なかなか時間が取れず、昨年の11/17に発売が開始された新型「ゴルフ ヴァリアント」にようやく乗る事が出来た。テストしたグレードは一番シンプルな「TSI Trendline」で272万円。まぁ新型とは言っても、基本はビッグマイナーだからゴルフ6未満の「ゴルフ5.5」って感じでしょうか。先代(とメーカーが呼ぶ)「ゴルフ ヴァリアント」は2007年7月に日本デビューだったから、2.5年も経たずしてモデルチェンジ(ビッグマイナー)を受けた事になる。ゴルフ5発売当初の説明ではステーションワゴンは旧型を併売。将来的には背高のゴルフプラスと3列シートのトゥーランでワゴン需要をカバーしていくと言っていたが、ワゴンを望む声が予想以上に大きく急遽(?)追加設定された故のタイムラグ。まぁその判断は(日本では)正解だったでしょう。ワッペングリルがあまり好きじゃない私としては今回の改良は歓迎すべきニュースだが、既ユーザーにとって嬉しいニュースではあるまい。とりあえずはこのフェイスで暫く落ち着くのかな....。個人的にVWのブランドイメージは「質実剛健・華美な装飾よりも中身で勝負」っていう感じなので、新型はスッキリしていて良いと思います。歴代ゴルフの中で私が一番好きなゴルフⅣを彷彿としますね~(写真一番下)異論を恐れずに言えば、今のVWラインナップの中で「一番VWらしい」と思えるクルマかもしれない。
さて、改めて「ゴルフ ヴァリアント」と対面すると車種数が激減しているステーションワゴンの中で、サイズや価格も含めて貴重な存在だと思う。全長4545mm全幅1785mm全高1530mmホイールベース2575mmのボディは同価格帯にある「スバル・レガシィ」(全長4775mm全幅1780mm全高1535mmホイルベース2750mm)や「マツダ・アテンザ」(全長4765mm全幅1795mm全高1470mmホイルベース2725mm)と比べると200mm以上もショート。気になる街中での取り回しは最小回転半径が5.0mのゴルフに対し、レガシィが5.5m・アテンザが5.4mである事を見てもゴルフの優位は明白。ビジネス兼用の匂いがするカローラ・フィールダーや日産ウイングロードじゃあんまりだよね....となると案外競合車種が無い。(後日追記:ボルボのV50がライバルになりそうですね。全く思い浮かばなかった...)
今回テストした「TSI Trendline」のエンジンはシングルチャージャーの1.4L TSIエンジンを搭載。最高出力122ps/5000rpm 最大トルク20.4kg-m/1500-4000rpmを発揮する。ミッションは乾式7速DSGを採用。間違いなく世界最先端の組み合わせであり、残念ながら日本のメーカーが遅れを取っている分野でもある。昨年末にテストした新型ポロの「
1.4 Comfortline」にイマイチ満足できなかったので、今回は若干の不安を抱えながらのテストとなった。特に、乾式7速DSGのギクシャク感とシングルチャージャーのTSIエンジンが1,370kgのゴルフ ヴァリアントに対して不満の無いパワーを発揮してくれるのかが一番の興味であった。
新型ゴルフシリーズの売りである静粛性については、ヴァリアントについても共通で一昔前の喧騒が嘘の様に静かなクルマになった。エンジンを回し気味にしたときはそれなりにエンジン音が聞こえてくるが、普通に走っている限りでは概ね2000rpm以下だからその心配は無用。僅か1500回転でピークトルクの20.4kg-mを発揮するTSIエンジンのお陰で、乾式7速DSGのギクシャク感も非力なポロに比べるとかなり影を潜める。しかし違和感が100%無いと言い切れないのが惜しいところではある。通常のトルコンATの場合だとアクセルを踏まずにトロトロとクリープ走行する様な時に、少しアクセルを踏むようにすれば大抵の場合は問題ない。やはりDSGはトルクフルなTSIエンジンと組み合わせてこそ本領発揮なのだと痛感した。ポロについて言えば、本命は今年中に発表される1.2TSI(スポーツライン?)だろう。テスト車は500kmも走っていないほぼ新車の状態であったが、返却時には多少馴染んできたのかギクシャク感が薄れていた。慣らしが終わった状態でどれ位の違和感が残るものなのか改めてテストしたい。
