ジースプロジェクトにはメルセデス専用マフラー”シュレンザー”がありましたが、そろそろリニューアルの時期を感じていた事と、ワンオフマフラーをご依頼に来るお客様が外車オーナーの方が多く、国産のようにマフラーの種類が無くて「こんなマフラーを作って欲しい」とご依頼を受けているうちに、私自身が作りたい!と強く感じるようになりました。
あれも作りたい、これも作りたいと思っているうちに、遂に寝る時間まで考えるようになりました。
それ程作りたいと思う製品が多くて(後で紹介して行きます)湧き出る考えを抑え切れません!それからはもう既に車を見つけるためにあっちこっち探し回っておりました。
めでたく車を購入し、早速開発に入ります。湧き出たアイディアを形にしていきます。
メルセデスもそうなのですが外車のアフターマフラーは、純正を切断してはめ込み式のリアピースを装着するタイプがほとんどなのですが、(当社マフラーでもSLのみはこの構造です。ジョント部分が1箇所も無いためです。ご了承下さい。)これは何故なんでしょうか?最悪なのではないでしょうか?
切断しては純正に戻せなくなりますし、普通のカー用品店では装着してくれません。間違って切断してはパイプの長さが足りなくなりますし、はめ込みではタイコを縁石などにぶつけた時に外れてしまい、そのまま動いては大変危険です!!
またマフラーは温度の熱い中間ピースを換えない事にはパワーアップはほとんどしませんし、車種によっては音の変化もありません。
純正はパイプと車体とのクリアランスを稼ぐために平気で中間部分などは潰してしまいます。ここをスムーズにするために我々アフターメーカーの出番が有るのですから・・・
それならばいつもの通りです。私が作ってしまおう、です!
まずはノーマルマフラーから。
これは難しい!!片側はフロントパイプ後部からリアエンドまで一体式です。一人では取り外すことも出来ず・・・凄く重いです。
しかも中間タイコの前の部分が悲惨なくらい潰してあります。
パイプの径が半分以下になっており、私が今まで見てきたマフラーでもここまで潰してあるマフラーは有りませんでした。本当に5,500ccの排気がスムーズにぬけるのでしょうか?
そんな訳がありません。この車はマフラー交換だけで軽く20PS以上パワーアップしそうです。
また純正との結合部は左右で形状が違い、特殊な結合です。
これではボルトオンのマフラーを作るのは難しそうです。だからこそ今までその様なマフラーが無かったのでしょうね。
更に言いますと、メルセデスのマフラーは車種と排気量によりこの部分がほとんど違っており、互換性がありません。
マイナー前後で分かれている車種もあり、全部専用設計しないといけません。いったいメルセデスのパイプ結合部分の金型がいくつあるのやら!!
全部クリアーしてボルトオン、フルパワー、そして良い音の出るマフラーを製作することが出来ます。
大変ですが私は自分が納得出来ない商品は売るつもりはありませんので、きちんと製作していきます。
まずはノーマルバンパー用で加工の要らないボルトオンマフラーから。
パイプの潰れも一切無く、きれいに排気が通ります。
なお今回の車両はオーバルテールを装着しておりますが、シュレンザーはテールを4種類用意してお客様に選んでいただく販売方法を取っております。やはり一番見える部分ですので好みが有りますよね。
どうぞお好みのテールエンドを選んでください。
この状態で近接騒音値は88.5dB、音はまるでアメ車の様に荒々しくなり、迫力のV8サウンドを奏でます。このエンジンからメルセデスのエンジンの音が今までとは違う音になりました。何とパワーの出ている音でしょう!!
