10月7日-8日、過去最小の観客動員数を記録してしまったF1日本グランプリが鈴鹿サーキットで開催されてた中、スーパーGT唯一の海外ラウンド、第7戦 タイが開催されました。
2014年の初開催から数えて今年で4回目の開催になりますが、毎年たくさんのGTファンが、バンコクからバスで6時間もかかる田舎街ブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットに集まってくれます。
さらに、4年間継続して国際格式のスーパーGTを開催し続けたことで、タイの中でモータースポーツが根付き、レース人口も増えたみたいですし、スーパーGTを継続して開催した実績を認められ、来年は2輪の世界グランプリであるMotoGPを開催することが決まりました。
今年からGT300クラスにシリーズ参戦しているタイ人オンリーのチーム、PANTHER TEAM THAILAND(パンサー・チーム・タイランド)も、No.35 ARTO 86 MC 101を駆り、ポイント獲得を目指して頑張っています。
GT300クラスで2度チャンピオンに輝いた名門チームのグッドスマイルレーシングでさえ、2008年の初参戦からしばらくは予選落ちばかりでしたし、わざわざ嘆願書を提出して決勝レースに出させてもらってた時期もありました。
No.35 ARTO 86 MC 101は今年まだポイント獲得出来てませんが、様々なトラブルにぶつかったり、作戦面で失敗したりしながら経験を重ね、タイのモータースポーツを引っ張るようなトップチームになることを祈っています。
1946年から70年間、国王としてタイ王国を治め、経済的にも社会的にもタイを大きく成長させたプミポン国王が崩御されたのが、昨年のスーパーGT 第7戦 タイラウンド直後の10月13日。
タイの国民はプミポン国王の死を悼み、国王の死から1年間は華美なイベントやテレビなどは慎み、タイの街全体で喪に服していました。
そんな大変な時に、開催させてもらえることになったスーパーGT。
過去3度のタイラウンドでは晴れが続いてましたけど、今年のチャン・インターナショナル・サーキットは、まとまった雨が降ったりやんだりを繰り返す、熱帯モンスーン気候特有のお天気となりました。
まるで、天高くに登ったプミポン国王が降らせた慈悲の雨のようでした。
そんなレインコンディションの予選。
事前のテストもろくに出来ず、ぶっつけ本番となってしまった雨の予選は、タイヤメーカーそれぞれの特性がハマったマシンと外したマシンがはっきり分かれた、ギャンブル性の高い内容の結果となりました。
昨年のスーパーフォーミュラのドライバーランキングでシリーズチャンピオンを獲得した27歳の国本雄資選手も、日本一速い男(アッチじゃないよw)の称号を引っ提げて望んだ2017年のGT500クラスの闘いで、No.19 WedsSport ADVAN LC500という勝てる道具を手にしながらも、第6戦終了時点でトップから36ポイント差もつけられる不甲斐ないシーズンでした。
しかし、この第7戦タイと11月に開催される最終戦もてぎで、予選ポールポジションからのポール・トゥ・ウィンを決めれば合計42ポイント荒稼ぎ出来るので、シリーズチャンピオンは全くあきらめてません。
昨年勝利したゲンのいいこのチャン・インターナショナル・サーキットにヨコハマタイヤを履いてコースインし、予選ポールポジションを狙って爆走したNo.19 WedsSport ADVAN LC500ですが、雨上がりのウェット路面にヨコハマタイヤがマッチせず、予選最下位という厳しい結果に・・・
昨年日本一速い男に輝き、TOYOTA GAZOO RacingからTS050 HYBRID 9号車にも指名された国本雄資選手ですが、スーパーフォーミュラもスーパーGTも、そしてル・マンも不完全燃焼に終わりました。
世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間レースは、レーシングドライバーなら誰でも憧れる頂点の夢です。
その夢のポジションを今年掴んだ国本雄資選手。
お呼びがかからなかった他のTOYOTA GAZOO Racingドライバー達は、国本選手の実力を認めて応援に回っていましたが、国本選手がル・マンでトヨタのTS050 HYBRIDに乗ることを認めてなかった(…と思う)レーシングドライバーがいました。
No.37 KeePer TOM'S LC500のAドライバー、平川 亮選手(23)です。
2013年からスーパーフォーミュラのドライバーとして活躍し、2015年から本格的にスーパーGTでTOM'Sの37号車のドライバーとして闘ってきた平川選手。
TOYOTA GAZOO Racingも平川選手を世界に通用するレーシングドライバーになって欲しいという理由から、2016年からスーパーフォーミュラの年間エントリーを諦めてもらい、海外修行としてヨーロピアン・ル・マン・シリーズのLMP2クラスに送り出しました。
平川選手としても、夢のル・マンドライバーに続く階段に乗せてもらったことで、中嶋一貴選手・小林可夢偉選手に続いてTOYOTA GAZOO Racing3人目のル・マンドライバーは俺だ!…と思ったに違いありません。
……それなのに!
