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家村浩明のブログ一覧

2015年09月30日 イイね!

スポーツcolumn 【ラグビー】うおおー、チェリー・ブロッサムズ! 《4》

今回の日本代表の戦略&方法論、《ジャパン・ウェイ》を説明した「岩渕健輔 すべてはラグビーW杯優勝のために」というweb記事で、(ウーム……!)と唸ったことがもうひとつある。それは「セットプレー」の重要性と、そして、そこから生まれる「型」の問題だ。

なるほど、たしかにラグビーはスクラムにせよラインアウトにせよ、セットプレーの機会が多い競技だと思う。そして「セット」の場合は、そこからの戦術にせよ作戦にせよ、あらかじめいろいろと研究し、「型」を決め、こういうシステム(組織プレー)で行こうと、いわばリハーサルしておくこともできる。

ただし、セットプレーに対して「オープンプレー」と呼ぶらしいが、ラグビーの場合、この「オープン」状態の時間もかなりある。こうした「型」のない状態の時、それをただ野放しにしておくと、外国人選手との単なる“殴り合い”的な状態となり、身体能力に勝る相手が有利になる。

さあ、ここから先が“目からウロコ”だったのだが、今回の日本代表は、そうした「オープンな状況の中から、セットプレーに近い状況を意識的に作り出していく」ことを目指しているという。

具体的には、たとえば「モール・ラックといった密集プレーで起点を作りながら、他の選手たちがいち早く本来のポジションに戻って陣形を整え、攻撃のルートを確保していく」ようにする。「オープンな状況からセットプレーに近い状況を幾度となく作り、自分たちの『型』にはめていく」。(「岩渕健輔 すべてはラグビーW杯優勝のために」より)これが《ジャパン・ウェイ》、つまり日本らしい闘い方の真髄というのだ。

なるほど~! その「日本チームしかできないような闘い」をすることでは、国際試合をする際の「日本野球」が、既にそれに近いことをやってますよね。メジャーリーグでもできないであろう、丁寧で緻密な野球。そして、それで世界の頂点にも立ってしまった。ラグビーの場合も、そういう《ウェイ》を見つけ出し、コンセプトとして確立する。これが現・日本代表のテーマなのだろう。

そしてもちろん、これは絵に描いた餅では意味がない。そのコンセプト(戦略)を実際の試合で実行するために、戦術や作戦をどうするか。その具体化と、その実行を可能にするための策は? もし、そのために、それまで以上の基礎体力や身体的条件が必要であるなら、戦略検討と同時に、フィジカルの強化も行なう。エディー・ジョーンズ率いる日本代表の「猛練習」とは、こういう意味と内容なのだと思う。

「日本及び日本人」を国際化する、世界水準にまで持っていく。これはちょっとオーバーにいえば、スポーツだけでなく産業や社会など、第二次大戦後の「日本と私たち」が抱えた大問題であった。1964年のオリンピックは、東京という都市の“世界化”の試みだったのだろうし、戦後のクルマ世界もまた、そうやって駆け続けて、1980年代末から90年代の始めに、なぜか「ベルリンの壁」崩壊とも時を同じくして、世界水準を突き破った。

そして、世界水準に向けての闘いは、コンセプトも見えたし、そのようにやってみました、でも足りないところも、まだまだ多かった……という結果に終わってしまうこともある。努力の跡はあるが、成果はなかったというやつである。でも、今回のラグビー日本代表はそうではなかった。対南ア戦での勝利が素晴らしいのは、そうした闘いの成果を「結果」としても見せたことだ。

第二戦となったスコットランド戦にしても、中三日での試合というスケジュールのせいか何となく選手たちの動きにキレがなく、またミスも多く、そして反則の判定が日本にだけ厳しかった……かどうかはよくわからないが、大差での敗戦という結果となった。ただし、この試合にしても、前半終了まではほぼ互角であり、ヒイキ目ではなく、後半の“流れ”次第では、勝ったかどうかはともかく、もっと接戦で終われたはず。《ジャパンウェイ》は「世界」に届いたのである。

(つづく)
Posted at 2015/09/30 16:09:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | スポーツcolumn | 日記
2015年09月28日 イイね!

