やや無沙汰となっていましたが、ようやく文章化出来るだけの内容が出揃いましたので、久々に更新行ってみましょう。
またしてもミニカの故障の話なのですが、今回はH20系ミニカ/トッポの特定グレードでは確実に起きると言っても過言ではなく、回避も困難なタチの悪いトラブルです。
そして恐らく、現存している車体の大半は該当グレードだと思いますが…その故障内容とは
パワステギアボックス内に挿入された、ラックギアの助手席側端部を支える樹脂ブッシュの破損。
そしてこのブッシュが最終的に脱落する事で、支えを失ったラックギアが上下前後に遊んでしまう症状です。
同様の故障はワゴンRなどでも良くあるようで、スズキではステアリングギアボックス周りは細かく単品部品供給があるので修理可能ですが、ミニカのパワステの場合はギアボックス全体が非分解扱いの為部品供給は無く、基本的には修理しての再使用は出来ません。
リビルド業者もお手上げで、当然ながら新品アッセンブリーなどある筈も無く…
ついでに、今積んでいるギアボックス自体、2010年のほぼ同じ時期に同じ故障が発覚して、修理不能という同じ流れの中で交換された中古品である為、全く同じ状況の2度目がやって来たという訳です。
その構造上、程度の良い中古をあてがった所でいずれ再発すると分かってはいましたが、いよいよ恐れていた事が起きてしまったのです。
…今回の一連の流れとしては、2016年の早い時期から走行中にゴトゴトと異音がし始め、何度かサス周りを分解しても原因が分からずいる内に、次第に砂利道で激しい異音が出るようになり、最終的には据え切りでガリガリ鳴り出したり直進も困難になり始めた事で、初めてタイヤを揺すってガタを確認し、ようやくギアボックスが原因である事に気づいたのが2016年の10月頃。
前回の故障時にはここまで酷い自覚症状が出る前に定期点検で発覚していたので、今回のような末期症状と言える状態は知りませんでしたし、路面入力に連動して鳴っている初期段階の音だけではダウンサスの異音にも似ている上、意外な程に音の出所にも区別が付きづらく、ずっと左ストラットからの異音だと思っていた為に発見が遅れました。
そして、2000年代ももうすぐ18年目かという時分にもなれば中古品にはいよいよ5~6万円というプレミア価格が付いてしまい、挙句の果てに、取り寄せてみればそのプレミア品も同じく壊れている始末。
…もう、今となってはその額を払ってでも修理ベースなりドナーなりにしていく覚悟も持たなきゃいけない年式になってしまったという事なのでしょうが、今回はどうしても同じ故障品に金を払うのが納得行かなかったので、拒否する贅沢を言わせてもらいました。
また一方で、H20系純正品ではなく、タイロッドエンド間の寸法が非常に似通っているH30系ミニカSR-Zのパワステ無しギアボックスを間に合わせとして流用出来ないかとも試しましたが…
車体側ステアリングシャフトとギアボックス側のインプットシャフトの角度、マウントの位置関係が微妙に違い流用は不可。
しかし、パワステ無しは内部に余計なギアが介在していないだけあって動きは軽く、ラックギアを支える構造もH20系のパワステのそれとは違い、ガタも全然ありません。
そしてこの基本構造はH20系パワステ無し車の物も同じと思われるので、H20系同士でもパワステの無いバンやダンガンZZ系の一部車種はこの故障とは無縁かも知れません。
…まあ、そのギアボックスが今後中古市場に出てくる可能性は極めて低いでしょうが。
と、そうこうしている内に、60年振りだとか言われた11月の関東の積雪に見舞われてしまい、一気に冬タイヤ交換需要が増えてしまった結果、預けていた整備工場からも「直す目処の立たない車を預かっておける場所が無い。」と言われてしまったので…
…腹くくって、自分で現物修理するしかねぇ…
と相なってしまった訳です。
全くもって、サラトガの尻なんて追っかけてる場合じゃなかったんですね。
