2014年06月23日
ある意味、命を救った男
航空自衛隊がまだF86Fセーバーを運用していた時の話。
ある基地ある飛行隊で訓練飛行に向かうべく、F86Fセーバー(当時は旭光と呼ばれていました。通称はハチロク)のパイロットはエンジンスタートさせて整備員とハンドジェスチャーしながら飛行点検を行っていましたが、突然、その整備員が自らの首を手でカットするハンドシグナルサイン、これは「エンジンカットせよ」の意味ですが、それを実行。そのパイロットは「トラブルか?」と思いエンジンカット。
その整備員がコクピットに上がり、パイロットに一言。「○○1尉、フィードチェックしていませんね、貴方は死にたいのですか?USTO-1(米空軍操縦指令書)何ページの何項目に記載されているはずです。」ハッとしたパイロットは確かにチェックしていなかった。ここで言うフィードチェックとは燃料移送系統のチェックですが、F86Fは1940年台の戦闘機。主翼下の燃料タンクの燃料を移送するにはパイロット自身が実施しなくてはなりません。勿論、現代の戦闘機は燃料移送は自動的に行われます。
グランドアボート(地上のおけるフライト中断)は報告する義務があり、その確認を怠ったパイロットは一週間の飛行停止の処分。そのパイロットは指摘した整備員に「なぜフィードチェックしていないのが分かったのか?」と問いただしたところ、「○○1尉の目線、仕草で分かります。大抵はどのパイロットがどこを点検中なのか分かりますよ。フィードチェックは最重要項目です。パイロットは整備員が見て居ないだろうと思いがちですが、しっかりと見ています。気をつけてください。これは貴方の命に関わる事案です。」
当時は上の映像にもありましたが、今のようにパイロットと整備員が直接交信出来るインターホンも無い時代。全てはハンドシグナルサインが頼り。
時は流れ、その整備員が自衛隊を定年する日に、その当時のパイロットは出世し、ある司令官まで昇任したにも関わらず、定年退官を迎える整備員を涙ながらに見送った話です。挨拶で「□□1曹は俺の命の恩人だ。今、俺が生きているのはこの人のおかげです。有り難う」と挨拶されました。
「私は航空機整備員として当然の事をしたまでの事。航空機を整備し万全な機体状況でパイロットに飛行訓練を実施することが目的。航空機整備員としてパイロットが航空機トラブルで亡くなる事は痛感の極み、それは飛行安全の一環の事です。」
現代はオートになった事項やデバイス等がありますが、時にはそれらを超える人間業はある意味、神の領域に入ったと言ってもおかしくないと思わせます。何事も基本が大事ですね。
ブログ一覧 |
ミリタリー | 趣味
Posted at
2014/06/23 20:09:00
今、あなたにおすすめ