2012年09月14日
Cセグメントの新基準
先日、ベルリンでVW によるメディア向けのプレゼンテーションが行われ、そこで新型ゴルフ(通称ゴルフVII )が公開されました。
新型はボディサイズが全長4,255mm(先代比+56mm)、全幅1,799mm(+13mm)、全高1,452mm(-28mm)となっており、若干のワイド&ロー化を果たしています。また、ホイールベースも2,637mm(+59mm)に延長され、主に後席と荷室のスペースが拡大しています。注目すべきは車両重量で、明らかにサイズアップしたにも係わらず先代比で100kg近くも軽量化されています。これは事前に発表されていた新型アウディ・A3のスペックからも予測できたことではありますが、改めてVWグループの技術力というか、基本性能の向上に対する執念に驚かされます。
新型では安全装備の充実も図られており、衝突や追突の後でブレーキを自動的に作動させる「マルチコリジョン・ブレーキ」、「ACCアダプティブ・クルーズコントロール」、レーダーを使った前方危険感知システムである「フロント・アシスト」、車線から逸脱しそうになるとステアリングを修正してくれるレーン・アシスト、駐車時にセンサーで障害物を感知し車両の周囲360度をモニターに映し出すパーキング・システム、さらには交通標識認識システムなど、様々なデバイスが選べるようになっています。しかも、今まではGTI のみに装備されていたXDS(電子制御式ディファレンシャルロック、という名の内輪強制ブレーキシステム)が、新型では全グレードに搭載されるそうで、走行性能の底上げにも余念がありません。
搭載されるエンジンの種類に関しては、私自身200ps以下の物に興味がないので、ここでは省略させていただきます。ただ、唯一目を惹かれたのが2.0 ℓ のTDI で、最大出力150ps、最大トルク32.6kgm(1,750〜3,000rpm)、燃費24.3km/ℓ というスペックは、「速さはいらないけど余裕は欲しい」という贅沢な街乗り派や、もしくは高速道路を多用するロングツーリング派にピッタリではないかと思います。国産車・輸入車に係わらず、消費者の選択肢を増やすという意味でディーゼルモデルの増加は歓迎すべきことですし、VGJ には国内導入に本気で取り組んでほしいところです。
エクステリアのデザインについては、かつてのゴルフIV と同様に、大量生産の実用車として満点に近い完成度を具えていると言えます。最近のVW らしく直線を基調としていますが、垂直水平に近い線が多いポロやパサートに比べ、新型ゴルフは斜線の組み合わせが多いため、よりシャープでスポーティに見えます。個人的な意見を挙げるなら、テールランプの内側を鋭角風にしたのは失敗でしょう。元来塊感の強いリヤセクションの中に尖った形のテールランプを配置することで、少しでも軽快感をアップさせたいというデザイナーの狙いはわかるのですが、実用車の鑑たるべきゴルフに求められるのは安定感や質実剛健さであり、そこだけは水平に近いラインで纏めた方がスッキリして良かったのではないかと思います。インテリアに関してはセンターコンソールがドライバーの方に向いているなど、実用性を損なわない範囲で個性が与えられていて良い感じです。特にシルバーのパネルを装着しているタイプは室内の雰囲気がパサートに似ていて、一クラス上の高級感を醸し出しています。はっきり言って、「これじゃアウディ・A3は必要ないな」というのが私の本音であり、クワトロ以外のモデルは現時点ですでに検討対象外となってしまいました。今はそれよりも、次期GTI がどういうデザインになるのか、ということの方に興味がありますね。
以上のように、新型ゴルフに対してかなり好意的な私ですが、どうしても気になる点が一つだけあります。それは、トレッドの拡大(フロントが+8mmで1549mm、リアが+6mmで1520mm)によって、コーナリング時のスタビリティが改善されたか否か、ということです。数年前にオーバーフェンダーを付けたゴルフVI のテスト車両がスクープされて以来、新型のトレッドが拡大されることは公然の秘密とされていましたし、私としてはシロッコのようにリヤの方がワイドになることまで期待していました。しかし、実際は全体的に一回り大きくなっただけで、挙動に変化をもたらすような要素は見当たりません。ホイールベースが延長されたことで高速時の直進安定性が増したことは想像に容易いので、あとはそれが旋回時にも好影響を及ぼしていることを祈るばかりです。
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Posted at
2012/09/14 20:23:36
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