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2015年04月12日

【試乗】ホンダ・S660

【試乗】ホンダ・S660 ふたつの、性格

今話題のホンダS660を見て、乗って思った正直な印象です。
このクルマは元々、ホンダ社内の「夢のクルマコンテスト(?)」で提案されていた企画をそのまま市販化したという珍しい経緯を持つクルマです。
その為、メカニズム的に凝っているクルマであります。エンジンそのものはN-BOX系のエンジンを流用しつつ、それを前後反対にして搭載されています。
ソフトトップを採用し、フルオープンではなくタルガトップを採用することで屋根の重量・重心低減、開閉機構の削減による軽量化+信頼性の向上、ロールオーバーバーを大型化してボディの剛性を向上+衝突・横転時の安全性の向上を図っています。
それと引き換えに失ったオープンの開放感は、ウインドゥディフレクター部分をガラス製の電動開閉式(ホンダでは「パワーリヤウィンドウ」と呼称)にすることで補いつつ、開けることでエンジンの音も聞かせるという魅力もプラスしています。
本来エンジンが収まっていたフロントボンネット部分に、タルガトップの幌部分を収納するスペースを設けつつ、フロントに置いておいた方がいいもの(ラジエター、ウィンドゥウォッシャータンク、ブレーキブースター+ブレーキオイルリザーバタンク、バッテリーなど)は残して日常メンテの容易さと重量配分の適正化を図っています。
燃料タンクは小型のタンクをシート後方、エンジン前方のほぼ重心近くに配置しています。これで燃料容量に関係なく重心位置の均一化を図りつつ、乗員を地面近くに座らせることで重心位置を下げ、運転者に対しスポーツカーを運転している感覚をより強めることに成功しています。
それを軽自動車の規格枠内に収め、軽自動車として販売するためにボディは小さく、特別な工法や材料を使用しなくても車両重量は十分に軽量で軽自動車の自主規制(64ps)内でも十分なスポーツができる…というものです。

つまりこのクルマで諦めなければいけないことは、本体価格が軽自動車と思えぬほど高い事(198万円から)と旅行に行くときの荷物とおみやげを諦めることくらいです。
スポーツカーとしての割り切りは、国産スポーツカーの中では他に類を見ないほど潔くスポーツカーに振っています。パッケージングだけ見ているとロータス・エリーゼのようです。
つまり持ち合わせている一面は、スポーツカーとしての資質を十二分に設計段階から与えられ、目的を達するための努力を一切惜しまなかったというその一面です。

一方で、乗せて頂いた時の印象はまるで一変します。(試乗車はαグレードCVT車。)
CVTは常にトルクバンドに乗せる制御をするため、2000~3000rpm域内でボディはスルスルと加速します。また音質はパワーリヤウィンドウを閉めていると非常に静かであるものの、開けると非常にメカっぽい作動音を聞かせます。ただしCVTの制御によって発するエンジンサウンドと乗員が期待する加速性能は一致していません。加えてCVTには疑似ギヤ段モード(つまりパドルシフトによるギヤ比制御モード)があるものの、その疑似ギヤでホールドしようとする機能はありません。よって峠道などでのエンジンブレーキ制御や、街中で少しパンチが欲しいときには役に立ちません。

旋回性能については、私の期待とは全く反したものでした。
ミドシップ車(三菱・アイやポルシェ・ボクスターなど)に乗せて頂いて、個人的に一番楽しいのは”普通の交差点を左折・右折する”ときです。コマが回るようにスルっと回り、ステアリングを戻せばまたスッと回る力が戻っていく…あの感覚がS660には一切ありません。例えるなら普通のFF車のように、少し回りたがらない(=アンダーステア傾向の)味付けがなされているように感じます。
理由としては軽自動車初とホンダが謳っている「アジャイルハンドリングアシスト」が考えられます。これは車両側がステアリングの角度、切る速度、車速などを検知してドライバーが求めるカーブの曲がり方を計算した上で、各車輪にブレーキを掛けてクルマが自動的に曲がる力を作り出す…というものです。作動速度域がカタログ上に明示されていないので断言はできませんが、このおかげで ”ある意味非常に安定して” 旋回することができます。…個人的に、この機能は全く要りません。