【F1】グランプリ・ウイークの愉しみ

金曜日から日曜日、鈴鹿ではいろんなことがあって、やっぱり愉しい週末だった。

まずは金曜日、鈴鹿サーキットは雨。しかし、土曜と日曜は降らないという予報で、そうであるなら、金曜日にレインタイヤとインターミディエイト・タイヤでデータを採っても、それが活きることはおそらくない。そんな金曜日なら、極論すれば走らなくてもいいのかもしれないが、しかし、フェルスタッペンに続いてトロロッソの二人といった“若手組”は、次々と雨の鈴鹿のコースに出て行った。

多くの先輩ドライバーが口を揃えて、ここは世界で一番グレートなコースだという「鈴鹿」を、たとえ雨でも──いや、雨だからこそ、F1で走ってみたい。それがパイロットの本能なのだ……なんていう妄想ストーリーを作っては、ひとりでウケていた(笑)。そして、タイム競争的にはインターミディエイトでのバトルになったフリー走行1を制したのは、新進のパイロット、カルロス・サインツ・ジュニアだった。

予報通りに晴れた土曜日。フリー走行から予選、ウイリアムズが速い。このパッケージは、中速+高速のコースでは、やはり浮上するのか。そして、シンガポールでのレッドブルのように、このところのF1では“伏兵”が台頭するが、鈴鹿では、それがウイリアムズか。

とはいえ、やっぱり速かったのはメルセデスで、ポールもニコ(ロズベルク)のもの。ただ、最後のアタックを阻まれたドライバーが多かった予選でもあり、もし予定通りに予選が行なわれていたら、ポールシッターはルイス(ハミルトン)ではなかったか。

そして、予想されていたことだが、やっぱりあまり「速くない」のがマクラーレン・ホンダ。金曜日の雨の時くらいは、アロンソ、バトンの腕でパフォーマンスを見せるかとも思ったが、それができるだけの「速さ」がクルマにはない模様……。

ドライの決勝でも同様であり、果ては、ストレートであまりに簡単に抜かれることに呆れたアロンソが、チーム無線で「このクルマはGP2なのか?」と言った声が流れてしまう始末。

つまり、ブレーキングでもライン取りでも、すごく下手なコーナリングをしているワカモノ・ドライバー(複数)が、直線になると、いとも簡単に抜いていく。これは、いったい何なんだ? ……という自虐的なジョークをチームと共有しようとした。見方を変えれば、「GP2」とまで言えるくらい、マクラーレン・ホンダのチーム内は風通しがいい?

そのアロンソは、プレスリリースの中で改めて、近い未来にメルセデスに勝てるのはこのチーム(マクラーレン・ホンダ)だけと語っている。いまは、テスト・イヤーとしての2015年を過ごしている。そうだとすれば、その13戦目、二台ともに一切のトラブルなくレース距離を走り終えたのは、とてもポジティブなこと。外野席としても、そんな風に思う。

例の“サイズ・ゼロ”というパッケージングも、ホンダと組んだ初年度だからこそ、あえて極端なコンセプトと仕様を実戦で試した。そのトライとエラーのデータは、来年用のクルマの設計に、実はもう入っている? タフな“レース人”なら、このくらいのことはやるよなと、ようやく気づいた昨今。

「フェルディナンド、今日のクルマは?」
「フフ、F1になったみたいだね(笑)」
こうしてメディアとアロンソが笑い合う、そんな日が来るのは2016年の春か。
Posted at 2015/09/28 01:45:12 | コメント(0) | トラックバック(0) | モータースポーツ | 日記
2015年09月26日 イイね!

スポーツcolumn 【ラグビー】うおおー、チェリー・ブロッサムズ! 《3》

ラストプレーで逆転トライが決まった時、うおぉー!……と思わず声が出てしまった。「34対32」、日本代表、南アに勝利! この“事件”は世界を驚かせ、ラグビープ史上最大のアップセット(あり得ない“ひっくり返し”)だとして各メディアが狂奔した。これまでの最大のアップセットは、フランスがニュージーランド(オール・ブラックス)を破ったことだったが、今回はそれを超える衝撃というのだ。

ただ、このように驚きまくっているのは周囲だけで、南アに勝った当事者たちはそうではなかったようである。試合後、インタビューを受けたフルバックの五郎丸歩は微笑みながら「日本も世界も、ぼくたちが勝つとは思ってなかったでしょう」と言ったあと、すぐに付け加えた。「ラグビーに、奇跡(の勝利)はありません」──。

なるほど、最後のプレーで、比較的容易に得点できるであろうキック(PG=3点)を選択せず、うまく行かなければ零点で終わるトライ(5点)狙いを選んだのは、フィールドの選手たちが“何か”を見ていたからだろう。今日の自分たちなら、また相手との関係なら、そしてこういう流れなら、ここでキックする必要はない。トライまで行ける!

