足尾銅山

先日、北方面へ遠出した時、実物のトヨタ2000GTが対向車線を走ってきました。
動いている実物を見るのも初めてで、思わずステレオを切って窓を開けてしまいました。
ただ砂利道だったのでキズついていないか心配です。


三連休、特に予定もなく、家の掃除ばかりしていました。
とある実験をやろうとしたら、思った以上に条件が達成できず諦めました。
折角なので、普段から近くまでは行くけれども見たことがない、足尾銅山へ行ってみました。
と言っても夜、朝方です。

足尾銅山と言えば、誰もが知る鉱毒公害の震源地です。
随分と再生されてきているようですが、未だに緑のない山が残っているそうで、これからも何百年かかかるのではないかと言われており、まだその余波が残っているようです。

足尾町は観光として銅山の関連施設を宣伝しているようですが、肝心の銅山、特に工場跡などはかなり解体されてしまい、精製炉の大きな煙突が残っている位のようです。

時間も時間でしたが、銀山平なる所へ上っていきましたら丁度夜が明けてきて、
下々の日光足尾の山々に雲がかかって、それは非常に美しい光景が見られました。
クマが出るらしくおっかなかったのですぐに下りましたが、朝靄のかかるこの時間が
山を見るには一番好いと思います。

麓まで下りると丁度空も明らんでヘッドライトも要らぬ位には明るくなり、足尾の集落の
全容と谷川がよく見えるようになりました。
集落の反対側に見える工場跡を眺めていると、既に大半の施設はありませんが、
往時の足尾の光景が、多分どこかで見た写真からでしょうか思い浮かんで来ました。

今はこの集落からは緑のある山しか見えませんが、かつてはこの下を流れる川は魚の住めぬ「死の川」であって、この集落、そして下流に住まう人々は激烈な病害に見舞われたのです。

こんな山奥にこんな規模の集落があるのが、あくまで鉱山の城下町として発展
したとしか思えず、そしてここにある家々の人々の先祖あるいはまだ居られるのかも知れませんが患者の方が戦っていたのだということを思わずには居れませんでした。
しかし同時に、往時ここではそれは賑やかな、活気あふれた生活が営まれていたこと、
その光景も思わずには居れません。

街中ではあるものの、そこら中にシカがいました。
今では人への被害こそ報告されていないようですが、もしかしたら野生の動物にはまだ
影響があったりするのではないかと思ってしまいました。

足尾など、公害の発生地の名を聞くと、いつも「今の生活があるのに対して、失ったものは何か」についてを考えてしまいます。
どんなものでも、得られるものがあれば、必ず失うものがあります。
それが何であろうと、失うものが、他の誰かを不幸にするものであってはなりません。
少なくとも、自分が欲したがために誰かが死ぬといったことは、あってほしくありません。

そのためには、需要があるからそれを供給する…経済活動が、本当に正しいのか？
一度踏みとどまって考えてみたほうがよいのではないか？
今ある生活を向上させることだけを考えていてはいけないのかもしれません。

ともあれ、足尾はとても静かで眺めのよいところでした。
工場跡の見学とかがあったら是非とも行きたいところですが、随分と変わってしまったようです。
富岡と並んで、足尾も保存していったほうが良かったのではないかと思いました。
修学旅行なんかで学生が来れば、尚更良い勉強になるのではないでしょうか。