改めて感心するのはとても1.4Lとは思えないパワフルな走り。もはや既存の排気量概念はこのクルマを語る上では何の意味もなくなっている。ターボラグも無く、2.0Lクラス以上のNAエンジンと同等のパワーが実感できる。出足の一瞬だけ排気量の小ささを垣間見る瞬間があるが、それは重箱の隅の話。あとはディーゼル(TDI)が輸入されれば面白いのにねぇ。
ここで疑問がわくのは、昨年4月にテストした「
ゴルフ TSI Comfortline」と随分印象が違う事。特にステアリングの落ち着きや走りのフラット感については今回のヴァリアント「TSI Trendline」の方がずっと印象が良かった。その要因としては、モデルの熟成が進んだ事もあるのだろうが、ヴァリアントの方が(1,290→1,370)約80kg重い事と、装着されるタイヤがゴルフの場合205/55R16のエコタイヤ(ミシュランの
エナジーセイバー)だったが、ヴァリアントは驚いた事に同サイズだが贅沢にもスポーツタイヤの「
コンチ・スポーツコンタクト2」を履いていた事が作用していると思う。車両の性格を考えればタイヤのチョイスは反対のような気もするが...。まぁエコタイヤなら日本メーカーの製品を履いたほうが良いと思います。個人的に普通のゴルフ(ハッチ)はリヤデザインが好みではないので選択肢に入らず、必然的にヴァリアントに興味が行ってしまいます。機会があれば、改めてハッチのゴルフも最新型に乗り直してみたい。
今回、折角のテストドライブチャンスだったのだが体調の問題と寒波のお陰で凍結の心配があり、山道のテストコースは割愛。全体で150km程度のドライブといつもより短めの行程になってしまったが、「ゴルフ ヴァリアント」のテストには十分なボリュームだった。燃費は激しい渋滞を含む一般道が90%に加え、高速道路がほんの1区間という燃費には厳しいコンディションだったが13km/Lを記録。驚くほど良いと言うわけではないが、まぁそんなものだろう。燃費も改めていつものコースを走って計測してみたい。
どう言う訳かヴァリアントを受け取って走り始めたとき、約10年前(2000年2月)に自身初のVW車となる「ニュービートル」が納車された頃の事をフッと思い出した。もしかしたら、ニュービートルと同じくメキシコ工場(プエブラ)製だから、懐かしい匂いがしていたのかもしれない。以前乗っていたパサートワゴン程ではないが、安定感のあるドッシリと濃厚な走行フィーリングのお陰で「ホッ」とするクルマ。長距離ドライブや疲れている時には、こういうクルマの有り難味を感じるハズ。
「TSI Trendline」は272万円の価格と引き換えに、クロームパッケージ(フロントグリル、エアインテーク、サイドウインドー)やクロームルーフレールが省かれ、ブラックアウトされる他、バイキセノンヘッドライトやフルオートエアコンが落とされる。しかし、安全装備についてはESP(横滑り防止装置)や後席のサイドエアバッグを含む8エアバックなどは訳隔てなく装備され、イモビライザーやマルチファンクションインジケーター、本革巻きのステアリングなどもしっかり装備。個人的にはフォグランプが無いのが惜しいが、それ以外については満足の出来る内容と思う。むしろギラギラしたクロームで縁取られていないほうがゴルフらしいので好感度大。
最後にワゴンの荷室について言えば、相変わらずリヤシート座面を引き起こした後、ヘッドレストを外して背もたれを倒す事でフラットな荷室(175cmの私が寝れる)が実現するタイプ(ダブルフォールド)だが、私はこれでいいと思う。引き起こした座面が荷物の運転席直撃を防いでくれるし、もう呆れる位頑丈なラゲージネットパーティションが標準で装備される。人間も荷物も運ぶときはとことん真面目に。ゴルフって本来そういうクルマですものね。
◎
フォトギャラリーもよろしければどうぞ◎
↓Golf Wagon 1.6E (2000y)実用ドイツワゴンって雰囲気が今でも大好きなクルマ。 (245万円:当時)
↓Golf Variant TSI Trendline(2009y)上記の1.6Eの末裔ですね。結構似てるでしょ? 272万円
↓Golf Variant TSI Trendline(2008y)先代にTSI Trendlineが追加されたのは2008年08月。短命だったね。259万円
Posted at 2010/01/17 23:52:43 | |
トラックバック(0) |
試乗インプレッション | クルマ