……後出しジャンケンみたいで申し訳ない限りではあるが、今回のワールドカップに日本代表がどういう“姿勢”で臨んでいるのかをちょっと調べてみた。すると、ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが参戦テーマとして、《ジャパン・ウェイ》を掲げていることがわかった。日本には日本なりの闘い方があり、その「ウェイ」のひとつとして、攻撃は最大の防御なりというのがある……?

そう、これだけならありきたりであり、新鮮でもない。しかし、さらに突っ込んでみると、そのような「ウェイ」を掲げるに至ったのかというその理由が“超リアル”であった。何と、日本ラグビーはそもそも「弱い」というのが、その出発点だった。この点についてラグビー協会側は、ネット上の記事「岩渕健輔 すべてはラグビーW杯優勝のために」の中で、以下のように説明する。

外国の強豪チームと日本代表を較べた場合、はっきりしているのは「体格差」である。そもそも、敵はデカい! こういう敵と真っ正面から対峙したら、有利なのはもちろん大きくて重い方だ。そして、この基本認識とも絡むが、そうした「差」をベースにした敵のヘビーな攻撃を受け続ければ、結局は消耗して「守りきれない」だろう。

記事中で岩渕氏は言う、「少ない得点を守りきって試合に勝てるほど、日本の守備は堅くありません」。そもそも体力差があるのだから、どんなに「堅守」を意図しても、結局それは破られる。ラグビーは、身体をぶつけ合う「コンタクトスポーツ」(岩渕氏)であり、仮にそうした攻撃を回避しようとキックで急場をしのいでも、「ボール」=次に攻める権利は相手に渡るだけ。

ヘッドコーチのエディー・ジョーンズは言ったという。先手を取って、日本がボールをキープし、パスを回し、常に攻撃を仕掛けていく。自陣からでもボールを回し(キックを使わず)走りきって攻める。「弱い」ことを自覚した上での「攻撃的なラグビー」、それが《ジャパン・ウェイ》なのだ、と。

……凄いなあ! 自らが「弱い」ことをまず認め、その「弱さ」の中身を確認し、そこから対策や展望を考えていくのか。そして記事はここから、その「攻撃的ラグビー」の種々の作戦、セットプレー(スクラム、ラインアウトなど)での戦法、そして攻撃のためのさまざまな「型」を作っておくなどの具体策にも入っていく。

もちろん、そういう「攻撃」を可能にするにはハードな練習が必要。また、身体の大きさで他国に負けていることも事実だから、その体格差ハンディを減らすべく、フィジカル的にもトレーニングを重ねる。合宿での練習開始時刻は、たとえば朝の4時だったというから、これはハンパではない。

日本ラグビーのそんな準備や対策を知ってフッと思い出したのが、1980年代の日本自動車界だった。まだ「世界」で通用していないものを、ワールドレベルに持って行くにはどうするか。日本メーカーはそれまでの海外経験を踏まえ、問題点を見つけ出し、「足りてない」ことを前提にコンセプトを立て、それを具体化して世界水準に挑戦していった。その歴史のことである。

ともかく、「日本ラグビー」あるいは「エディーのラグビー」にはコンセプトがしっかりあり、それを踏まえてのハードな練習をしてきた。それが今回の《ジャパン・ウェイ》による日本代表のワールドカップ挑戦なのだ。そして、第一戦。日本代表はほぼプランニング通りの試合ができて、勝利という結果まで付いてきた。《ジャパン・ウェイ》というコンセプトは間違っていなかったのだ。だからこそ、五郎丸歩は“騒ぐマスコミ”に静かに言ったのだろう、「ラグビーに、奇跡はありません」と。

(つづく)
Posted at 2015/09/26 18:00:08 | コメント(0) | トラックバック(0) | スポーツcolumn | 日記
2015年09月24日 イイね!