TOYOTA GAZOO Racingが必勝体制で臨んだ今年のル・マン挑戦で、日本人3人目のル・マンドライバーとして声がかかったのが国本雄資選手でした。
平川選手としては、「話か違うじゃねぇかー!」……って当たり散らしたくなったことでしょう。
さらに、TS050 HYBRIDを3台に増やし、必勝体制で臨んだ今年のル・マンは見事にスッ転び、その後ライバル達が相次いでLMP1クラスから撤収したことで、TOYOTA GAZOO Racingはリベンジする機会を失ってしまいました。
現時点でも、TOYOTA GAZOO Racingが2018年以降WEC世界耐久選手権に参戦するかどうか、はっきり明言してません。
TOYOTA GAZOO RacingのトップガンとしてTS050 HYBRIDに乗り、ル・マンで栄光を勝ち取りたかった平川選手としては、この先自分自身のレーシングドライバー人生をどうマネージメントしていけばいいか、悩んでいたのではないでしょうか。
レーシングドライバーとしてはまだ若手の年代に入る平川 亮選手。
若さを全面に出してアグレッシブさを売りにがむしゃらにレースを重ねてもいいですが、毎年毎年確実に何か結果を残し自分のレース戦績をキラキラ輝かせておかないと、あっという間に中堅ドライバーと言われレース人生も折り返しに入ってしまいます。
とまぁ、自分一人の力でどうにもならないことをクヨクヨ言っても仕方ないですが、そんな平川選手が今できる最高の仕事として狙いを定めたのが、GT500クラスのシリーズチャンピオンです!
冠に全日本選手権はつかないものの、トヨタと日産とホンダがルールにのっとってマシンを研ぎ澄ませ、たくさんのGTファンの前で真剣勝負を繰り広げるスーパーGTのGT500クラス。
今年はGT-RやNSX-GTよりアドバンテージがあるレクサスLC500という強力なツールを手に入れたので、GT-RやNSX-GTを倒すことはTOYOTA GAZOO Racingドライバーとして当然のミッションですが、
平川選手としては同じツールでGT500クラスを闘ってる6台のLC500・12人のTOYOTA GAZOO Racingドライバーの中でテッペンに立つこと…!
この事が今の自分の実力を証明する最も早い手段だと考えているはずです。
タイラウンドの予選、予選上位8台によるポールポジションをかけたGT500予選Q2でのヒトコマ。
No.37 KeePer TOM'S LC500に乗っかり予選ポールポジションを狙う平川 亮選手は、一発のタイムアタックに備えてタイヤを温めていましたが、同じく慎重にタイヤを温めていたNo.1 DENSO KOBELCO SARD LC500の平手 晃平選手に引っ掛かってしまい、ルーティンが乱れてしまいました。
パッシングしながら進路を開けてもらおうとNo.37 KeePer平川 亮選手はアオっていましたが、2016年シリーズチャンピオンのNo.1 DENSO 平手 晃平選手も予選アタックに向けて集中していたので進路は簡単に譲りません。
一旦減速してNo.1 DENSO 平手 晃平選手と車間距離をとり、もう一度タイヤを温めなおしたNo.37 KeePer 平川 亮選手は予選終了時の最後の一周に勝負をかけ、渾身の予選アタックを見せつけます!
No.1 DENSO 平手 晃平選手にペースを乱されながらもテンションをキープし、タイヤのピークを最後の一周にキッチリ持ってきて一発で決めた最高の予選アタックで、見事ポールポジションを獲得!!
平川 亮選手はこのドヤ顔www
予選終了直後にマイクを向けられたインタビューでは、まだ体がクールダウンできず昂っていたのか、「……バックマーカーに引っ掛かってしまい、なかなかタイムが出せませんでしたが・・・」と、思わず本音がボロリ(爆)
8歳年上の先輩の平手 晃平選手(31)に対して、バックマーカー(周回遅れ)だなんて・・(^-^;
予選中なので周回遅れも何もありませんが、よっぽど平手 晃平選手のNo.1 DENSOのことがジャマだったんでしょうね~
「バックマーカー」って言葉がタイからの生中継で日本中にしっかり放送されてましたよ(^o^;)
後のプレスリリースでは、「前車に引っ掛かって……」と書き直されてましたが、同じチーム・レクサスの先輩ドライバーに対して全く遠慮しない姿勢がとても印象的でした。
そしてこの予選の結果を受け、チーム・レクサスはシリーズチャンピオン獲得に向けて、チャンピオン獲得の可能性が低いNo.19 WedsSport ADVAN LC500とNo.1 DENSO KOBELCO SARD LC500を“排除”します。
No.19 WedsSportとNo.1 DENSOにはシリーズチャンピオンを諦めてもらい、予選で下位に沈んでしまったランキングトップのNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rに対するブロック役に回ってもらうことになりました。
一夜明けて10月8日(日曜日)
前日に続き、再びまとまった量の雨が降った後、路面に水が残ったまま決勝レースのスタートが着々と進行し、各チームはスターティンググリッド上でギリギリまでレースの戦略に悩んでました。