足回りやボディ剛性は軽自動車と思えないほど強靭で、ボディが軽量であるためにサスペンションも柔らかめ、なので乗り心地は非常にマイルドです。ただし幌周りからゴムが擦れるような音がするのは…オープンカーの宿命であると考えます。またそれが気にならないほど楽しさの素質を持ち合わせていると思います。

つまりこのクルマが持ち合わせるもう一つの側面は、普通の乗用車という側面です。本来非常に歓迎すべきことかもしれませんが、本来のパッケージングが持つ楽しさを削ぐ味付けが為されていることに強い落胆の意を覚えます。このクルマに電子制御は要らないのではないか?とさえ思います。
加えて、こうハッキリ言ってはいけないかもしれませんが「CVT車を買うならばS660の楽しさを享受できない」と思います。エンジン・駆動系の効率を求める制御とドライバーが求める制御が著しく乖離している仕上げです。

このクルマを設計した人のセンスは非常に優れていると思います。ここまで割り切ったパッケージングには清々しさを覚え、敬意を払いたいとも思えます。ただし、それを味付けた人は…意図を理解してくれなかったのだろうと少し落胆してしまった、そんな複雑なクルマです。

フォトギャラリーにも写真を掲載しておきます。
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Posted at 2015/04/12 21:44:02

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この記事へのコメント

2015年4月12日 22:03
こんばんは
>例えるなら普通のFF車のように、>少し回りたがらない(=アンダーステア傾向の)味付けが

過去のS2000やビートのように、乗り手を選ぶ(オーバーステア特性は)味は今の時代
合わないとでも思い込んでいる?のでしょうかね。だとしたら、魅力半減ですね。
コメントへの返答
2015年4月13日 22:05
エンジニアリングさん、コメントありがとうございます。

万人受け、誰でも安全に…という思想のもと、アンダーステア方向にセッティングを振ったのかもしれません。
しかしそれが…ミドシップ車の乗り味を失うという魅力を奪ったように思います。
せめて、安全装置類のOFFスイッチがあれば違うのかもしれませんが…今のところは、何とも残念です。
2015年4月13日 22:38
こんばんは。もう試乗できるんですね。
200万円以下で、伝え聞く性能ならば非常に魅力的ですね。
僕も乗ってみたくなりました。

僕はMRは横置きミッド(エリーゼ、MR2、MR-S)しか乗ったことないので、ちょっとトヨタ~さんの意見と違うかもしれませんが、横置きミッドの本質はゼロステアドライビングだと思うんですよ。つまり、交差点のようにステアリングを切らなければいけない状況でドライバーを中心に巻き込むような挙動をするマシンは、全開走行では攻められず、逆に魅力を半減させてしまうと思います。
最大旋回Gを生み出しながらも、トラクションをかけて前へ進んでいけるのがミッドシップの最大の魅力なのに、横置きミッドはその構造上(重心の高さ上)、大きな旋回Gには耐えられない。なので、簡単にアングルがついてしまう(自転してしまう)クルマはダメだと思うんですよね。

ポルシェのケイマンのような完璧なミッドシップならば、どんなシチュエーションでもくるくると回る楽しい挙動が楽しめますが、国産車の価格帯ではそういう挙動が楽しめるのはアングルがついても立て直しが比較的容易なフロントミッドなクルマだけで、横置きミッドでスポーツ性を求めると必然的に味付けは基本挙動はアンダーステアになっていくのではないかと思います。
コメントへの返答
2015年4月14日 19:33
コー@EP91さん、コメントありがとうございます。

>横置きミッドはその構造上・・・
全く仰せのとおりです。本文中では触れずにおきました。(笑)

正直なところ、ここまでパッケージング上の素性の良さが街中では生かし切れていない気がします。
つまりサーキットなりでぶっ飛ばせばミドシップらしい楽しさを享受できるのでしょうが、ナンバー付で公道も走る以上、ともすれば暴走行為を推奨するようなことも無責任には発言できない…というのが私の意見です。
だからこそ「交差点でも…」という表現を使い、今まで乗った少ないMR車全てで個人的に感じ取れた魅力が肩すかしだったことにひどく落胆してしまいました。

>基本挙動はアンダーステア
これも、どことは言えませんが駆動方式を問わず基本的にアンダーステアだ…という話を聞いたことがあります。
S660については、その素性の良さからもう少しニュートラルステアならばシティユースでも楽しめたのではないか…と思います。