スポーツcolumn 【ラグビー】うおおー、チェリー・ブロッサムズ! 《2》

ワールドカップ予選の日本対南ア戦は、後半になっても拮抗する状態が続いた。一方が得点すると、もう一方も反撃する。時間が経つにつれて、一方だけがズルズルと弱者になっていく(そしてそれが日本だった)という展開にはなっていない。互いにトライし、PGを決め合う。この試合は、勝者と敗者が無残に分かれる“悲しいショー”ではなかった。観客としても、どっちが勝つかを見ていられた。

ひとつ驚いたのは、日本代表のハンドリングの正確さである。ハンブルとかノックオンとか、そうしたミスや反則がほとんどない。パスはいつもビシッと通った。だから、リズムも悪くならない。その基本技術をベースに、戦略的に人を動かし、システムで攻撃している。対して南アは、やはり個人技のキレが凄い。彼らの二つのトライは、その個人技が大いに絡んでいた。双方がスキルとテクニックをぶつけ合い、互いに得点を重ねていく。

時に日本選手がアップになり、画面にそのユニフォームが映る。歴代の日本代表ユニフォームに詳しくないのは残念だが、少なくともこの「2015年仕様」については、すぐに(いいな!)と思った。何より明快! ラグビー・ユニフォームの定番というべき「横縞」を“いま風”に(?)アレンジし、それに日章旗をコンセプトにしたデザインを組み合わせている。

左の胸には桜の花、いわば“スリー・ポインテッド・チェリー”。ここだけがピンク色で、残る全体の色味は「赤/白」の二色だけ。潔い、そして、わかりやすい。世界中の人々がひと目で、日本チームのユニフォームだと識別するのではないか。そして「日の丸」は慎ましく、左袖に小さくワンポイントで収まる。
「胸に掲げた花は何ですか?」
これは私たちが好きな花、日本の春を鮮やかに彩る《桜》です。
「オー、チェリー・ブロッサム?」
イエー!

もうひとつ、気づいたこと。日本代表のラグビー選手には、日本以外の国やエリアの出身と思われる選手も多くいるが、誰ひとりとして髪を染めていなかった。金髪も茶髪もいない。これは、誰かに言われたからとか、そういった問題ではないように思う。おそらく日本代表ラグビー選手の誰に聞いても、美容院に行って鏡と相対しているヒマがあったら練習したいと答えるのではないか。

嗚呼、これに較べると、サッカーは何と“チャラい”世界か。華麗なるファッション性と逞しすぎるコマーシャリズムで、悲しいほどに虚しい。(ナショナルチームの選手でいられる時間なんて、長い生涯でほんの一瞬。モデルやタレントの真似事は、現役を退いてからやれ!)ラグビーのワールドカップを見ながら、思わず呟く初老の男、約一名……。

さて後半も残り10分を切って、スコアは「29対29」。ここで日本が反則し、南アに得点の機会が来る。この時に彼らが選んだのは、キックによる「3点」だった。まあ位置もよかったし、そしてこれはセオリーでもあろう。しかし、私はちょっと嬉しかった。ここでトライして息の根を止めてやるぜ! 南アはこうした上から目線の選択をしなかったからだ。たとえ「3点」でも取る。とにかく、ここでいったん“勝って”おく。それが危険な相手と闘っている「強豪・南ア」の判断だった。

「32対29」、南ア3点のリードで、時計は「72分」、残るは8分弱。日本代表はキックをせず、ボールを回してただただ前に向かう。そして、相手ゴールライン近くにまで攻め入った78分、南アが一人退場者を出した。ここからのラインアウトで巧みにモールを作り、押し込んでいくが、TV判定の結果トライはならず。

再開されたプレーで、ふたたび南アが反則。時計は「80分」を回ろうとしていた。あと、ワンプレーか。ここでペナルティゴールを決めれば「3点」が入り、「32対32」にできる。……実際、スタンドにいたヘッドコーチ(監督)のエディー・ジョーンズが無線で指示したのは「スリー」(PG)だったという。南アに対して歴史的な引き分け。それでゲームを終える?

しかしこの時、フィールドの選手たちは「スクラム」を選んでいた。「3点」ではなく「5点」(トライ)を取りに行く。騒然となる場内。日本チームのユニを着た英人(?)女性が、何かを叫んで、跳びながら全身でガッツポーズするのが国際映像に映し出される。(そうよ、それがラグビーなのよ!)

アディショナルタイムに入っているので、反則も含んで、何かでプレーを止めたら、その時点で試合は終わる。81分、モールで押し込んだが、またしてもゴールラインには届かず。大歓声を受けて、ふたたびスクラム。これが本当のラストプレーか。ここからはバックス主体の攻撃で、日本は南アを左右に揺さぶる。そして、いったん右を攻めておいて、そこから素早く左へ展開。ここには決定力のあるヘスケスがいた。走り込んできた彼に、一人飛ばしてのパスが渡って、そのヘスケスが左隅に飛び込んだ。トライだ! 

