一人になったらアンタ何するん?
と、昨年、元気な時(病状がマシな時)に聞かれて、自分はこう答えた。
もし、そうなったら、車でひとり気ままに温泉ドライブしたり、日本の世界遺産制覇したり、大型二輪免許取ってハーレー買って北海道ツーリングに行くわ。
あっそう。そんなら好きにやったらいいよ。
これを遺言ととらえているのか、一人の寂しさに耐え切れないのか、自分でも判然としないなかで、今、それを実行中である。
まず5月に紀伊半島一周を、そして今回は、日本三大秘境のひとつといわれる、徳島の祖谷渓(いやけい)、大歩危・小歩危(おおぼけ・こぼけ)まで、一泊二日のドライブに行ってきた。
・大阪~祖谷渓、3時間41分、片道265km、一泊二日の行程
出発前の天気予報で雨とは分かっていたが、出発当日の朝、起きて外を見るとやっぱりぽつぽつと降っていた。
もうホテルも取っているので諦めて、予定を一部変更しつつ出発。スイスイと阪神高速~明石海峡大橋を渡り、淡路島の室津PAでいったん休憩を取り、さらに走る。
鳴門の渦潮を眼下にチラッと眺めながら、鳴門海峡大橋を渡っていく。
そういえばこのルートは、父親が香川に存命中はPT-CruiserやCT200hでよく走ってたが久しぶりである。
父や姉に会うため妻を乗せて走ったPT-Cruiser、父親の病状悪化で何度も往復したのはCT200hだったし、そして今日、CLA250では、独りになって初めて本州を出た。
色々と感慨にふけり、こみ上げてくるものがあるので、それらを振り切るようにアクセルを踏み込み速度を上げる。
高松自動車道に入りいったん板野で降りて徳島道に乗り換えるルート指定だったが、ついいつものように降りずに直進してからハッと気づく。「そうか、香川に行くのじゃなかった!」。いつもならルートに煩いパッセンジャーが居るので慌てて焦るところだが、そこは一人の強み、焦らず騒がず、次のIC(白鳥大内)で降りて下道を走り、土成ICで徳島自動車道に無事乗り換えることができた。
それからしばらく走行し、吉野川SAで大休憩を取る。
あいかわらずのぽつぽつ雨なので、当初の予定だった下影の棚田(日本の棚田百選)行きは中止し、このまま祖谷渓へと向かうことにする。
山道を走って行く間、雨は激しく降ったり、小雨になったりを繰り返す。そんな中でちょうど昼を過ぎた頃、大歩危峡に入り、本日の第一目標地点、「祖谷そば もみじ亭」に到着。
ここは名物の祖谷そばで有名な店らしいので、昼食にとチェックしていたのである。
店内に入るとさっそく祖谷そば定食を注文し、食してみる。
祖谷そばは腰はあまりあるとはいえず、しかも短く切られているので量が少なくなっていくうちに箸ではさみにくくなって実に食べづらい。香りもそんなに強くない。食後の感想は、悪くはないが普通の手打ちそばっていうところ。一昨年の出雲そば、永平寺そばの方が個性が強く美味しかった。
・名物 祖谷そば定食。自家製の山芋がたっぷりかかっている。雑穀おにぎり、こんにゃく付き
そんな祖谷そばにちょっとがっかりしつつ、少し先の道の駅で眼下の大歩危峡を眺めながらまたまた大休憩。新しく買ったミラーレス一眼「GM5」の習熟に努める。
しかし、いかんせんカメラ素人。うまく機能をいかせず、大歩危峡の崖を走る列車はシャッタースピードを失敗。大歩危峡を下るラフティングも平凡な出来であった。見えているほど、思っているほど腕がついてきてくれない現実に意気消沈し、少し早いが、もうホテルにチェックインして温泉を楽しむことにするのであった。
・日本三大暴れ川のひとつである吉野川に削られた「大歩危峡」の奇観
・列車が通るのを約30分待ち構えていたのに、肝心のシャッタースピード設定を忘れていた写真
夜は「満天のスターウォッチングと夜のかずら橋ライトアップツアー」に参加していたが、雨なのでかずら橋ライトアップツアーだけの敢行となる。
ツアーは20時からなので、先に早めの夕食を取り、愛機(?)GM5を装備し、いざライトアップツアーへ。
雨だからなのか、意外と参加者は少ない。
