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2016年11月10日 イイね!

ネドラをそっとベッドへ


「そうかもしれないわね」セ?ネドラはすわっていた椅子から立ちあがって、言った。「ゲランをゆりかごにねかせて、ベッドにはいるわ。ぐっすり眠れば、よくなるでしょう」
「ぼくがゲランを寝かせるよ」
「だめよ」彼女は奇妙な顔つきで言った。「この子がゆりかごの中で安全でいることを、わたしが確認したいの」
「安全?」ガリオンは笑いだした。「セ?ネドラ、ここはリヴァなんだぞ。世界中で一番安全な場所じゃないか」
「アレルにそう言いに行ったらいかが」セ?ネドラはそう言うと、寝室のとなりの、ゲランのゆりかごのある部屋へはいっていった。
 ガリオンはその夜遅くまで読み物をしていた。セ?ネドラの落ち着きのない気分が感染でもしたのか、なかなかベッドに行く気にならなかった。ようやくかれは本をおしやると、窓に近づいてはるか下方で月に照らされている〈風の海〉の水面をながめた。青白い光の中で、長いゆるやかな波が溶けた銀のように見え、ゆったりと打ち寄せるリズムが妙に眠りを誘った。ついにガリオンは蝋燭を吹き消すと、足音をしのばせて寝室にはいった。
 セ?ネドラはしきりに寝返りをうっては、意味のない会話の断片をつぶやいていた。ガリオンは服をぬいで、彼女の邪魔にならないようにベッドにすべりこんだ。
「だめよ」セ?ネドラは断固たる口調で言った。「あなたにそういうことはさせないわ」それから彼女はうめき声をあげ、枕の上で頭をふり動かした。
 ガリオンはやわらかな闇の中に横たわって、妻の寝ごとに耳をすました。
「ガリオン!」セ?ネドラはあえぐような声をあげて、ふいに目をさました。「あなたの足、冷たいわ!」
「あ、ごめん」
 彼女はすぐにまた眠りへ戻っていき、ふたたびつぶやきはじめた。