ここでマフラー装着に関して純正マフラーバンドの取り外しを記載しておきます。
元々U字バンドにて交換を行っていたのですが、微妙に排気漏れを起こすケースがまれにあり、またU字バンドでは何年も乗るとパイプが変形してしまい次回交換時に都合が悪いです。この部分純正のバンドには敵いませんので純正を流用することにします。
写真のように1点のみ溶接されていますので、サンダーなどで削って取り外してください。何も難しくないと思います。
後は当社マフラー装着時に純正バンドを使用し取り付けてください。
続いてAMGエアロ用のマフラーを製作します。共に専用設計で製作しますので、どちらのエアロを装着していてもマフラーがございます。安心してお求め下さい。
なお、テールエンドは開口部分が大きいのでそれにマッチするビッグオーバルテール2種類を用意しました。お好みでお選び下さい。
ここからはタイコ内部の技術的な説明をしたいと思います。
アクセルを踏み込んだ瞬間の加速、気持ちいい回転の伸び、パワー感。そして適度に室内に入り込む排気音はそのエンジンにマッチした排気構造にしなければ実現できません。
そこを詳しく説明したいと思います。なお国産車と重複する部分が多数ございますが、1点の排圧を導くために構造は同じになります。ご了承下さい。
5.5Lをメインに説明していきますので宜しくお願いします。
マフラーはリアピースの交換だけでは脈動感溢れる音質は出ず、性能もそこそこです。やはりフロントパイプの形状、パイプ径、中間部の巨大なタイコ部、パイプ径、消音機の構造にかなりの問題があり、排気効率を悪くしています。
この辺全て煮詰めていきます!
ただのストレート構造では重低音で低中速のトルクが無くなってしまいますし、純正の様に隔壁を多く使っては性能も音も死んでしまいます。
(しかし市販のほとんどのマフラーはこのどちらかのタイプです)
そこで排圧を稼ぐための2重管オリフィス構造にし、更に2重管オリフィスによって排圧が跳ね返って戻ってきた場所にある中間タイコの内部構造には気を使いました。
(ここで排気が膨張し、消音されると同時にフロントまで排圧が戻って行きます。 中間タイコはその体積を計算し、内部パンチングパイプ径はその掛かる排圧を計算し、決定します。したがって全ての排気量で内部構造は異なります。そうでないと性能は出るはずがありませんから。)リアタイコのオリフィスの口径は左右出しマフラーですので片側2,700ccの排気が通る径を計算し(温度によって体積は2乗に変化しますのでタイコ内部の温度を間違えると全然性能が出ません)溜める排圧を稼ぎ出すためオリフィスの長さを決定します。
この辺の詳しいことは企業秘密です。その後マフラーを装着して試乗します!
何て迫力のある音なのでしょう!!さすがV8エンジンです。国産エンジンとは全然違う迫力の音質です。
威嚇するようなこの音質、新しいメルセデスのエンジンは従来のOHCエンジンよりもかなりパワーアップしているのでしょう。あの中間パイプの潰れが無くなったため尚更パワーアップが感じられます。トルクもモリモリで坂道も少しアクセルを踏み込むだけで楽々登っていきます。
しかしやはり思い通りの音量と走りにならないのでもう一度オリフィスの口径、長さを変更し、タイコサイズを小さくしてもっと高速域を伸ばして、音も出るようにしました。サーキットを全開で走るわけではないので私はアクセルレスポンス、低速、中速のトルク感、盛り上がり方を一番優先して、最後に高回転でしっかり伸びるかを確認します。
パイプ径はノーマルより一回り太い60.5φを全てに使い、途中で排気抵抗にならない様に左右のパイプを繋ぐバイパスパイプをつけました。これで左右の排圧は均等になりエンジンのバランスもよくなります。
さて、ここまでは人と同じマフラーでしたが、ここからは違う独自のマフラーを開発したいと思います。同じバンパー、同じエアロ、同じリアビューではつまらないですよね!!
