マツダに引き続き、ホンダにも行ってフィットシャトルハイブリッドに試乗してみました。
エンジンとモーター
インサイト、
シビックハイブリッド、
フィットハイブリッドでもおなじみ、LDA型SOHC2Vエンジンです。このエンジンの基本となる
L13Aエンジンは、ジリジリザラザラと決して良いフィーリングではありませんが、ハイブリッド化によってエンジンの負荷が減ると、そのジリジリザラザラ音が聞こえなくなり、実用エンジンとして悪くない印象となります。
低速走行時に積極的にモーターがアシストを行うため、発進加速は1800ccエンジン+トルコンAT並みの加速と余裕があります。この点が直前に乗ったデミオとの違いで、デミオはあくまでも普通の1300ccエンジン車、こちらは余裕あふれる走行が可能な車となります。
低速の好印象の一方で、中回転域からはモーターのアシスト力が相対的にも絶対的にも低下するため、パワー感は並みの1300ccになります。ここが好みの分かれるところで、低回転時よりも高回転時の方がパワーがあると、運転している人はエンジンに期待感を持つためか、「のびやか」と思うようになります。反対に、低回転時の方が高回転時より力があると、「つまった」印象をもちます。人間とは、勝手なものです。
同じことは「人間」にも当てはまります。普段は悪ぶった行動をしている人が横断歩道でお年寄りの手を引くと「実は良い人」、普段はまじめで誠実な人がのぞきや痴漢をすると、それだけで「極悪?人」呼ばわりされます。(元ネタはまんが「じみへん」)ほとんど多くの時間よりも、ほんの一瞬で人を決めてしまう癖があるのが人間です。
話がずれました。
このLDA+モーターは、街中を余裕たっぷりに走ることが可能で、実用エンジンとして実に適切な出力特性となっています。その一方で、回転を上げて楽しむような走りには全く不向きです。
アイドルストップはもちろん付いています。時速15km以上で走れた場合は毎回、時速15kmも出せなかった場合ははじめの1回のみアイドルストップします。時速15kmは結構速いため、渋滞路ではアイドルストップが働かないこともあります。エンジン自体には特別な機構を設けていない上、緻密にすべりを働かせないとジャダが発生する多板クラッチとの組合せゆえか、停車するときも発車するときもパワートレーンが「ブルッ」と振動します。
他社のアイドルストップ機能が工夫を凝らしているためか、若干不自然な印象があります。特に発車時はモーターのトルクが強いため、後ろから押されたかのような急発進になることがあります。独自開発のCVTは、新発売当時としてはすばらしかったかもしれませんが、油圧電動ポンプ+トルコン方式の方に滑らかさで軍配が上がります。もっとも、停車直前までロックアップ状態が維持できる利点も捨てがたいですがね。
トランスミッション
ホンダのハイブリッドは、マルチマチック1期(多板クラッチ+ベルト)で成り立っていますので、基準車がトルクコンバーター+ベルトになった今もこの方式でいます。上記に書いたとおり、発車時と停車時に若干難はありますが、変速制御自体は自然なものです。モーターの特性を生かすためか、再加速時などに無用に低い変速比にすることがありません。
しかしながら、インフォメーションディスプレイにフルードの交換時期を警報してまで使い続けるのは、ちょっと機械としての完成度に疑問を感じます。
ステアリング
キビキビ感を演出したいためなのか、操舵角度が小さい領域で、若干鋭すぎるような印象があります。
前期デミオでもそうだったのですが、この演出が行き過ぎると長時間運転時に疲れを感じます。後述するサスペンションが若干ソフトであるため、微笑舵角時に意に反して急ハンドルとなり、車両がグラッと傾くような印象となってしまいます。
サスペンション
フィットハイブリッドと同様の、しなやかでフラットな乗り心地です。基準車フィットは全く誉められませんが、ハイブリッドシリーズの乗り心地はよいですね。車両重量も増しているためか、若干ながら重厚さも感じます。タイヤは特に性能が高いタイヤではないのですが、高い安定性を感じます。基準車フィットどころか、上級車
アコードにも近い安定性を感じられます。
ブレーキ
ホンダはトヨタのように、回生ブレーキ連動の遅れ込め制御付き電子制御を行いません。そのため「回生ブレーキを十分に利かせられない」と言う評論家がいますが、この方式のほうがシンプルで交換が持てます。整備性も良く、故障時も安価に修理が可能です。
この車のブレーキ自体の印象ですが、デミオ同様、オーバーサーボの印象もなく、踏力に応じたブレーキの効き調整が可能です。ブレーキペダルもやや重く、過剰なブレーキ操作を防いでいる印象があります。
ボデー
基本はフィットで、フィットのボデーは誉められませんでした。しかし、ハイブリッド化による重量増かボデー強化かサスペンションソフト化により、ボデー剛性はおおむね十分である印象です。デミオのようなかたまり感は感じませんが、ステーションワゴンに乗っている印象は薄いです。
車体長は20cmほど長くなっているようですが、ちょっとひょろ長い印象があります。まあ、これは好みですから、気にならない人は荷物室が広くなったことだけを歓迎すれば良いと思います。
荷物室として使える体積はフィットシャトルと同様です。トレイの一部がなくなるだけで、テールゲートを開けて出てくる体積は同様です。この点もますます普通のフィットシャトルを選ぶ理由を無くしています。
シート地がフィット系列とは異なり、合成皮革を使っています。フィットはジャージでしたが、合成皮革を使っていると、がぜん高級感が出てきますね。ジャージは手触りはさらさらしていてよいのですが、生地としてのしっかり感がないため、なおさら合成皮革のよさが際立ちます。
メーターは、フィットハイブリッドで見られたような、LEDのギラギラ感が抑えられています。ここのところLEDが好んで採用されていますが、この抑えが効いたメーターは新鮮です。時計にもアナログ式が残っているのですから、車のメーターも「画面化」することは来ないのではないでしょうか。
まとめ
基準車フィットより、車としてはるかに良い仕上がりですが、価格が200万円台半ばになってしまうのはどうでしょうか。あと50万円も出せば、ミドルクラスの車が買えます。これはほか弁屋で幕の内弁当やうなぎ弁当を買う行為ではないでしょうか。
フィットシャトルとフィットシャトルハイブリッドの価格差がほとんどないことも気になります。売れ行きはハイブリッド中心なので、ホンダとしてはフィットシャトルは保険なのでしょう。でしたらぜひ、RSを作ってください。
また、基準車フィットをもっと改善でき余地があるのではないかとも感じます。それほどハイブリッドやシャトルハイブリッドの乗り心地はよいです。
そんなわけで、フィットハイブリッドやフィットシャトルハイブリッドのよさを兼ね備えたRS、または、MTのフィットハイブリッドやフィットシャトルハイブリッドの登場を待っています。ホンダの「はずし」は、そういう車をラインナップしていたことにあったと思うのですがねえ~。
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試乗 | クルマ
Posted at
2011/07/22 23:52:53