LINEが日本でこれほどの成功を収めているまさにその要因こそ、海外市場のほとんどで成功できない理由になるだろう。
日本で絶大な人気を博している無料対話アプリを手掛けるLINEは来月、東京証券取引所とニューヨーク証券取引所(NYSE)へ同時に上場し約9億2000万ドル(約980億円)を調達する計画で、企業評価額は55億ドルに上る見込みだ。同社のチャットアプリ利用者数は、フェイスブックの「ワッツアップ」や中国の「微信(ウィーチャット)」など大手競合を下回るが、ユーザー1人当たりの売上高は競合をはるかにしのぐ。米調査会社スタティスタによると、LINEの売上高は昨年、ユーザー1人当たり約6ドルに達した。これに対しウィーチャットは約2ドル、ワッツアップは0.06ドルだ。
この好業績の秘密は、無表情なクマと感情を丸出しにするウサギにある。
クマの「ブラウン」とその連れ合いのウサギ、「コニー」をはじめ、LINEは多くの可愛らしいキャラクターをスタンプとして発売しており、ユーザーがこれを購入して友達に送る仕組みだ。スタンプの販売は昨年、ラインの売上高の4分の1近くを占めた。さらに、売上高の約4割はチャットアプリで提供しているゲームで稼ぐ。ゲームの多くはLINEキャラクターが主役になっている。アプリではさらに、テイラー・スウィフトやディズニーといった第三者が作成するスタンプやゲームも販売されている。
つまり、世界的なキャラクターのハローキティを生んだ国でLINEが大成功しているのは驚くにあたらないのだ。台湾やタイ、インドネシアなどアジアの近隣諸国でも大きな存在感がある。
しかし、日本の「かわいい」文化の影響が薄い国でも成功を収められるのだろうか。データは心もとない。実際、日本とこのアジアの3カ国以外では、過去1年で月間アクティブユーザー数が減少している。中国は参入して然るべき市場だが、同国では2014年からLINEへの接続がブロックされている。月間アクティブユーザーの4分の3近くが海外の利用者とはいえ、LINEは依然として売上高の7割程度を国内で稼いでいる。
さらに懸念されるのは、1カ月当たりのスタンプまたはゲーム購入者数が約800万人で頭打ちになっていることだ。広告への事業多角化はある程度の成功を収めている。ただ、全体のユーザー数が伸び悩む中、こうした事業の拡大は難しい挑戦だ。見込まれる評価額が55億ドルとすると、LINEの昨年の調整後利益に基づく株価収益率(PER)は57倍で、フェイスブックの51倍を上回る。
LINEはIPOで調達する資金を使って海外展開の努力を倍加したいところだろう。何より、日本ではすでに人口の半分がユーザーになっている。だが、LINEの世界市場での成功へ向けた道筋は一直線とはいくまい。
The Wall Street Journal.
JACKY WONG
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2016/06/15 03:17:25