 数時間後、ガリオンを起こしたのは妻とはちがう声だった。どことなく聞き覚えのある声で、ガリオンはなかば眠ったまま、前にそれを聞いた場所を思いだそうとした。耳に心地よい低い女性の声が、なだめるような口調でしゃべっている。
 次の瞬間、ガリオンはセ?ネドラがかたわらに寝ていないことに突然気づいて、がばとはねおきた。
「でも、かれらにこの子が見つからないように隠さなくちゃ」セ?ネドラが奇妙にぼんやりした声で言うのが聞こえた。ガリオンはふとんをはねのけて、ベッドからすべりでた。
 子ども部屋の開け放たれたドアからかすかな明かりがもれて、声はそこから聞こえてくるようだった。ガリオンは素足のまま音もたてずに絨緞を踏んで、すばやくそのドアに近づいた。
「赤ちゃんの毛布をとりなさい、セ?ネドラ」もうひとりの女がおだやかな説得力のある声で言っている。「息ができなくなってしまうわ」
 ガリオンは子ども部屋をのぞきこんだ。セ?ネドラが白いねまき姿でゆりかごのわきに立っていた。その目はうつろでなにかをじっと見ている。その横にもうひとりの人影があった。ゆりかごのあしもとにある椅子の上に、毛布と枕が山のように置かれていた。リヴァの王妃は夢でも見ているように、機械的にその毛布を赤ん坊の上にかぶせていた。
「セ?ネドラ」女が言った。「やめなさい。わたしの言うことを聞くのよ」
「この子を隠さなくちゃ」セ?ネドラは頑固に答えた。「かれらがこの子を殺したがっているのよ」
「セ?ネドラ。あなた赤ちゃんを窒息させてしまうわよ。さあ、その毛布と枕を全部とりなさい」
「だけど――」
「言われたとおりになさい、セ?ネドラ」女はきっぱりと言った。「さあ」
 セ?ネドラはめそめそしながら、ゆりかごの毛布をとりのぞきはじめた。
「そのほうがいいわ。さあ、聞いてちょうだい。かれがこういうことをあなたに言ったら、かれを無視しなくちゃいけないわ。かれはあなたの友だちではないのよ」
 セ?ネドラの顔に困惑がうかんだ。「ちがうの?」
「かれはあなたの敵なのよ。ゲランを傷つけたいと思っている人物がかれなのよ」
「わたしの赤ちゃんは?」
「あなたの赤ちゃんは元気よ、セ?ネドラ、でも夜になってこの声が聞こえてきたら、あなたはそれと戦わなくちゃいけないわ」
「だれだ――」ガリオンは言いかけたが、そのとき女がこちらを向いたので、びっくりぎょうてんしてあんぐり口をあけた。黄褐色の髪にあたたかい金色の目。土色に近い簡素な茶色の服。ガリオンは彼女を知っていた。ベルガラスやシルクと一緒にクトル?ミシュラクの幽霊の出そうな廃墟でのおそるべき対決へ向かっていたとき、東部ドラスニアの湿地で、一度だけ会ったことがあった。
 ポルおばさんの母親は娘に酷似していた。あの同じ静かな、非のうちどころのない美しい顔、あの同じ誇り高い、毅然とした頭の動かしかた。しかしこの時を超えた顔には、尽きることのない奇妙な悔いがにじんでいて、ガリオンののどをつまらせた。「ポレドラ!」ガリオンはあえぐように言った。「どうして――」
 ポルおばさんの母親はひとさし指を口にあてた。「セ?ネドラをおこさないで、ベルガリオン。ベッドに連れて帰りましょう」
「ゲランは?」
「大丈夫。間一髪でまにあったわ。セ?連れていってちょうだい。もう何事もないから、よく眠るでしょう」
 ガリオンは妻のそばへ行って、肩に手をかけた。「さあ、おいで、セ?ネドラ」やさしく話しかけた。
 セ?ネドラはうつろな目つきのままこっくりうなずくと、おとなしく寝室に戻った。
「そのふとんをめくってもらえますか?」ガリオンは小声でポレドラにたずねた。
 ポレドラは笑った。「あいにくだけど、できないわ。わたしが本当はここにいないことを忘れてるわよ、ベルガリオン」
「ああ、うっかりしてた。すみません、つい――」ガリオンはふとんをどけて注意深くセ?ネドラをベッドにねかせ、顎の下までふとんをひっぱりあげてやった。セ?ネドラはためいきをもらして、気持ちよさそうに眠りはじめた。
「そっとしておきましょう」ポレドラが言った。
 ガリオンはうなずいて、ポレドラについてとなりの部屋へ行った。消えかけた暖炉のもえさしが部屋をぼんやりと照らしていた。「どういうことだったんですか?」ガリオンはそっとドアをしめながらたずねた。
「あなたたちの息子を憎み恐れている何者かがいるのよ、ベルガリオン」ポレドラは沈んだ声で言った。
「ほんの赤ん坊なんですよ」
Posted at 2016/11/10 12:39:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2016年08月31日 イイね!

