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2017年03月04日 イイね!

物語A164:「苦難の飛行」

群青色に染まった夜空の隅々にまで散乱した星屑の輝きの中を飛行しているグライダーはまるで夜間飛行を楽しんでいる様であった。
だが、操縦するパイロット達の実状は飛行を楽しむノンビリムードとはかけ離れており、操縦する緊張の連続で心が破裂しそうな状況であった。

機体のあちらこちらに取り付いている村民達の体が乱流を呼び起し、機体は不安定この上なかった。
さらに、飛行ノウハウも無かった為に、搭乗した村民達の機体への重量配分も好い加減であった。
そこへもって、発進時の衝撃で振り落とされた村民が出たグライダーのアンバランスは最悪となり、パイロットは全身から汗を吹き出しながら機体を安定させる為に操縦桿をひっきりなしに操作していた。
ほんの少しの油断が墜落への道と繋がる為、パイロット達の緊張の糸は張りっぱなしである。

密集して編隊飛行するグライダーがニアミスや衝突事故を起こすのも肯ける状況であった。
カンテラの光で、お互いの位置を確認し合いながら飛行する事はできたが、その光は満天に煌めく星々に同化しているうえ、カンテラ一つの明かりは意外とか細い光明であった。
さらにパイロット達は機体のコントロールで手一杯であり、この状況の中で周囲に気を配る事はかなり難しい事である。
副操縦士を同乗させていなかった事が悔やまれるが、これまた飛行の経験不足であった為に、その存在が必要とすら考えていなかった。
その故に、友軍機のそのカンテラの明かりをパイロット達は頻繁に見落としていた。

横合いから突然に目の前にスライドしてきた友軍機のグライダーの尾翼に驚いて操縦桿をあらぬ方向にパイロットは慌てて切り、姿勢を失った。
そして、その機体を立て直す事が出来ないままにグライダーはそのまま失速して、河へと墜落してしまう。

何とか機体の安定を立て直したとしても、その急激な姿勢変化に、遊覧飛行気分で機体に適当に掴まっていた村民が河へ落下した。
特に機体上で輪車になって宴会を催していた村民は例外なく振り落とされてしまった。
そして、村民の列が歯抜けとなって重量配分がさらに崩れ、その不安定な機体を操縦するパイロットの苦悩は深まった。
機体に取り残された村民にも、「清酒横綱」喪失をした苦悩が深まり、後を追って飛び込む村民が居た。

互いの存在に気が付かずに、進路が交差してしまうグライダーも当然のようにあった。
互いにゆっくりと接近し、スローモーションフィルムを見るかのように接触、機体同士が互いに相手の機体にめり込んで一塊になりながら、大きくしなっていく主翼が折れて千切れ、機体がゆっくりと細かく分解して破片となってゆき、河へバラバラと落下していった。

かなりのグライダーが墜落していったが、搭乗していた村民達は河に墜落して浮かぶグライダーを引っ張りながら河を力強く泳いで戻り、崖上へ再び運び上げた。
村民達はその道すがら、自分の飛び降り姿勢が綺麗に決まったとか、着水スタイルが見事であったとか、互いに自慢し合っていた。

空中分解したり墜落の衝撃で修理不可能な機体やその残骸は「丸太渡河部隊」の手によって河面から回収され、丸太舟の補強に利用された。
おかげで、当初のカヌーのように小さく、水があちらこちらから浸水してくる丸太舟は重厚な丸太舟、いや舟ではなく船と呼ぶに相応しい丸太船が出来上がってゆき、乗船する村民達の居心地を格段に向上させていった。

これに味をしめた「丸太渡河部隊」の村民達は、壊れていないグライダーを基地へ持ち帰ろうとしているところを横から奪い取った。
グライダーを引く村民達は当然これに抵抗するので、仲間内での騒乱が河面上でひっきりなしに起こった。
この闘いはD・I村との戦闘よりも熾烈で過酷な闘いであったと、後日の歴史学者は戦闘を経験した村民の体験談を元に語った。

このような、墜落や略奪に合わなかったが、急な突風に流されて夜空を迷走し、行方不明になってしまうグライダーが数機あった。
村民達はこれを「バミータ鬼門」に迷い込んだったのだと噂し恐れた。

「バミータ鬼門」に消失した機体は二度と帰還する事はないと判断された。
そして捜索隊の二次被害を恐れ、早々に捜索を諦めた。
村民達の鬼門に対する恐怖が如実に表されている決定であった。

だが、幾日も過ぎた後に飛行困難な程にボロボロのグライダーを担いで疲労困憊の姿で搭乗村民達が帰還してきた。
何が何でも遊ぼうとするこの姿は村民達の間で感動を呼んだ。

こうした悪戦苦闘するパイロット達の中に乾火馬(ほしひ うま)が居た。
訓練所宿舎への入居を拒否されてしまったので、通信教育を受けたのだ。元々、乾火馬の人生は試練の道そのものである。
従って、教育者ヨハン・FR・アレンから課せられる不条理な地獄の特訓は日常のいつもの些細な事と同じであった。
数々の特訓をMぺG形式の動画にしてアレン鬼軍曹にメールする事で課題完了のレポート提出とした。
MぺG形式には臭い情報も入っている為に、それに従って調合してしまったアレン鬼軍曹に数日間の空白期間があったと、後日の歴史学者がアレン鬼軍曹の日記から発見した。
調合法を試す勇気ある歴史学者は居なかった

苦労の末に乾火馬は晴れてパイロットになったのである。
そして、乾火馬に与えられたグライダーは一人乗りであった。

その乾火馬が夜空を順調に単独飛行している時、新・天の川を背景にD村のエリート(花形)将校、判満(はん みつる)は素振りの練習をしていた。
何気なく判満はボールを新・天の川に向けて打ち放った。
我の打ち放ったボールが天の川の「星の一つに成った」と想像するだけでも格好が良いと思ったからだ。
自伝に花を添えるエピソードとなると考えたのである。

打ち放ったボールは勢いよく飛び、その射線の先に乾火馬のグライダーがあった。ボールは乾火馬の顔面を直撃した。

当たったボールに乾火馬の闘争本能が判満の痕跡を見つけ、「畜生!」と呟きつつ意識は暗黒界に墜落し、グライダーは真っ暗い河に墜落していった。

-- 猫達の小劇場 その79 --------------------
灰色猫と黒猫が呆けた顔をし・・・顔をしている筈の舞台には誰も居ない。
裏手の草むらの中を幾つもの黄色い目がある目標に向かってじりじりと這い進んでいる。ふと、その中の一対の黄色い目がゆっくりと大きく曲がり始め、群から離れていった。

恐ろしい企てが進んでいるかのように静かであった。

--続く
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
この物語の著作権はFreedog(ブロガーネーム)にあります。
Copywright 2017 Freedog(blugger-Name)
Posted at 2017/03/04 20:39:30 | 物語A | 日記

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「プリウスミサイルというが・・・ http://cvw.jp/b/1467453/47466114/
何シテル?   01/11 12:41
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