それは、議会当日の未明の事でした。
左脚に強烈な痛みを感じて目を覚ますと、目に入ってきたのは
歪に変形した自分のふくらはぎと、それのためにピンと伸ばされた爪先でした。
どうやら、ふくらはぎが攣ってしまったようです。
嫁が娘を連れて毎夏恒例の里帰りをしている為に一人暮らし状態なので、誰に助けを乞う事が出来ず、自分で爪先を引っ張って攣った所を伸ばそうにも、
余分腹が邪魔で手が爪先に届かず。寝ぼけた頭ではどうしたら良いかすぐに思い浮かばず。
数分経って意識がはっきりしたところでようやく、強引に立ち上がりアキレス腱を伸ばす要領で攣った所を伸ばし、再び就寝。
ところが、この中途半端な覚醒が、朝の目覚めを妨げてしまったようで、
目が覚めた時には既に出発予定時刻を30分ほど過ぎていました。
飛び起き、着替え、すぐに大饂飩帝國へ向けて出発!
しかし、今思えばそれは、帝國で私に降り掛かるであろう災難を察した亡父が、議会出席を思い留まるように、足を攣るという形で私に警告していたのかもしれません。
そうとも気付かずに大饂飩帝國に向かう私。
結局、亡父の警告は無意味どころか、遅刻という形で災難が増幅されて降り掛かる結果となってしまったのです。
しかも、慌てて出発するもガソリン補給・忘れ物を取りに帰る・悪天候・自然渋滞・事故渋滞・・・。
時間だけが無慈悲に流れて逝きます。
道中で参加者の一人、邪っ惡氏からTEL。
「おいこら豚!今どこじゃ!」
「ぁ、はいスミマセン、まだ大阪府内
(≒自宅付近)ですぅ~」
「儂よりも遅くなったら、どうなるか判ってるやろな!」
ブチッ!! ツーツーツー
もうしばらくして、6発王様からTEL。
「おいこら豚!今どこじゃけん!」
「ぁ、はいスミマセン、まだ芦屋
(の10km手前)付近ですぅ~」
「・・・・」
ブチッ!! ツーツーツー
あああ・・・親父、もうすぐ親父のところに逝くかもしれんよ・・・。
なんとか屍国に入り、高松道に乗るも、片側一車線のミニバン行列with大雨で思う様に距離が稼げません。
結局、集合場所の府中湖PAに着いたのは、
集合時刻より遅れる事2時間の、正午ごろ。
パーキングには、既に
レクサスが誇る日本の技術の粋が結集された6発王様の高級スポーツセダン・レクサスISと、
ジャーマンの誇り・枢軸国最高傑作の工業製品・邪っ惡氏のVW・パサートヴァリアントR36が鎮座してました。
そんなハイソな車の横に貧相な9年落ち中古スカイラインを止めるのもおこがましいと思い、ISの後ろに慎ましげに止めていると6発王様からTEL
「どこに止めとるけん糞豚!そこに止めたら、写真撮れんけん、パサヴァリの横に着けるけん!」
言われるままに車を移動すると、前方に6発王様と邪っ惡氏のお姿が。
すぐに御前に馳せ参じると、
「土下座じゃけん!土下座して詫びるけん!」
と激しくお怒りの様子でした。
言われるままに土下座する私。
その姿を一瞥した6発王様、
「『UDONが代』を歌え」
「え?」
「わが帝國の國歌を歌えと言っとるけん!」
「それは恥ずかし過ぎるであります」
「おんどりゃ、遅刻した上に國歌も歌えんと言うけん?」
”遅刻”の二文字を出されると、何も言い返せません。
「でっかい声で歌うけん
ニヤニヤ」
「・・・かしこまりました」
休日で人がたくさん居るPAで、雨の降る駐車場でズブ濡れになりながら両足を肩幅くらいに開き、両手を腰に当てて大饂飩帝國々歌「UDONが代」を斉唱しました。
♪
UDONが代は
玉子で 醤油で
ちくわ天の 穴塞がりて
ダシが 焦げ付くまで
♪
通り過ぎ行く人たちの
冷たい視線と嘲笑が胸を刺します。頬を伝い流れるのは雨水なのか、涙なのか。
その頃、なんと6発王様と邪っ惡氏は、事もあろうか
他人のフリをしてさっさとその場から立ち去ってしまいました。
「置いていかないでください!」
と言うも、
「あなた、誰ですか?恥ずかしいから近づかないでください」
と言って、二人でソソクサとISに乗り込んでしまいました。
ここまで来て置いてけぼりは叶わないので、こっそりIS後部座席に乗り込んで、いよいよ、
恐怖の大饂飩帝國議会の開会です。
「大饂飩帝國議会」
通称・UDONオフとも言い、大饂飩帝國元首・6発王様の召集によって年数回催される[要出典]、オリ萌の重要イベントの一つである。
基本的に参加は自由であるが、欠席者の生命の保証はされない。
しかし、出席者の生命も保証しかねる、とは6発王様の言葉である。
出典: フリー百科事典『Wnkoporoli』
一軒目は、
でっかい焼き鳥屋さんでした。
駐車場にISを止め、店内に入ろうと6発王様がさっさと一人で傘をさして歩いて行きました。
その後を傘も差さずに付いて行く邪っ惡氏。その姿を見て可哀そうに思い、私がコッソリとISに持ち込んでおいた傘に、彼を入れてあげました。
それを見た6発王様の憎らしげな表情の理由を知るのに、そう時間はかかりませんでした・・・。
店内に入り、早速注文です。
「
儂様と邪っ惡はラヴラヴやからひなどりにするけん、糞豚は一人でおやどりでも喰え」
どうやら6発王様は、私が邪っ惡氏を傘に入れてあげたのを、横恋慕したと勘違いなされたようでした。
しかも6発王様は
相当なSらしく、
邪っ惡氏のメガネに対して店員さんに
「変なメガネやと言うけん!」
と脅したり、邪っ惡氏に何回も大きい声で「
パンチラ」と言わせたり、
絶好調でした。
肝心の鳥ですが、脂とスパイスがコッテリしておりパリパリした硬めの肉の感触もなかなかよろしかったです。
すると6発王様がいきなり、
「儂様のひなどりを一口食わせたるけん」
と、珍しく優しい言葉をかけてくださったのです。
お言葉に甘えてひなどりを一口頂きましたが、おやどりとのあまりの違いに少し驚きました。
次に来たら、ひなどりを注文してみよう。
ところが、その一口を頂いた時に6発王様が
「ゲヘヘ・・・空母ちゃん、間接キスやのぉ・・・グフフ」
と不気味な笑みを浮かべていました。
その笑みの意味は、後になって思い知らされるのです・・・。
次に向かったのは、大饂飩帝國最西端にあるというUDON店でした。
その移動の際、私は人生で二度とはない幸運に巡り会えたのです。
なんと6発王様が、私にISを運転させて下さったのです!