戦争へ行かなかっ



 トルネドラ大使、ブラドー伯爵はさぞかしうんざりしているに違いないわ、とライラ王妃はひとりごちた。小柄な太った王妃は、書類で膨れあがったかばんを抱えた大使を待たせて謁見用の部屋に、決然とした足取りで向かっていた。冠をかすかにかしがせ、磨きあげられた樫の木の床にSCOTT 咖啡機評測こつこつ足音を響かせる王妃の姿に、廷臣たちはいっせいに頭を下げたが、彼女はすべて無視した。もはや上品な挨拶や、むだ話をしている場合ではなかった。なんとかこのトルネドラ人との問題を処理しなければならなかった。しかもこれまで彼女はずっとそれを引きのばしてきたのだ。
 オリーブ色の肌の持ち主である大使は、わし鼻で、頭髪はだいぶ後退しているようだった。金で縁どられたマントがボルーン家との関わりをあらわしていた。ライラ王妃との謁見にあてられたサン?ルームの窓辺に置かれた、クッションのある長椅子に、大使はぐったりともたれていた。王妃の姿を見たとたん、かれは立ちあがり、優雅なしぐさで一礼した。「これは、妃殿下」かれは恭しく声をかけた。
「まあ、ブラドー伯爵」ライラ王妃はできるだけ、当惑げで軽薄そうな表情をとりつくろった。
「おかけになってちょうだい。堅苦しい挨拶は抜きでよろしいわね」彼女は椅子にどしんと腰をおろすと、風を起こすために片手でぱたSCOTT 咖啡機開箱ぱたあおいだ。「暑くなってきましたわね」
「センダリアの夏はじつに快適ですな、妃殿下」伯爵は再び椅子に腰をおろしながら言った。
「ところで、この前お目にかかったときにお渡しした提案をご検討いただけたでしょうか」
 ライラ王妃はけげんな表情で大使を見つめた。「何のご提案でしたかしら、伯爵」王妃は恥ずかしそうにくすくす笑ってみせた。「お許し下さいね。この数日はまったく心ここにあらずといった状態でしたの。こまごましたことがいろいろとありましてね。本当に夫はどうやって処理してい優思明たのかしら」
「わたしどもは、カマール港の管理の件をお話ししていたのです」伯爵は穏やかな声で言った。
「まあ、そうでしたかしら」王妃はまったくわけがわからないといった表情を浮かべてみせたが、瞬間大使の顔をよぎったいらだちに、ひそかな満足をおぼえていた。これが彼女のもっとも得意とする策略だった。毎回、王妃は前に会ったときの話し合いをすっかり忘れてしまったふりをして、伯爵に一からやり直させた。伯爵が一歩一歩話しあいを押しすすめながら最終提案に持ちこもうとしていることを彼女は知っていた。王妃は健忘症をよそおいながら、巧妙に相手の意図をくじいていた。「でも何でまたそんな退屈なお話をしたんでしょうね」
「どうやら、思い出していただけたようですね」伯爵の顔には、わずかな困惑があらわれているだけだった。「わがトルネドラの商船、〈スター?オブ?トル?ホープ〉号は係留場所が見つからないために、もう一週間半も港に錨をおろしたままになっています。荷揚げの遅れによる損害はすでに膨大な額にのぼっております」
「このところ、とても忙しかったのよ」センダリアの王妃はため息をついた。「人手不足なのです。お分かりでしょう。た者たちも、戦地へ物資を運ぶのにたいそう忙しい思いをしているのです。でもこの件についてはさっそく当局にきびしく言うことにいたしましょう。他に何かありましたかしら」
 ブラドーは気まずそうに咳ばらいした。「妃殿下におかれましては、すでにそのような覚え書を送られたはずですが」
「まあ、わたしが?」ライラ王妃はおおげさに驚いてみせた。「何てすばらしいんでしょう。それでは何もかもうまくいったのね。それであなたはお礼を言うためにお立ち寄り下さったのでしょう」王妃は少女のようなほほ笑みを浮かべて言った。「何てご親切な方」そして衝動に駆られたように身を乗り出して、片手で伯爵の手首をにぎりしめ、わざと揺すって羊皮紙の巻物を取り落とさせた。「まあ、わたしったら何て失礼なことを」彼女はそう叫ぶなり、身をかがめ、伯爵が拾いあげるより前に巻物をさらった。それから椅子に座り直すと、まるで物思いにふけっているように、巻物でこつこつと頬を叩く動作をした。
「おそれながら妃殿下、お話が先ほどの当局への覚え書の件からそれたようですが」ブラドーは王妃の手にうつった巻物を不安そうに眺めながら言った。「港の管理にあたって、わがトルネドラがお手伝いを申し出ていた件は、思い出していただけましたでしょうか。おっしゃるような人手不足もこれで解消されるということで、わたしたちは合意に達したものと思っていたのですが」
Posted at 2016/08/31 16:55:37 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2016年03月07日 イイね!

