病床の祖母と、僕の心の中の祖父。

痴ほう症がひどく、施設に預かって頂いています祖母が持ち直しました。
一安心ですが、ここ一年続く「毎度の事」です。

父から本宅を継いだ時から始まった祖母との暮らしでしたが、痴ほう症がひどくなってからは、本当に大変でしたし、嫁さんには苦労をかけました。

ある早朝の事、庭先の僕の軽トラのなかでクラクションを鳴らし助けを呼ぶ祖母。
ご近所さんを捲き込んで、それは大騒ぎになりました。

さすがに限界と感じ、父と決断。
施設に預かって頂く事にしました。

そうなる前の祖母は近所の掛かり付けのお医者さんにも、徒歩で出かけますし朝食にカレーライスを食べる程の食欲の持ち主。

90歳に手が届きそうな高齢者が朝食にカレーライス？
実は掛かり付けのお医者さんの処方薬は消化剤(自力では食べた物を消化出来ていないので！)でした。

この事に異論はありません。
ですが、祖父の最後と比べると思うことがあるのです。


僕の祖父。
祖父は近所の「名物」でした。

地域の行事や「しきたり」などで分からない事も祖父ならすべて知っていましたし、区長や土地改良区の役員などもさせて頂いていました。

そんな祖父でしたが80歳を過ぎた頃、体の不調を訴え入院。
すい臓ガンでした。

余命半年、それを伝えたのは僕ですが…数日後『自分の家で死にたい、お前ら看取ってくれ。』と答えがありました。

父を筆頭に家族で祖父の最後を自宅で看取りました。
掛かり付けのお医者さまには、最後まで本当にお世話になりました。

実際には一年でしたが、余命半年と宣告されていましたので祖父は兄弟や友人など、会いたい人に会った上で最後を迎えました。

僕には、最後、本当に最後です。
黄疸で全身黄色くなっていましたが、眼だけは強く大きく感じた祖父のまま。
庭の側の籐の椅子に座り、話をしてくれました。

『戦争にも行ったし色々あったけれど、いい人生やったよ。』

これが、祖父の僕に残してくれた最後の言葉です。


それから一週間、昏睡状態が続き…祖父はこの世を去りました。



いつかは、僕も死ななくてはなりません。

出来るだけ健康を維持し、最後は祖父のような尊厳ある最後を迎えたいと思います。