自分以外は、慰安旅行の親父達数人と若い中国人女性2人だけだ。計10人ほどのメンバーを乗せたマイクロバスがホテル前を発車。約10分ぐらいでかずら橋に到着。
けっこう暗いので様子がわかりづらいが橋は確かにライトアップされているようだ。思っていたような煌びやかなものではないが、これはこれで風情がある。とりあえず、傘を片手に(または首ではさみ)不自由しながら手ぶれに気をつけて撮影を始める。
撮った写真が以下のもの。
懸念していた手ぶれのほか、暗いので構図をミスってるのも多く、失敗率は思いのほか高かったのは今後の反省材料だ。
・ライトアップされたかずら橋。都会のライトアップのように煌びやかではない
・すぐ近くにある「琵琶の滝」。ここも一応ライトアップされていた
二日目は朝から晴天だった。
これならいい写真も撮れそうだと気分も良くなる。温泉に浸かってから朝食を摂りホテルをチェックアウトして出発。
かずら橋へはすぐに到着した。降り口側の駐車場にCLAを停め、早速撮影に入る。
その成果が以下のもの。
・昼間のかずら橋全景。その昔、空海が架けたとか、平家の落人が敵が来たらすぐに落とせるように架けたとか諸説ある
・出口側アップ。シラクチカズラで作られているのがよくわかる
・これも出口側アップ。橋の中央付近にフレアが発生しているのが惜しい…
・長さ45m、幅2m、出口側から入り口までの全景
・途中からのショット。けっこう揺れるし、間が空いているのでカンタンに足がはまり込む
・橋の途中から下を流れる祖谷川を撮る。きれいな水質をしているが吉野川水系らしく急流だ
・で、これが昼間の「琵琶の滝」ですね
誰も文句を言わない一人旅で、撮影に時間を取ることができている割にはクオリティーが低い。
さらに精進が必要のようだ。
さて、次はよく祖谷渓の紹介で出てくる「ひの字渓谷」へ向かう。
下調べの結果で注意すべきは、そこへ向かうルートである県道32号線は、かなり道幅が狭いということだ。
車一台が通れるぐらいの道幅しかなく、対向車が来れば何箇所か設けられているすれ違いポイントまでどちらかがバックしてやり過ごすらしい。
とりあえず、ひの字渓谷まで対向車は来るには来たが、特に何mもバックしなければいけないハメにはならなかったので運が良かった。しかし、枯れ枝、落石、ひび割れ等、けっこう道が荒れていたのでタイヤが心配になった。
・右は切り立った崖、左は谷底の県道32号線。この道幅で写真のように対向車が来る
・ひの字渓谷。その名の通り、「ひ」の字に見えるが、これをもっとキレイに撮らなければ…
その後は、あいかわらず道が狭く荒れている県道32号線をひたすら下って行き、昨日雨で行かなかった「下影の棚田」へ。
webで紹介されていた地図を頼りに何とかそこにたどり着いたが、そこは棚田があるとは思えない場所だった。車を降りて少し探すも早々に諦めてちょうど家の庭で作業をしていた年配の方に尋ねてようやく場所がわかった。
だがしかし、現在地からさらに先のようだ。その方が心配して親切にも車で案内してくれるというので、ありがたくご好意を受けてようやくたどり着くことが出来た。
そこで撮影できたのがこれ。
・下影の棚田全景。ここまでは徒歩、もしくは軽トラックでなければ来れない。自分も途中でCLAを置いて軽トラに乗せてもらった
曰く、今年だったか作り直しているとかで、まだすべてできていないらしい。が、それなりに姿は整っていたが、同じ日本の棚田百選でも、3年前に行った和歌山県有田市の「あらぎ島」の方が美しかった。
・これが和歌山県有田市の「あらぎ島」の棚田
さて、これで予定していた場所はすべて抑えたので、あとは遅い昼食を食べて帰るだけ。昼食は行きも寄った吉野川SAで摂り、無理せず休憩を挟みながら無事帰宅したのであった。
ちなみに、走行距離は540kmとなったが、燃費は16.8km/Lとすごく優秀だったので、無給油で走りきってもまだ給油ランプも点いておらず、燃料系の針もまだ最後の目盛りを指している。
走った場所も良かったのだろうが、改めて長距離ドライブのBENZは、燃費がいいと実感した。
なお、秘境では普通にベンツもポルシェも走っていたのを付け加えておく。