(つづく)
Posted at 2015/09/24 13:55:02 | コメント(0) | トラックバック(0) | スポーツcolumn | 日記
2015年09月23日 イイね!

ロードスターに乗った 《その2》

ロードスターに乗った 《その2》スポーツカーと分類されるであろうロードスターのようなクルマに、これは「戦闘ギア」ではなかったなどと書くと、クルマの本質は競走であり“闘うクルマ”だけが美しいのだという反論が返ってくるだろうか。この話を始めると長くなってしまいそうだが、ここでは、ヨーロッパで生まれて、その地を走って、そしてそこで生涯を閉じるクルマならば、それでもいいけどね……と短く言うにとどめたい。

たとえばヨーロッパでは、クルマとその運転者は、そのクルマにとって、また運転者のその時の都合や気分によって、どのくらいの速度で走るかを選べる。「道」という受け皿が、クルマの数に対して余裕があるからだ。ゆえに「スポーツカー」というジャンルも生き残れるし、また速いクルマを選ぶことで「時間」も買える。

でもグローバルに見て、そうしたヨーロッパ的なクルマの使い方ができる場は限られている。……というか、そんなことができるのは西ヨーロッパだけ。この地域以外でのクルマと「道」(社会)との関係はそうではない。目的地までの到達時間を決めるのは、クルマの性能ではなく、しばしば「道」の混雑状況。ゆえに、西欧以外の地域で売られるクルマ、たとえばこのロードスターが「戦闘ギア」以外の要素を持っていることを、私は賞賛したい。それも、「スポーツカー」と呼ばれるであろうジャンルのクルマがそうであることに、さらに拍手もする。

さて、そのロードスターだが、もし、シリーズ中でどのグレードを選ぶかということになると、これはけっこう難儀である。そう、それは「S」という仕様があるから。これ、走らせてみると相当に違うクルマなのだ。

とにかく、ものすごく軽い! データでは車重が990㎏で他の仕様が1010~1020㎏だから、重量的にはほんのわずかの差なのだが、感覚的にはかなり違う。「零戦みたいだ!」なんて、見たことも触ったこともないアイテムを例に出すのは不謹慎ではあるが、でも、思わず、そんなことも言ってみたくなる。足のセッティングとしては、スタビライザーが付いてないというのが他仕様との差異だというが、ともかく挙動が異なるのだ。

「零戦」というのは、もちろん洩れ聞くところによれば……だが、こと「運動性」においては他の追随を許さない戦闘機であったという。一対一の「格闘戦」になったら、どんな高性能機であっても「ゼロ」には勝てない。そのため当時の米軍は、ゼロ・ファイターとの格闘は絶対にするなとお触れを出したほど。

ロードスターの「S」仕様は、そんな歴史の挿話を思い出すほどに、ステアリング・ワークに対応して、クイクイとノーズが動く。そのフロント部の動き具合が新鮮だ。スタビが欠けている分、ロールしやすいセッティングになっているのだろうが、その一種の“過敏さ”が逆に気持ちいい。

これについても、もし、より速くコーナリングするというテーマであれば、そのコーナリング・フォースをがっしり受け止めるための足は必須であろう。サーキットなどでタイムを取ったら、そういう足の方が有利。しかし、もし「競走原理」以外のコンセプトを持つクルマなら、そうした性能(タイム)にはこだわらなくていい。

こうした割り切りがあるのが、おそらく「S」であり、そんな提案にも新ロードスターの「新しさ」があると私は思う。まあ作り手の側にとっては、ちょっと初代を作った時のココロを思い出してみました……というだけのことだったかもしれないが。

ただし、この「S」仕様、ベーシックにして軽量かつ安価なバージョンであるため、
たとえば、エアコンはオートではなくマニュアル式。シートヒーターは付かず、オートライトやレインセンサー(雨滴感知)ワイパーもナシ。近頃流行りの車線逸脱警告もなく、オーディオ方面ではTVや8スピーカーは不可で、スピーカーにしても4つだけ。

でも、ロードスターのような「意のまま」感を大切にしたクルマに注目した時点で、その「感」をさらに突っ込んでみた仕様があることを喜ぶべき。そして、メーカーはどうも「人馬一体」という言葉が好きなようだが、「馬」というのは勝手に暴走することもあるはずなので、コピーとしても「人車一体」の方がいいのではないか。それはともかく、そのような「一体感」をさらに追求したと思えるこの「S」仕様、選択に際して思い悩む価値は十分にある。

(了)
Posted at 2015/09/23 22:35:35 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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