戦略①
レイン→スリック→スリックで安全に刻む
戦略②
レイン→→スリックと路面が乾いてもレインタイヤで引っ張って、ピット回数を減らす
戦略③
レインタイヤのパフォーマンスに自身がないので、スリック→→スリックと一発勝負に出る
結局、GT500クラスの大半のチームは戦略①で確実に刻み、No.8 ARTA NSX-GTとNo.64 Epson Modulo NSX-GTは戦略②を使いました。
そして、雨の中スリックタイヤで走る奇襲とも言える戦略③を選んだのが、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rでした。
理由は簡単、雨から晴れへと移り変わるビミョーな路面コンディションに対し、No.23 MOTULが履くミシュランのレインタイヤがブリヂストンのレインタイヤに勝てないことが分かっているからです。
対するチーム・レクサスも、シリーズチャンピオン最大のライバルNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rがレインタイヤを使わない奇襲作戦に来ることは十分読んでました。
なので、No.19 WedsSportとNo.1 DENSOにはシリーズチャンピオンを諦めてもらい、スターティンググリッドで時間ギリギリまでNo.23 MOTULの選ぶタイヤをチラチラ確認し、No.23 MOTULと同じタイヤを選んでブロックさせる作戦に出たわけです。
(あくまでワタシの個人的な予想です。)
セーフティーカー先導で3周ほどパレードした後に始まった66周の決勝レースは、ウェット路面からドライ路面に変わる難しいコンディションの中、どのドライバーも一流のドライビングテクニックで大きなクラッシュを起こすことなく走りきり、お空からレースの行方を心配そうに見守ってるプミポン国王を安心させました。
さすが世界一のハコレース、スーパーGTですわ。
決断レースは結局、王道の戦略①を選んだNo.37 KeePer TOM'S LC500が、ポールポジションから逃げ切って見事今シーズン2勝目を飾りました!
1994年生まれ同士の平川 亮選手とニック・キャシディ選手がレッドブルカラーのマシンを駆って、レッドブル発祥の地で表彰台の頂点に立った瞬間です!!
お天気もすっかり回復し、まるでプミポン国王が空から表彰台の選手達に祝福しているようでした。
……そして、2017年のスーパーGTも最終戦ツインリンクもてぎを残すだけとなりました。
No.37 KeePer TOM'S LC500の平川 亮選手とニック・キャシディ選手は、獲得ポイントが69点で現時点でランキングトップです。
2017年のGT500クラスのシリーズチャンピオンになり、ル・マンドライバーに選ばれなかった鬱憤を晴らすまであと少しですね!
二番手にはWAKO'S 4CR LC500。
大嶋 和也選手/アンドレア・カルダレッリ選手がつけています。
今シーズンは2位が3回・3位が1回と、堅実なレースを繰り広げてますが、まだ寿一監督になってから優勝がないんですよね~
優勝回数ゼロ回なので同点の場合には不利になってしまうから、ツインリンクもてぎでは優勝してダブルで喜びたいですよね~!
三番手にはNo.23 MOTUL AUTECH GT-R。
松田 次生選手/ロニー・クインタレッリ選手が、雨のタイラウンドをスリックタイヤオンリーで走り抜け、ピット作業ではタイヤ無交換作戦を決行し、ギリギリポイント圏内に食い込んできました。
ここまで未勝利ながら、レクサスLC500勢相手によく闘ってきたと思います。
得意のツインリンクもてぎで優勝して、No.37 KeePerが3位以下ならシリーズチャンピオン決定ですが、その時に2位に入ってくれる他のGT-R勢がいないと、チーム・レクサスのチームプレーで負けてしまう可能性もあります。
四番手はNo.36 au TOM'S LC500。
Aドライバーの中嶋 一貴選手はル・マンのスケジュールを優先したためチャンピオンになる権利が無く、Bドライバーのジェームス・ロシター選手にシリーズチャンピオンのチャンスがあります。
ただ、トップと16点差ですし、No.37 KeePerと同じTOM'Sチームなので、No.37 KeePerに何かアクシデントが起きない限り、チャンピオンのチャンスは巡ってこないでしょうね。
トップと18点差ながらシリーズチャンピオンの可能性がギリギリ残っている、No.38 ZENT CERUMO LC500。
実力・経験ともナンバー1のコンビと言われた立川 祐路選手/石浦 宏明選手も、今年はゴールデンウィークの富士で優勝した頃がピークだったのかな~・・・、
……なんて言われないよう、最終戦もてぎでは優勝を飾って気持ちよくシーズンを終えて欲しいです。
たとえ優勝しても上位4台がクシャクシャに壊れてリタイアでもしない限り、シリーズチャンピオンの目はないですしね(笑)
チーム・レクサスとチーム・日産による今シーズン最後の直接対決!
そこに封印が解けたホンダ・NSX-GT達ががどれだけレースをかき回すか、
11月11日-12日の最終戦 ツインリンクもてぎがとても楽しみです!