目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
初級 |
作業時間 |
30分以内 |
1
ついにというべきか不運というべきかエアコンの不具合です。とはいっても完全に駄目になったわけではなく、冷えなくなった後、放っておくとまた復活するという状態です。この症状は2年前から年に一回程度の頻度でありましたが、最近は頻繁に起こるようになりました。コンプレッサー、エバポレーター、コントロールモジュールなどの高額部品の故障交換の場合、諭吉さんが大量に羽ばたいていく事になります。それを最小限度に抑え、気持ちよく修理に出す為、“エアコン構造を理解しよう”ということで、少々お勉強する事にしました。
2
A: 主要部品配置(全グレード)
まず取りかかりとして、パサートのエアコンシステムを構成する主要部品の配置を図にしてみました。W8とその他のエンジンの場合多少使用部品の違いがありますが大まかには同じ構成をしています。
1 アキュムレーター
(別称:レシーバードライヤー・リキッドタンク・コレクティングタンク)
正確にはアキュムレーターとドライヤーは異なるものらしいですがまあ同じ機能を果たす様です。
2 低圧用サービスバルブ
3 高圧用サービスバルブ
4 エアコン用ポーレンフィルター
右ハンドルの場合、逆の位置にあります。
5 エバポレーター
6 エンジン冷却スイッチオフバルブ
W8のみについています。
7 プレッシャーリリーフバルブ
8 冷却ファンコントロールモジュール
9 コンプレッサー
W8はデンソーのクラッチレス仕様, それ以外はデンソー・ゼクセル・サンデン製クラッチ仕様。
10 クラッチ
W8にはつきません。
11 コンデンサー
12 外気温度センサー
13 圧力センサーもしくはA/C圧力スイッチ
14 リストリクター
3
B: W8エアコンシステム配置
W8はクラッチレスのコンプレッサー(DENSO製)に加え、エキパンではなくリストリクター式を採用。主要部品の配置は図のようになっています。
1コンプレッサー
2Low Pressureスイッチ
3コンデンサ
4High Pressureサービスコネクション
5リストリクター
6エバポレーター
7Low Pressureスイッチ
8Low Pressureサービスコネクション
9アキュムレーター
(コレクティングタンク)
4
エキパン仕様との配置上の違いはアキュムレーター(コレクティングタンク)が低圧側に配置されている事くらいです。
この場合のアキュムレーターの役割はいわゆるレシーバータンクの機能に加え、コンプレッサーを保護する役割があるとされています。
それ以外の部品構成や配置はエキパン仕様と同じになっています。
(ND: Low Pressure side, HD: High Pressure side)
5
C:W8専用仕様
W8リリース当時、サービス向けに配布されたマニュアルでは、クラッチレスコンプレッサー(DENSO製)+リストリクターを主要部品構成上の最大の特徴としています。また、同じくサービス向けに配布されたセルフスタディプログラムでは上記2つに加えて、次の2つのパーツ構成部品が他モデルにない大きな特徴としています。
1 Sender for evaporator outlet temperature G263
(エバポレーター出口温度の送信器)
2 Regulating valve N280
(クラッチレスコンプレッサーに付いている制御バルブ)
この2つの部品の相互作用と、Climatronic(エアコンコントロールパネル)から構成されるいわゆるコントロールサーキットが適正な温度制御を行ない、バッテリー消費や燃費に貢献するのだとしています。
(パーツ構成部品ですので当然、ここに不具合がある場合、エアコンは機能不全となると思われます)
スペース・重量の問題を解決するために組まれたシステムなのでしょうが、当時のVWのエアコンシステムの最先端だったのかもしれません。
クラッチレスはクラッチがなくなる分重量やスペース確保にアドバンテージがあり、トヨタ、メルセデス、BMWでもエアコン主要部品として採用されています。しかし、エアコンオフの時でもコンプレッサーは回り続けているため、現在では見直す動きもある様です。
6
D:トラブルシューティング(現象編)
カーエアコンメーカーの方や電装屋さんのお知恵を拝借しながら、代表的なケースのみのトラブルシューティングの表を作ってみました。
通常のクラッチタイプも網羅したつもりです。しがしながら、当然のように漏れもあるかと思いますのでどんどん指摘してください。
7
E:トラブルシューティング(データ編)
現象面からは、トラブルの原因を推定できても特定するまでにはいたりません。
デジタルで制御されている車の場合、ディーラーや電装屋さんでは、ヒアリング実施後、まずVAS(故障専用診断器)でエラー有無を確認、その後、測定器でデータをとり、故障部位を特定していく方法が取られています。
主に取得するデータは次の3つになります。(ここを起点に絞り込んでいく)
1 出口付近の温度
2 冷媒圧力(ゲージマニホールドという冷媒圧力計で高圧・低圧配管の圧力を測定)
3 冷媒充填量(一旦、冷媒を抜き、グラム単位管理で充填)
W8(B5共通)のファクトリーマニュアルでは1と2が主なトラブルシューティングとして記載されています。(3は全てのチェックにおける前提条件になっていました)
データ編では上記2つまり冷媒の高・低圧力値の組み合わせにより、起こりうる不具合とその原因をまとめてみました。
8
F:W8圧力許容範囲
パサートのエアコンシステムの高圧側、低圧側圧力の許容範囲です。
エキスパンションバルブ仕様のシステムとリストリクター仕様のシステムでは異なっていました。
W8はクラッチレスコンプレッサー+リストリクター仕様です。
それ以外はクラッチ制御コンプレッサー+エキパン仕様です。
調べるのに結構時間を要しましたが、梅雨の時期にエアコンが不調になるもの嫌なので、そろそろ不具合の特定に取りかかります。
[PR]Yahoo!ショッピング
[PR]Yahoo!オークション
関連整備ピックアップ
関連リンク