第三話
夏休み期間の為、次回歯の治療は九月である。
片側下の奥歯が無いというのは実に不便である。
美味しい食事も面倒になり、噛むこともせず早く呑みこもうとするのだ。これは消化器系に負担がかかるし、ボケが進行するとも聞いた。ああ早く新しい奥歯が欲しいものだ。
そのような中、電子レンジが壊れたのだ。
数年前近所に開業したノジマ電機に出かけた。広い店舗内に感動し全力疾走したい気持ちを抑えるのに苦労した。
家内は様々な電子レンジを調査し始めた。彼女のショッピングは大変長い。とりあえず今回さほど電化製品に興味の無い私は近所のショッピングモールへ入る。
全国名物駅弁の販売をしており、一番人気は横川駅『峠の釜めし』とのこと。
懐かしく早速購入、捨てるのが心置きなく今まで食した釜飯の殻容器は小物入れや小銭入れとして活躍している。
長野新幹線開業に伴い横川駅~軽井沢駅間廃線、『峠の釜めし』はどうなると心配していたが、どうしてどっこい大人気、商売繁盛の様で何よりである。
さてそろそろよかろうとノジマ電機へ戻るとまだ電子レンジの調査中だ。
それも女性店員を交えてだ。やれやれと店員との会話を耳にする。
料理の事は全く持って理解不能の私だが、店員は家内の質問にテキパキと回答しているのだ。
その後家内は電子レンジの機種を決定した。何でも型遅れの現品限りの格安商品とのこと。
店員は「ありがとうございます。」と言い、小柄ながらも電子レンジをレジへ運ぶ。
かなりの重量があると思ったが、手出しをして商品を落としたら一大事。情けないが店員への手助けは止めておくことにした。
保証書や商品説明を受けると店員は商品収納のダンボール箱を持ってきた。その後、わざわざ電子レンジをダンボール箱に収納しようとしたのだ。
私はすかさず彼女の行動を断った。ありがたいが、その行動はナンセンスである。
なぜなら私は帰宅後再びダンボール箱から電子レンジを取り出さねばならず、それは無駄な労力である。
家内が支払いを済ませると私は電子レンジを持ち上げた。
重い・・・想像以上に重い。女性店員はさぞかし辛かったと思う。
帰宅後旧電子レンジを片づける。製造は西暦2000年、早16年も使用していたのだ。
後日レシートと一緒に持って来れば旧電子レンジを無料で処分するようなので家内は旧電子レンジの清掃を始め出した。
中からは細かい様々な『おこげ』が出てきた。色々な出来事が走馬灯のように家内の脳裏に浮かんだのであろう・・・「家族の誕生日やクリスマスに沢山ケーキを作ったね、ありがとう。」旧電子レンジにお礼を言っていた。
掃除を終え、『峠の釜めし』を頂く。軽井沢・・・碓氷峠・・・眼鏡橋・・・横川を想い出す。
懐かしい味と景色に心洗われるようだ。
そういえば洗濯機もそろそろ寿命・・・洗濯機もノジマ電機で購入しようと家内と決めたのである。
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庄助『今日の出来事』 | 日記
Posted at
2016/08/17 19:27:42