僕は紙に書かれた本が好きだ。
色々なサイズの本、色々な厚さの本。
特にハードブックには目が無い。
僕は紙に書かれた本が大好きだ。
その匂い、その手触り、古くなりあせた、その色。
僕の書庫にある本は、古い本で昭和二十年代から始まる。昭和二十年。つまり1945年。
まもなく70年にもなる。何事もなければきっとこれから70年先もそこに居続けるだろう。
僕は紙に書かれた本が好きだ。
しかし、電子書籍の時代がもうそこまで来ている。いや、実は足首はおろか、すでに膝上まで浸食されて今にも半身は浸かろうかとしている。
僕は紙に書かれた本が好きだ。
しかし、ありとあらゆるものが電子化され、簡略化、画一化され、一つになって行く。
言語が一つになり、通貨も一つになり、様式が統一され、地球上に多様性が失われた時、全ての好奇心は潰(つい)えてしまい、老人の冷たい精神だけが取り残されたように残るだろう。
情熱を持たないその精神は、一切の飛躍を拒む。
そして静かに停滞が始まる...................................................
僕は紙に書かれた本が好きだ。
その本には僕の行く未来が描かれてあり、その本には僕の過去が残っている。
僕は紙に書かれた言葉が好きだ。
もうずいぶんと昔、僕がある女性へ、思いの丈を綴った手紙を書いて送った。その手紙のせいで僕の未来はバラ色に煌めいた。あの子はまだそれを持っているだろうか。
USBの中でもなくHDDの奥底でもなく、机の片隅にでも、その個性ある稚拙な文章が残っていれば、僕は是非もう一度それを見てみたい。
その手紙には、きっとその時の未完成で青い僕の感情と、少ない語彙を駆使した感情表現で書かれてあるに違いない。
その手紙は消去できないほどの情熱が残っているに違いない。
その手紙は昔、人々からこう呼ばれた。
そう『LOVE LETTER』と
Posted at 2013/01/17 23:40:43 | |
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