迷路

さて。また医療ネタでも書きますかね。
表現を変えた繰り返しになる部分もありますし、長文で読みにくいですが、ご容赦下さい。。


さて皆さんも、迷路を解いて遊んだ経験はあるものと思います。
迷路を解く場合には、いったん袋小路に突き当たることは珍しくありませんよね？

診断と治療の流れというのは、時としてこの迷路に似ています。
様々な可能性を考えていくのはもちろんですが症状や検査データは常に典型的なわけではなく、一時的に「真実」とは異なる病気の可能性が高いと判断されることもしばしばです。
医師は人の命を預かっているわけですから、必死で出口に辿り着こうとします。刻一刻と悪化していく容態という時間制限が加わる場合も少なくありません。

しかし袋小路に突き当たったからとか制限時間に間に合わなかったからとか、ノーミスで行けなかったとかいう理由で医師に損害賠償を命じたり、罰を与える場合があるのが昨今の医療訴訟です。
例えばシューマッハと同じタイムでラップできなかった佐藤某を、クルマ（医療）について知識のない裁判官が有罪とする（あるいは損害賠償を断ずる）。多少誇張はあるかも知れませんが、そういう現実があります。

それはもしかしたら医師が大勢いたり、より経験をつんだ医師であれば防げた結果であったのかも知れません。しかし救える可能性のある患者を必ず救うということをいつでもどこでも実現するのには莫大なコストがかかり、マンパワー・コスト不足に悩む日本の医療では無理な話です（いくら医学が進歩しても、それは事実上不可能と言えそうですが）。

繰り返しになりますが、明らかなミスが許されるべきと考えている医師はむしろ例外的です。目の前の患者を救いたくない医師などいない。しかしミスでなくても避けられない死というものは存在しますし、それを糾弾するマスコミ・国民のために現場の意欲は急速に低下しています。

結果、何が起こるか？
診なければ、結果が悪いと糾弾されること、訴えられ路頭に迷うことはありません。ハイリスクな現場から立ち去ればよい。これは「立ち去り型サボタージュ」あるいは「逃散」と呼ばれ、「医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か」の中で提唱された概念です。

ここで、ある産科の「分娩取り扱い終了のご案内」をご覧下さい。
患者側から見ればトンデモナイ話かも知れませんが、これは医療従事者側のほぼ共通した認識と言ってよいでしょう。

産科のみならず小児科・救急でも同様のことが起こり、地方のみならず東京・阪神などといった都会でさえ救急・時間外外来を開けている病院は急速に減っています。「完璧」を求め過ぎるがために「そこそこ」の医療さえも受けられなくなる、本末転倒な事態が進行しています。

そして万全を期するためにはある程度の人数を1箇所に集める「集約化」が必要ですが、人が足りないから他から人をかき集め、さらに救急を診られる病院が減る。このようなドミノも進行しつつあります。

さて、今日はここまでにします。