ったのかというと


 スパーホークはサイドボードに歩み寄り、水を一杯グラスに注いだ。口がからからに乾いていた。
 ヴァニオンはいったん部屋の外に出て、すぐにス中醫師パーホークの友人たちを連れて戻ってきた。
「セフレーニアとクリク、それにサー?カルテンはもうご存じでいらっしゃいますな」ヴァニオンは女王と初対面の顔ぶれを順に紹介していったが、タレンの職業については賢明にも言及を避けた。
「お会いできて嬉しく思います、みなさん」エラナが丁重に応えた。「ところで、お話をうかがう前に発表することがあります。ここにいるサー?スパーホークがたった今、わたくしに結婚の申込みをいたしました。すばらしいことだとお思いになりません?」
 グラスを口に当てて水を飲んでいたスパーホークは、むせて咳が止まらなくなった。
「あら、どうかなさったの、あなた」エラナが無邪気に尋ねる。
 騎士はうめくような声を上げ、喉を指差した。
 ようやくスパーホークがいくらか落ち着いて、ふた避孕方法たび息ができるようになると、レンダ伯が女王を見つめた。
「それで陛下は、擁護者殿の求婚を承諾なさったのでしょうか」
「もちろんです。ちょうど承諾していたときに、あなたがたが入ってきたのです」
「ああ、なるほど」老練な政治家であるレンダは、にこりともせずにこういう返答をすることができる。
「おめでとうございます」クリクがぶっきらぼうに言ってスパーホークの手をがっちりと握りしめ、激しく上下に振った。
 カルテンはエラナを見つめている。
「スパーホークが?」信じられないと言いたげな声だ。
「いちばんの親友がそのすばらしさに気づかないなんて、不思議なものですわね、あなた」エラナはスパーホークからカルテンに向き直った。「サー?カルテン、あなたの幼馴染《おさななじみ》は世界最高の騎士で避孕 藥 副作用すよ。その人に求婚されて光栄に思わない女がいるでしょうか」満足そうな笑みを浮かべ、「そしてその人を手に入れたのは、このわたくしです。ではみなさん、どうぞお掛けになってください。わたくしが病に倒れていたあいだにこの国で何があったのか、聞かせていただきましょう。ただ、くれぐれも長くならないようにお願いしますね。婚約者とこれからのことをいろいろ相談しなくてはなりませんから」
 ヴァニオンは立ったまま、周囲の人々を見まわした。
「もし何か大事なことを言い忘れたら、遠慮なくその場で指摘してくれ」そう言って天井を見上げ、「どこから始めたものかな」
「わたくしの重病の原因が何だころからお願いできますか、ヴァニオン卿」エラナが提案した。
「陛下は毒を盛られたのです」
「何ですって!」
「レンドー産の、たいへん珍しい毒物です――父上を殺したのも同じ毒でした」
「犯人は誰です」
「父上のときは妹御でした。陛下の場合はアニアス司教です。アニアスがカレロスの総大司教の座を狙っていたことは、陛下もご存じでいらっしゃいましたな」
「もちろんです。あらゆる手をつくして妨害していました。あの男が総大司教の座につくようなことがあれば、わたくしはエシャンド派に改宗します。あるいはいっそスティリクムの神の信者にでも。あなたの神様はわたくしを受け入れてくださるかしら、セフレーニア」
「女神です、陛下」セフレーニアが訂正した。「わたしは女神にお仕えしています」
「とても現実的な回答ね。髪を切ったり、エレネ人の子供を二、三人、犠牲《いけにえ》として捧げなければならないのかしら」
「ばかなことを、エラナ」
Posted at 2016/03/07 15:41:09 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2016年03月01日 イイね!