「レクサスIS 350 Fスポーツ」
日本が世界に誇る超巨大企業「トヨタ自動車」が、その持てる技術の全てを結集して作ったと思われる、選ばれた者のみが所有することを許された高級スポーツセダン。
私のV35を旧ザクに例えるなら、ISはまさしく
シャア・ゲル!
悪天候のため、あまり走り込めませんでしたが感じられたことがあります。
今までトヨタに持っていた、走りに関してダルなイメージとは全然違う、と。
店に着いた頃には雨も一層激しくなってました。
6発王様に店の特徴を紹介していただきましたが、
「この店の姉ちゃんが可愛いけん
ニヤニヤ」
と言うばかりで、しかもその日はその姉ちゃんは居ませんでした。
その事に腹を立てたのでしょうか、
6発王様が私たちに酷い仕打ちをしたのです。
先に食べ終わった6発王様が、さっさと一人で店の外に出たので、私達はてっきりISに乗って待機されていると思っていました。
私達も食べ終わり、店の軒下から7~8歩ほど走った先にあるISに、サッサと乗り込もうとしたのですが、なぜかロックされていてドアが開きません。
「あれれ?」と思い数回ドアノブを引っ張っても開きません。
車内には、6発王様のお姿がありませんでした。
身体がどんどん雨に濡れてしまうので、一旦軒下に引き返すと、反対側から6発王様がほくそ笑みながら出てきました。
どうやら私達は6発王様のフェイントに引っかかったようです。
「キヒヒ・・・すまんすまん、ここ(軒下)にクルマ動かしてきたるけん」
と珍しく人間らしいお心遣いを頂いたのですが、止めて下さった位置の軒下からの距離が微妙でした。
最後に向かったのは帝國内でも有数のUDON店でした。
そこは数年前の帝國議会で行ったことがあった店でした。
本来は、まだ数軒まわる予定だったらしいのですが、天候不順と私の遅刻のせいで、ここが本議会最後の店となりました。
こんな天気で昼の3時前だというのに、数組の客が並んでいるほどの店です。
軒下で3人で並んで待っていると、邪っ惡氏が
「遅刻した分際で、なんで儂らと並んでるんや」
と言いながら私を雨の中へ蹴りだしてしまいました。
「ここでもう一度、國歌斉唱するけん」
と6発王様に言われたので、両足を肩幅くらいに開き、両手を腰に当てて「UDONが代」を斉唱していると、
二人は他人のフリをしてソソクサと店の中へ入って行ってしまいました。
そして・・・
本議会最後の会場で、6発王様から
重大な発表がありました。
「実はな」
「儂様な」
「保菌者やけん!!!」
「えええ~~!!(@@;」
なんと6発王様は、あの「ピロリ菌」の保菌者だったのです!!
「さ、触らないでください!伝染ります!!」
「グヘヘ・・・でもな、糞豚にはもう伝染ってるけんニヤニヤ
さっきのひなどりでな・・・・・!」
なんと、先ほどの焼き鳥屋みたいなとこで一口下さったのは、
私にピロリ菌を伝染すための策略だったのです!
「
これでおどれも保菌者やけん、
ケケケケケェ~~」
保菌者となって肩を落とす私の横で発せられた、6発王様の高笑いで、平成26年度夏の大饂飩帝國議会はめでたく閉会されました。
最後に、今回の議題
「商売人の死に方」
についての結論は
「銀行には気を付けよう」
と、なりました。
詳しい内容は議会出席者特典ですので割愛します。
ピロリ菌は、日本人の約半数が保菌、昔は殆どの人が保菌していました。
また、感染は経口感染すると考えられていますが、接触するだけで感染しません。
本文中では、その場の笑いのネタとして扱っておりますが、決して差別的な意図は無いことをお伝えしておきます。