■BMW Z4 sDrive35i (LM30)
デビューした頃からBMW335iには興味をもっていた。
3リッター直6ツインターボのエンジンが、やたらと評判良かったからだ。
BMWディーラーの営業さんから電話がかかってきて(
昨年のM3試乗から一年も経って、電話営業があるということは、BMWも困ってる??)、
「何か興味のあるモデルはございますか?」
と訊かれたので、
「335iの直6ツインターボには以前から。」
と答えたところ、335iはないけど同じエンジンのZ4があるから是非乗りに来てください・・・と数回お電話を頂いた(ありがとうございます)。
E90 3シリーズは幾度も320iを運転したことがあるので、335iの試乗よりもZ4の試乗は願ったり叶ったりである。
●エクステリア
Z4のデザインはモデルチェンジ前から好きである。
古典的なロングノーズのFRスポーツカーのデザインなのだが、クラシカルなシルエットに、バングル特有のキャラクターライン、エッジ・面構成でモダンなテイストを違和感なくブレンドされていて、秀逸だと思う。
ジャガーが懐古趣味から脱却し、元気だったらこういうデザインをしていたのではないか?と思わせる(最近解雇趣味から脱却しつつあるジャガーは、予想とは違う方向性へと進んでいるが・・・)
年齢・キャラ的に自分で乗りたいクルマのデザインではないが、親父が乗ってたら嬉しいデザインなので、親父のクルマ買い替え時には結構薦めたのだが、ゴルフバッグ2個がラクに乗らないという理由で却下された(結果として
先代TTクーペに落ち着いたので万々歳であるが)。
モデルチェンジ前のZ4はロードスターよりも、クーペモデルが特に好きで、黒のZ4 Mクーペなどとストリートで遭遇すると、斜め後ろから見て惚れ惚れしてしまう。
モデルチェンジしたZ4は、全体フォルムはキープコンセプトだが、ディテールは、よりクラシカルでコンサバティブになった。
悪く言えば「オッサンくさい」「ジジくさい」方向へとシフトしたワケだが、このクルマの狙ってるところ、オーナー層には非常にマッチしていると思うし、写真で見るよりも実物は美しく、これはこれでステキだと思う。
※ちなみに、2009.02にクリス・バングルは引退して、ホーイドンクがデザインの指揮権を引き継いでいる。Z4はホワイト☆フロッグさんにコメント頂いたように、Juliane Blasiという女性デザイナーの担当だとのこと。
写真のように試乗車は白だった。
白のBMWは好きなのだが、Z4に限っては、白よりも黒や暗めのシルバーなどの方が似合うと思う。
でも、白も満更でもなかった。
●インテリア
基本的にBMWのインテリアはAudi、メルセデスと較べるとかなり品質が低く、ガッカリするものなのだが、もう慣れたのか、今回は特にガッカリしなかった。
ガッカリもしなかったが、Audi、メルセデスのように素材感に感動するようなことは決してなかった。
ウッド内装は趣味じゃないけど、Z4には合ってた。
●走り出してみて
オープンにして試乗した。
窓の大きさや角度が原因だと思うが、結構狭く感じ、オープンにしていてもあまり開放感や気持ちよさは残念ながらなかった。
どうも開けて走ってる感が薄い。。。
あと、オープンカーの試乗に同乗させる営業さんは、かわいいオネーチャンに限ると思う。
以前、LEXUS SC430に試乗した際は、素朴で可愛らしい女の子が助手席だったのだが、SC430の不出来さなんてどーでも良くなるぐらい、オープンでの運転が楽しく、親父に購入を薦める気にさせた(これもゴルフバックの積載事情で没となった)。
今回の同乗は、新人の男の営業さんなので、良くも悪くもクルマに集中できた。
●パワートレイン
さて、注目の3リッター直6ツインターボエンジン、N54B30A。
圧縮比:10.2(!)
最高出力:306[ps]/5800[rpm]
最大トルク:40.8[kgm]/1300~5000[rpm](!)