いずれも質素な青いス


「まだ尾けてきてるよ、スパーホーク。しかも数が糖尿上眼ずいぶん増えてる。街のすぐ南の丘の上に、少なくとも四十人はいたと思うんだ。今度は馬に乗ってる。丘の上から様子をうかがって、今は森の中に隠れてるよ」
「四人に比べると問題が大きいな」とアラス。
「まったくだ。何かいい知恵はありませんか、セフレーニア」スパーホークが教母に尋ねる。
 セフレーニアは眉をひそめた。
「こちらはそれほど道を急ぎはしませんでした。馬に乗っているのなら楽に追いつけたはずです。どうやらただ尾行しているだけらしいですね。アザシュはわたしたちの知らないことを何か知っているyou beauty 美容中心好唔好のでしょう。何ヵ月もスパーホークを殺そうとしていたのに、ここへきて尾行だけを命じているのですからね」
「敵が作戦を変更した理由はわかりませんか」
「いくつか思い当たることはありますが、いずれも推測の域を出ません」
「街を出るときは気をつけたほうがいいな」カルテンが言った。
「それだけじゃない」とティニアン。「こっちが街道の人気《ひとけ》のないあたりに差しかかるまで時間をつぶして、待ち伏せの準備をしてるのかもしれない」
「なかなか楽しい話だ」カルテンが不機嫌に言った。「さて、みんなはどうか知らんが、おれはそろそろ寝ることにするよ」
 翌朝も空は晴れわたり、湖からは気持ちのいい風が吹いていた。スパーホークは鎖帷子《くさりかたびら》と目立たない短衣《チュニック》を着て、羊毛の脛《すね》当てをつけた。それからセフレーニアと二人で宿を発ち、北門からバレルの街を出て、バードという名前の皮なめし職人HKUE 好唔好のもとへ向かった。通りを歩いているのは、ほとんどがさまざまな道具を持った職人たちだった。モックを着て、先の尖った帽子をかぶっている。
「あの格好がどんなにばかげて見えるか、気がつかないんですかね」スパーホークがつぶやいた。
「何のことを言っているのです」とセフレーニア。
「あの帽子ですよ。できの悪い生徒にかぶせる低能帽みたいだ」
「シミュラの廷臣がかぶっている羽根飾りのついた帽子よりはましだと思いますけど」
「そういえばそうですね」
 皮なめし場は北門からかなりの距離にあり、すさまじいにおいがした。セフレーニアは鼻に皺《しわ》を寄せた。
「気持ちのいい朝が台なしですね」
「できるだけ手短にすませますよ」
 その職人は固太りで頭の禿《は》げ上がった男で、点々と褐色の染みのついた帆布の前掛けをしていた。スパーホークとセフレーニアが庭に入っていったときは、柄の長い柄杓《ひしゃく》で大きな桶《おけ》をかき回しているところだった。
「今すぐ行きますから」その声は石板の上に石を転がしたようなどら声だった。男はさらに一、二度かき回してから厳しい目で樽《たる》の中を見つめ、柄杓を脇に置いて、前掛けで手をふきながら二人のほうへやってきた。「何のご用でしょう」
 スパーホークは馬を下り、セフレーニアが白い乗用馬から下りるのに手を貸した。
Posted at 2016/03/01 12:16:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2016年02月22日 イイね!

