価にするためにボディメイキングが容易になる様にプレスを使わなくとも出来る、単純な面と線とでエクステリアはデザインされ、
全長2,767mm、全幅1,296mm、全高1,300mm、ホイールベース1,900mm、重量約400kgの実にコンパクトで軽量なクルマが完成した。
一切の無駄を排除して軽量コンパクトに出来ていた。
「軽自動車」の範疇にはならなかったが、V型二気筒350CCのエンヂンを搭載し、軽量車と言っても乗り心地は大切だという考えから、横置き板バネの四輪独立懸架が奢られていた。
そして、ここが重要なんだが、走行抵抗という当時まだ、誰も目も向けていなかった点に着目して、タイアは走行抵抗を減らしながら、さらに必要な接地面積確保するために大径化され、幅の細いモノが選ばれたのだ。
まさに、この思想は、ある意味で 「i3」 のコンセプトのハイライトでもあるのだが、走る事が精一杯だった当時の国産車の中にあって、60年近く前に走行抵抗に着目したポイントは大いに注目してよいと思うのだ。
BS 曰くの 「ラージ&ナローコンセプトタイヤ」 を60年近く前に「富谷龍一」氏はすでに提唱していた。
まぁ、これには裏話があって、走行抵抗の削減という目的もあったが、なにより安価という点で、大径ナロータイアの採用を考えていて当初は「リアカー」のタイアとホイールが使われていたが、流石に最終的にはモーターサイクルのホイールとタイアが採用される事になったのだった。
ここまで書くと、凄いクルマが出たモンだと恐れ入るのだが、設計者として自分の考えが一番と考えるパターンで往々にして起こりうる過ちもあって、まず、シンプルで軽量さを狙ったボディパネルの構造は、どう見た目にも華奢で、美観と言う点では大いに問題があったし、軽けりゃブレーキも後輪のみで良いだろう・・・・という割切りも、「制動力不足」という重大な欠陥を内包してしまったのだった。
軽い造り易いを狙った外板は、お世辞にも美しいとか機能的と言った見栄えに欠けていた。
「軽さはすべてに勝る」という考えと、「走行抵抗の削減」という先見の明はあったが、残念ながら、そこには工業製品であって「商品」とは成り得なかった、思い込みの敗北によって、「フライングフェザー」は大失敗に終わってしまったのだ。
BMW のデザイナーやエンヂニア達が、「フライングフェザー」を知ってか知らぬかは永遠の謎なんだが、販売に失敗したとは言え、同じ様な思想を60年近く前に、日本のエンヂニアが考え、それを実現しようとした姿勢は、大いに歴史に残すべきと僕は、「i3」 を見るにつけ感じているのだが如何だろうか。
フライングフェザーの内装も質素そのもの。。必要最小限のモノしか付いていない・・・
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Posted at
2014/11/30 15:37:04