第14話

丈は逃げなかった、殺されるなら昇と一緒だと、車の中で腹は決めていた。

それから２人は、１時間近く公園で殴られた。
相手は４人、こちらは２人、少年同士の素手コロならそれでも勝算は在ったが、
ナイフを持った本物のヤクザ相手には、丈達に勝ち目は無かった。

昇は２人に両脇を掴まれてサンドバックの様に殴られながら、「あいつには手を出すな！」と懇願した。あいつとは、丈の事である。実はこの時の丈は、単車で大事故を起こし、４ヶ月に及ぶ手術後の入院から帰ったばかりで、バラバラに成った大腿骨（太もも）の骨が２０センチの金具で固定されており、松葉杖を使用してやっと歩ける状態だったのだ。



「うるせーよ！」そんな昇の懇願にも耳を貸さないヤクザ達は笑いながら昇と丈をまるで程度の悪い子供が、子犬をいたぶるかの様に殴り、蹴り回した。

丈は、必死に折れてる足を庇いながら逃げた仲間を憎んだ！

「あいつら、、」殴られてる間中、心の中で逃げた仲間の名を叫んだ！

２人が解放された時間等もう覚えてはいない、。
無言のまま公園に設置された水道水で血だらけの顔とシャツを洗い、
お互いに「大丈夫か？」の一言の確認をすると、、

どちらとも無くすすり泣きが始まった。


すすり泣きは序序に号泣に変った。朝まで泣いた、悔しくて泣いた、恐怖からの開放感に泣いた、裏切られた友への思いに泣いた。
当時、まだ若かった２人は、悔しさと恐怖からの立ち直りには時間が解決してくれたのだが、裏切った仲間に関しては、許す事が出来なかった。その思いは、今でも忘れない。

あの事件以来、丈は群れる事を止めた、
地元で逃げた仲間と顔を合わす事が在ったが、丈は、彼らを攻める事も罵る事もしなかった。そんな行為自体、空しいと感じた。


そしてあの時、心に深く刻んだ事が在った。
「窮地で逃げる男は、決して仲間では無い！」っと。

力で人を押さえ付けそれを仲間と呼んでいた、丈の１８歳の夏だった。


続く、、、