そこで、まずは元整備士の友人に手伝ってもらい、自宅でギアボックスを下ろし…
分解にインパクトや特殊工具が必要だった為、整備工場に持ち込んで分解してもらいます。
ギアケース中央下部にある穴には、ラックギアをピニオンギアに押し付ける為のラックガイドが入るのですが、本来左側の延長パイプ内で共にラックギアを支えていたブッシュが無くなってしまった為に、ラックギアがラックガイドのみを支点としたシーソー状態になっていたんですね。
これでは路面入力に煽られてラックがぶれてしまって、まっすぐ走る訳が無いです。
しかもその手応えはステアリングには伝わって来ないので、いわゆる「ハンドルを取られる」事無くフロントタイヤだけが勝手に右往左往するという、とんでもない状態です。
一方、その暴れるラックギアのせいでかなり激しい異音も出ていた割には、ラックにもピニオンにも致命的な傷や歯面の欠けは無く、十分再利用出来る状態だった事は不幸中の幸いでした。
ちなみに、かつてブッシュだった物の残骸。
冗談抜きに「どうしてこうなった」と言いたいぐらいに原形を留めていないので、元がどんな形状だったのかを窺い知る事は出来ません。
ただ、残骸の中には接着剤で止められていたかのようにへばりついた物もあったので、元の固定方法は恐らく接着なんでしょう。
…そして、ここに新たなブッシュを挿入する訳ですが、ストッパー的な物が一切無い事が部品製作のハードルを上げています。
まあそうは言っても、ここから先こそが友人知人には手伝ってもらえない加工屋としての作業部分になるので、気合い入れて行きます。
用意したのはアルミニウム青銅のC6191。
このアルミニウム青銅系は、摩擦抵抗の低さとそこそこの強度に加え、優れた耐摩耗性を持ちながら、摩擦する相手も摩耗させづらいという特徴がある為、自動車分野ではエンジンのバルブガイドやミッションのシンクロメッシュ等、摩擦を前提とする部品に用いられており、ラックギアの摺動を受ける今回のブッシュにも誂え向きだろうという判断です。
そしてこれでブッシュを作り、はめ込むのですが…
元々ブッシュのストッパーになる物が無い構造ゆえ、ブッシュの外径を締りばめで作らなければ抜けの原因になりかねず、それをただでさえ内径の安定しない鋼管の、更に寸法の不安定になる絞り加工部付近に合わせて作るのはかなりのプレッシャーでした。
何せ万一走行中にこのブッシュが外れれば、最悪はラックエンドとの間に挟まって操舵不能になる可能性すらあり、文字通り命が懸かりますので。
更に、念には念を入れて強力なはめ合い接着剤も併用して固定。
…これで一山超えましたね。
後は、他の部品を洗浄しつつ組み付け。
こんな部分もさすが非分解品だけあって、ガスケットなんて当然単品が存在しないので、シートガスケットを切って作り…
グリスアップしつつ組み上げて…
最終の締め付けは再度工場にお願いして、修復完了。
この際なので、カチカチなっていたラックブーツも新調して、見た目はずいぶんきれいになりました。
…しかし、やけに組み上げが簡単だったのが何か引っかかるんだよな…
…まあ、でも考えてても進まないので組んじゃいます。
どうせギアボックスを全てバラバラにするので分解時から目印を何も付けておらず、ロックトゥロックのセンターは後からステアリングボスの脱着で合わせりゃ良いだろうという、非常に雑なやり方ではありますが…
そもそもメーカーが分解を認めていない物をバラしているとなれば正攻法もへったくれも無いので、取りあえず組み付ける事だけが優先です。
12月中旬にミニカをウマに掛けてから、何だかんだこの時点で1月下旬…
…もういい加減着地させたいんです。
そしてギアボックス周りが組み付いた後は、いよいよお待ちかねの着地。
整備工場まで自走する為の最低限のセンター調整をするのですが…
次回、案の定の事態が発生!
一体、どうなってしまうのかー(棒)