もっとも、そうなれば高速域(つまりサーキットなど)では不安定に繋がるので諸刃の剣ではありますので、そこが車両開発(市販車)の難しいさじ加減であろうと思います。

少し私の期待値が高すぎただけかもしれません。
2015年4月17日 21:44
こんばんは。

期待はしているのですが、CVTはいただけませんね。
MTとまでは言わないまでも、CVTだと感覚がスポーツと合わない気がします。

「アジャイルハンドリングアシスト」?
要りませんねぇ・・・。
それよりも価格を下げてくれた方が、もっと多くの客を取り込める気がします。
それに、シンプルな状態を乗りこなすところが良いと思ってしまいます。
まぁ、オプションなら理解できますが。

しかし、64ps規制の影響もあり、コペン君もそうですが、今の軽でスポーツというには限界があるように思います。
せめて80psあれば、また変わってくると思いますね。
コメントへの返答
2015年5月23日 23:04
センちゃんさん、コメントありがとうございます。
返信が大変遅くなりましたことをお詫び申し上げます。

軽スポーツならば、効率よりも軽量単純な方が個人的には楽しめる気がします。
なので、センちゃんさんが仰せのパワーまでは上げなくても、MTで軽量・電子制御なし車があって欲しかったと思います。
いずれ出てくる気も、しなくはないのですが…。

内容に対する値段については、個人的には十分廉価だと思うレベルです。絶対的金額は確かに高いのですが、中身は非常によく出来ていると思います。
だからこそ、安定性重視のセッティングor電子制御システムが非常に惜しく感じるのですが…難しいです。(汗)
2015年5月25日 0:00
 雑誌のちょうちん記事より、参考になりました。
ありがとうございます。m(_ _)m

ということは、気持ちよさでは、ビートの圧勝になりますね。

余計な物をつけずに、車重を700kg台に押さえれば、EPSも不要ですね。

車重を聞いただけで、自分はかなり、がっかりですね。

軽の規格で出す意味があるのでしょうか。?

税金の優遇以外メリットがないし、セカンドカーを持てる余裕のある人は、それにこだわる必要も無いように思えます。

もっと、安価にできれば、AZ-1を買った若いときの私の様に、独身の若者が買うかもしれません。

町で見かけたオーナーさんは、みんな白髪でした。(^^;


コメントへの返答
2015年5月25日 22:31
ちーむ1人さん、コメントありがとうございます。

残念ながら、ビート含む旧規格車両はほとんど乗ったことがないので単純に言えませんが…多分そうかと思います。
ESPは今後標準装備義務化されるらしく、それは仕方ないことと思います。しかし電子制御どっちゃ盛りで「はいスポーツカーで御座い」は、個人的には納得いかない節があります。

>軽規格の意味
個人的見解ですが、無駄に大きくしなかった、切り捨てるものを切り捨てられた意味では非常に有意義だったと思います。
これが普通車規格だったら
「じゃあゴルフバッグも載せて…」
→「重くなったからハイパワーで…」
→「制御できないからESPにBBCに…」
→「うーん儲けを考えると1000万円」
に陥りそうな気がします。(どこのどれとは言いませんが、そんな車もあります。)
なので、小さくする足かせがあったおかげで割り切ったスポーツカーパッケージングができたのではないか、と思います。
2015年6月9日 14:37
はじめまして。
通りすがりに書き込みます。
僕も過去に初代MR2を所有しており、
雑誌などでも大絶賛なので気になって
いたんですが、ビデオなどで見る限り相当
アンダーなセッテイングだなと思いました。
ロールさせず余計な荷重移動をさせない
感じです。タイヤがあれなんで旋回Gはありそう
ですが、振り回して乗る車ではなさそうだなと。
もう少しホイールベース長くしてリアタイヤを
サイズダウンすれば楽しそうなんですが。
コメントへの返答
2015年6月12日 22:09
NewKatanaさん、初コメントありがとうございます。
返信が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。
ビデオで車両特性を感じ取られたとの旨、よく観察されている方とお見受けいたしました。
タイヤが確かにいいのである程度は攻め込んでも付いてきそうですが、限界を超えると非常に怖いクルマ・・・になるかと思います。
サーキットで振り回すにはもしかしたら面白いかも…というのが個人的見解です。

今後ともよろしくお願いいたします。

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