独自に専用リアアンダースポイラー、それに合ったマフラーを製作し一番カッコ良いリアビューを作っていきます。したがってこのマフラーを装着するに当たっては純正バンパーの加工が必要になります。
ノーマルはバンパーが分厚いのでその下からテールを出すとバランスが悪いですし、タイコ自体の装着位置が低くなり車高を落とした時にマフラーを擦らないか心配です。そうとはいえAMGの様にフルバンパー交換では金額が高くなりますので、性能面、金額面でも納得のいく物を作りたいです。
そんな思いで完成しました。
ここでバンパー加工の加工幅、サイズを載せておきます。
写真を参考に切り始めはノーマルバンパー装着ステーの爪が出ている部分から30mmの所から切り始めて行き、テールがオーバルですのでアールを描き上に切り込んで行きます。上方向には約45mm切込みが必要です。この部分は裏側から見ますと爪が出ており、表側はバンパーラインが有りますので非常に分かりやすいと思います。爪及びバンパーラインより6mm程下の位置で加工を進めて行きます。加工幅は底部で300mm、上部で190mm程必要です。写真を載せておきますので参考にしてください。アンダースポイラーが上から被りますのであまり神経質にならなくても大丈夫だと思います。ごく一般的は加工で済みますので、難しい部分は無いと思います
アイドリングから違う排気音。アクセルレスポンス、トルクの盛り上がり、高速の伸び、最高の音と走りに満足し心いくまで当社製品をお使いください。宜しくお願いいたします。
この状態で近接排気騒音は93dBまでアップしました。
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最後にフロントパイプを製作します。
これはどのメーカーも発売しておらず、当社が初となります。(外れていたら失礼!!)見た感じは触媒が前後に一つずつ2個装着されており、左右で4個装着されているように見えますが、実は後部はサイレンサーで触媒ではありません。
触媒はフロント部分のみで、センサーの関係上一つの中で前後2つに分かれております。きっと緻密な空燃比制御をしているのでしょう。パイプ径は触媒に入るまで50φしかありません。この部分一番高温高圧なのにいただけません。排気効率ではなく、脱着の整備性を考えてパイプ径を細くしている様です。また、純正触媒を見て驚きです!
何て目が細かいのでしょう!
これではスムーズに排気が流れる訳がありません。これまた凄いパワーアツプしそうな予感です。
私自身色々と頭を悩ませセンサーの誤作動を無くすためと、排気浄化の為に触媒セルを200セルに、触媒数を前後2個使用する事にし、左右で本当に4個使用します。
これなら純正の排気効率より格段に良くて、純正並みの排気浄化が出来そうです。近く排気ガス検査を行ってまいりますので、このまま平成17年度排ガス基準の認定を受けられそうです。
価格はスポーツ触媒を4個も使用したため338,000円となりますが、非常にリーズナブルに設定した自信作です。純正は400,000円ですのでリビルド品としての使用でも純正品よりもお値打ちで魅力的だと思います。
フロントパイプまで装着で近接排気騒音は93dBになりました。
そしていよいよ試乗です。
明らかに違う排気音質!やはり相当のパワーアップが感じられます。
これは楽しい!!
あの巨体がスイスイと走っていきます。
フロントパイプ後部結合部も純正と完璧にマッチングさせ、本当のボルトオンを実現させました。(また金型が増えました!!)
トルクの谷もどこにも無く特に中速域でのダッシュが違います。高速域も同様です!!こんなに楽しい走りが体験できるのですから皆様にも是非体験していただきたいと思います。
ここでセンサーの取り付けに関して記載しておきます。私自身最初は間違えてエンジンチェックランプを点灯させてしまったくらいですので良くご確認下さい。
右バンクは間違いようが無いのですが、左バンクのセンサーは長さ、位置関係上前後逆に取り付けやすいです。
前側はセンサー頭のキャップが灰色で中の配線は赤と黄色があります。
後部センサーはキャップが黒で中の配線は黒と灰色があります。
前後間違えると必ずエンジンランプが点灯しますのでお間違えの無いように取り付けてください。
(なお、チェックランプが点灯しても空燃比制御にはあまり影響が無く、エンジンブローなどは起こしませんのでご安心下さい。)
ここまでやってから自分のS550はリミッターカット、コンピューターセッティングを行い色々調べました。後日パワーチェックも行いたいです。
この車のエンジンの空燃比は街乗り時ほぼ14.7対1という理論空燃比で燃焼しており、一昔前ならあり得ない比率でした。これでエンジンが壊れないのですから今の技術は進歩していますね。普通は燃焼温度が高すぎてノッキングを起こす程の比率です。これを可能にしたからこそ5.5Lもありながら高速で燃費が10Km/Lも行くのでしょうね。
この空燃比でしたら触媒が無くても民間車検なら通りそうなくらいクリーンは排気ガスです。
このエンジンは触媒レス、完全ストレート構造のマフラーでは排気温度が高くなり危険に思います。センサーの制御をきちんとして、適度に排圧を持ったマフラーがベストだと思います。勿論コンピューターセッティングをしっかりして空燃比をコントロールすれば問題ありません。
マフラー交換で気持ちよく走れる理想のマフラーが製作出来た気がします。