「東京モーターショー2015」の感想なんぞを今頃になって書いてみる。筆が進まなかったのは、それだけ盛り上がりに欠けていたと言う事なのかも。従来ならば、モーターショーへ行けば概ね次期愛車が決まり、そのまま販売店へ予約に駆け込む事も少なくなかったが、今回そんな気配は全く無し。一言でいえば、スズキ以外のメーカーは適当にお茶を濁した程度の展示内容だったと思う。東京モーターショーが「世界5大国際モーターショー」なんて言われた時代はとっくに終わり、隔年開催のローカルイベントになり下がった今、海外メーカーはいざ知らず、国内メーカーまでもが東京を軽視しているのはいかがなものか。こんな状況では、この国の基幹産業である自動車業界で働きたいと夢を抱く子供は減り、国民の所得が伸び悩む中、維持費のかかるクルマを必要としない生活スタイルへ移行してしまうのも無理はないな...と感じている。
もちろん、スポーツカーを沢山展示すれば若者もクルマに興味を示すなんて単純な話ではない。価値観が多様化している時代であり、クルマがステータスシンボルだった時代なんて随分昔に終わっている。だからこそ、柔軟な発想が求められる。若者を含め、クルマを諦めた人達に「クルマを買ってみようか」と思わせる新しい買い方や「クルマに乗って遠くへ出かけたくなる」新たな利用シーンの創出を含めた提案が必要だと感じている。
箱型で中が広々したクルマ。燃費が良いクルマ。エンジンに頼らずモーターだけで走れるクルマ...。どれも今では珍しくもなく、わさわざモーターショーへ行く程の事ではない。新型「プリウス」だって数か月後には街中でウジャウジャ走ってるんだろうし。とても難しい問題だが、避けては通れない問題。クルマを世界中で沢山生産し販売するこの国の人間がクルマに冷めている。そんな人間が作ったクルマを消費者は買いたいと思うだろうか。「自動運転」も大事なテーマだが、単純に「クルマに乗りたい」と思わせる努力を各メーカーにはもっと真剣に考えて頂きたい。
さて、退屈な話はこの位にして。古くからのクルマ好きとして、やはりロータリーエンジン復活に向けたマツダの熱いメッセージである「RX-VISION」の出展は明るいニュースだった。しかも、海外ショーではなく「東京」を選んだことに称賛を贈りたい。(前回の東京モーターショーでマツダは完全に手抜をしたが。)私の目には「ユーノス・コスモ」を復活させた様にも見えた。ストイックな「RX-7」とは違う、大柄なラグジュアリークーペで価格も1000万円級を狙うのではないか。ロータリーエンジンは構造上、燃費に課題を抱えるが、プレミアムクーペとしてなら受け入れられる余地もあろう。燃費なんて気にしない層に売る作戦も悪くはない。願わくば、一部のマニアックな庶民にもロータリーエンジンを味えるモデルを検討して欲しいものだが...。
マツダブースは「RX-VISION」の一本槍で、その他は目新しい展示はなかった。個人的には、先日生産中止になった「ベリーサ」の後継となるチョイとお洒落で荷物もソコソコ積める上級コンパクトカーを期待しているが、今のマツダは出さないだろうな。それが「CX-3」だという話もあるが。
トヨタは「S-FR」の早期市販化を期待したいが、このクルマはかつて有った「サイノス」位の位置づけだろうか。「ハチロク」では高価で大き過ぎると感じる層は私も含め確かに存在するだろうが、大ヒットを飛ばすほどの金脈でも無いだろうから、このクルマこそエントリーユーザーを育て、市場を作っていく行く必要があるだろうね。トヨタにその覚悟があるか期待している。とりあえず、200万円以下で発売されれば、市販化を望んだ責任として確実に一票投じるつもりである。
それにしても、今回のトヨタブースは酷い出来栄えだった。「S-FR」と「新型プリウス」・「C-HR Concept」が並んでメインステージに置かれ、「S-FR」が伝えたいメッセージが何も感じられなかった。市販車も恐ろしく偏った展示内容で、下品な「G's」シリーズが並べらていたのには閉口。本来ならばMC後の「クラウン」やクリーンディーゼルの「ランドクルーザー・プラド」なんかは当然並んでいるべきだったと思うが。
今回のモーターショーで個人的に一番興味があったのは「アルト・ワークス」。今年初めに登場した「アルト・ターボRS」では5速AGSのみと言う半端な仕様にモヤモヤしたが、「アルト・ワークス」を見てスッキリした。レカロシートも決まっているし、ショートストロークの5MTもカチカチと決まって楽しそうだ。4WDも設定されるとか。スズキの事だから、価格面でも期待を裏切らないだろう。日本の路上で最も楽しいクルマの誕生か? ならば「S660」の後継として「アルト・ワークス」を...と妄想中。
今回の東京モーターショーで一番展示内容が充実していたのは「スズキ」。コンセプトカー、市販予定車、マイナーチェンジモデルなど多種多様に展示されていて良かった。
ダイハツ「NORIORI」。高齢化社会に向けた次世代コミューターの提案。積極的に運転したいとは思わないが、間もなく直面する超高齢化社会にとっては必要なクルマだろう。こういうクルマこそ、自動運転にすべき。結局人間が運転して高速道路を逆走してしまっては意味がないからね。
今回のホンダブースはイマイチだった。「NSX」は既に新鮮味を失っているし、「シビックTypeR」も428万円と随分高価な値付け。価格相応に速い車なんだろうが、リヤサスがトーションビームで着座位置が高くなってしまうセンタータンクレイアウトを採用しているのは大いに興醒め。
マイナーチェンジ後の「CR-Z」は全く話題にもならず、雑誌等でインプレッションを読んだ記憶もない。それでもホンダは「CR-Z」の進化を諦めていないようで一安心。6MTとハイブリッドシステム(HONDA IMA)の組み合わせが楽しめるのは「CR-Z」の美点。事実上は2シーターだが、荷室(後席を倒した状態)は案外広かったりするのも魅力。
スバルブースも退屈な展示内容だった。来年末発売予定と噂される「インプレッサ・コンセプト」も特に興味を惹くものではなかった。スバルはそろそろCVTを止めるべきだと思うが、今のところその兆候はない。北米重視も結構だが、ラインナップ的に「インプレッサ」より小型のモデルが必要だと思う。日産と三菱のブースは素通りしたので写真無し。
Posted at 2015/11/19 07:57:04 | |
トラックバック(0) |
クルマ | クルマ