温かいとは言えない

 アルストロム男爵の城は、川の東岸の崖の上に建っていた。崖はカダクの街の上流数リーグのところに、本流を見下ろすように張り出している。城は醜く荒涼とした風情《ふぜい》で、どんよりした空の下に蟇蛙《ひきがえる》のようにうずくまっていた。城壁は厚く高く、城主のかたくなな傲慢《ごうまん》さを反映して改變自己いるようだった。
「これが難攻不落?」ラモーク人の戦士が城門に通じる短い土手道に入ると、ばかにするようにベヴィエがつぶやいた。「こんな城壁、二年とかけずに攻め落としてみせますよ。アーシウムの貴族は、こんなひ弱な城ではとても安心して暮らせないでしょう」
「アーシウムでは城造りに時間をかけられるからな」スパーホークは白いケープの騎士に答えた。「アーシウムで戦争を始めるには、ラモーカンドよりも時間がかかる。この国では五分もあれば戦争が始まって、しかもそれが何世代も続くんだ」
「そうですね」ベヴィエはうなずいて、弱々しい笑みを浮かべた。「若いころに軍事史の研究をしたことがあるのです。ラモー洗衣機カンドについて述べた本を読んだときには、まったくのお手上げでした。この不幸な国の上っ面のすぐ下にある同盟と裏切りと血の反目をすべて理解するなど、まともな人間にできることではありません」
 跳ね橋が音を立てて下ろされ、一行はがたがたと橋を渡ると城の中庭に入った。ラモーク人の戦士は馬を下りた。
「よろしかったら、ただちにアルストロム男爵とオーツェル大司教|猊下《げいか》のところへご案内したい。時が迫っているのだ。ゲーリック伯爵の軍勢が城を包囲する前に、猊下を無事に外へ送り出したいのでな」
「先導してくれ」スパーホークはファランの背から滑り下りた。槍を厩の壁に立てかけ、銀の象嵌《ぞうがん》をした黒い盾を鞍に掛けて、手綱を厩番に手渡す。
 一同は幅広い石の階段を上り、両開きの巨大なドアをくぐった。その先には松明《たいまつ》に照らされた廊下中醫婦科が伸びている。壁に使われている石も巨大なものだった。
「厩番に教えてやらなかったな」黒いケープを足首にまとわりつかせながら追いついてきたカルテンがスパーホークに言った。
「何をだ」
「おまえの馬の癖だよ」
「忘れてた。でも今ごろはもうわかってるだろう」
「たぶんな」
 ラモーク人の戦士が一行を案内したのは、飾り気のない部屋だった。いろいろな点から見て、居室というよりも武器庫といったほうが近い。壁には剣や斧《おの》が掛けられ、部屋の隅には十何本かまとめて槍が立てかけてある。アーチ形の大きな暖炉には火が焚《た》かれ、数えるばかりしかない椅子はどっしりとした、クッションのないものだった。床は石がむき出しで、狼犬が何匹かそこここで居眠りをしていた。
 アルストロム男爵は暗い顔をした陰鬱そうな人物だった。黒い髪と髭には白いものが混じりはじめている。鎧《よろい》を着て、腰には大剣《ブロードソード》を吊《つ》っている。外衣は黒で、鮮やかな赤の刺繍《ししゅう》が施してあった。豚顔の鉄兜《てつかぶと》をかぶった戦士と同じような、頑丈そうなブーツをはいている。
 先導してきた男が四角張って頭を下げた。
「幸運をもちまして、城壁から一リーグと行かないうちに、こちらの聖騎士の方々と出会うことができましてございます。喜んで同行してくださいました」
「ほかにどうしようがあった?」カルテンがつぶやく。
 鎧と剣を身につけた男爵は、ぎこちない動きで椅子から立ち上がった。
「挨拶を、騎士殿」あまり声だ。「サー・エンマンが城の近くで卿《けい》らに出会うことができたのは、まさしく幸運だった。わが敵の軍勢は今しもこの城を包囲しようとしている。その前に兄を無事に落ち延びさせねばならんのだ」
「はい、閣下」スパーホークは黒い兜を取り、去っていく鎖帷子《くさりかたびら》の戦士を見やった。「サー・エンマンから事情はうかがいました。しかし兄君は、閣下の部隊に警護させたほうがよろしかったのではありませんか。敵に包囲される前にわれわれがここへ来たのは、まったくの偶然です」
 アルストロムは首を横に振った。
「ゲーリック伯爵の軍勢は、わたしの手の者と見れば即座に攻撃を仕掛けるだろう。聖騎士に守られてこそ兄も無事に脱出できるのだ、サー――?」
「スパーホークです」
Posted at 2016/02/22 13:02:16 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「ネドラをそっとベッドへ http://cvw.jp/b/2449088/38831916/
何シテル?   11/10 12:39
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