直噴、バルブトロニックなど、最近ホットな技術がテンコ盛りである。
とにかくリニアなフィーリング。フラットトルクである。
そして、フリクションレスで、とことんキレイに回る。
エンジン音は全くの無音だが、排気音は雑味・倍音のない、澄み切った音が美しく鳴る。
なるほど、これはいろいろ受賞したり、あちこちで絶賛されるワケだ。
ターボであることを全く感じさせず、ベタ踏みすれば従順に応えてくれる。
精度の高いエンジンであることは疑いようもないのだが、E92 M3や、二代目Audi TTのように「高精度感」を前に出した演出ではない。その方がBMWっぽいとも思えるし、Z4のキャラには合っているようにも思う。
方向性としては、
先日試乗したPorsche 911 (997) Carrera Sの3.8Lフラット6に通ずるものがあるが、加速時の絶対的なスピードは当たり前ながらカレラSに劣るし、排気量の差からカレラSよりも線は細い。
カレラSと較べるのはクラス的に酷であるので、
新型レガシィ(BR9)の2.5Lターボモデルと比較してみると・・・・・
・・・その差は歴然。
水平対向も直6と同じように、理論上は回転依存の振動の出ないエンジンレイアウトなのだが、スバルの水平対向には悪い意味での雑味が存在し(それでも、そこいらの直4よりは遥かにキレイに回ると思うが)、Z4の澄み切った回転フィールと較べると安っぽい。
過給は、BL・BPレガシィのときからレガシィのEJはインプレッサとは異なり、BMWのN54B30Aとほぼ同じ思想で、小さいタービンで低回転域からトルクを稼ぐ思想。
先代・現行レガシィは、ターボエンジンにしては極めて高い9.5という圧縮比(GDBインプレッサなどは同じEJ20でも圧縮比8.0)。これもBMWのN54B30Aと同じ思想だが、N54B30Aは更に高い10.2というNAエンジンのような圧縮比だ。
N54B30Aは直噴によりノッキングマージンを稼げているのが大きな理由だと思う。
本ブログでも以前からたびたび、スバルのEJエンジンに残された可能性として直噴化を提唱してきたが、いつまで経ってもEJには直噴化されず、結果として新型レガシィ(BM・BR)の2.5ターボはN54B30Aと較べて、冴えないエンジンとなっていると思う。
思想は良く似た335i・Z4のターボエンジンと、レガシィのターボエンジンだが、出来はBMWの方が上だと感じた。
自分のB4と較べてみると、Z4の方がキレイにフラットに回るし、排気量ゆえに線も太いが、吹け上がり感、爽快感、痛快感、加速時のカタルシスなどは私のB4の方がイケてると感じた。
エンジンの違いもあるが、Z4が重たい(1600[kg])のも影響しているのだろう。
私のB4は時間をかけて自分好みにセッティングしてきているので、比較はもはや無意味だねえ。
●ドライブトレイン
7速DCT。
シングルクラッチのロボタイズドMTにはAlfaのセレスピードや、シトロエンのセンソドライブ。デュアルクラッチトランスミッション(DCT)には、VWのDSG、AudiのSトロニック、ポルシェのPDK、ランエボのツインクラッチSSTなど、多くを体験したが、ようやくBMWのツインクラッチの試乗機会を得た。
営業さん曰く、M3のM-DCTと、Z4の7速DCTではかなり味付けが違うらしく、そのあたりは残念だ。
で、Z4の7速DCT。
ポルシェのPDKのときと同じように、もはや評価をするだけの特徴を感じられないぐらい良く出来ていて、フツーだった。
パドルでのシフトアップ、シフトダウンとも当たり前すぎるほどシフトショックがなく、クラッチミート感がないのが逆に物足りないぐらい。
ちなみに、写真で見るよりも、ブレーキペダルが右に寄っており、せっかくの2ペダルMTなのに左足ブレーキが少しし難いのが好ましくなかった。
●ステアリングなど
直線主体の試乗コースなので、FRのなんたるかなどは一切わからなかった。
パワステがかなり重めで、車速感応っぽさがないのがBMWらしくてステキだった。
BMWらしく、シッカリとした剛性感を感じるし、サスペンションもガシッとしているけどハーシュネスは少なく、必要十分なインフォメーションがあるのが流石だなあ・・・と。
●総評
とても良く出来たクルマだと思った。
軽いクルマじゃないし、スポーツカーではないと思う。
死語だがスペシャリティーカーというヤツか。
でも決して走りをいい加減にしていないので、これをベースにいろいろイジったら、楽しいクルマになりそうな気もする。
スポーツカーとしてどうかを置いておくと、本当に良く出来たクルマなので、お金持ちのセカンドカーにはお薦めだと思う。
でも、700万円ぐらいするクルマなので、私個人としてはそれだけの費用があるならケイマンが欲しい。。。
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