「なんでまたあの車??」
二年前の6月、ロードスターに乗り始めてから、あちこちで投げ掛けられた言葉です。
「ねぇねぇ、あのふっるいカローラ乗ってた人、ついに乗り替えたらしいヨ」
こちらもあちらも、お互い名前も知らない筈だが、一部で噂にも成ってはいたらしい。
あまりの趣の違いに、話のネタ的には“アリ”だったんだと思われます。
自分をまぁ知っているであろう人からも、事ある毎に受けた質問でもありました。
「…前から乗りたかったんだ」
手っ取り早く答えるならコレになる。
だが実際にはもう少し説明が要る。
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遡りは大学時代、時代ならFF化と燃料供給方法が(まだ大勢を占めてはいたが)キャブから燃料噴射に進みつつある頃。
そして色んな思いやスペックの車が群雄割拠していた時だ。
友達に家が車屋を営んでいるのが居た。
他メーカーとは毛色の異なる、独自色豊かな会社、その名はHONDA。
そして、自分の“今”に繋がるラインを描き始めたのは、そのまた異端児な車である。
それは“知ってはいたが、さほど興味が有った訳でも無い”存在だった。
その友達から「帰るなら乗せてくぞ」と声が掛かった。自分は電車通学だったが彼はこの時 既に車で通っていたのだ。
この時はまだ何に乗ってきていたかを知らず、駐車場まで一緒に歩いて行ったのだった。
そこで見たのがCITY カブリオレだった。
(画像は拾い物です)
もう何色のボディだったかすら、全く憶えていない。
でも、地元までの1時間半強(勿論、助手席だが)のオープンの初体験は衝撃的ですらあった。
当時国産ではほぼ死滅していたオープンモデル。道行く人の視線の集まり具合と言ったら物凄いガン見状態、最高に目立つ。
ソレも凄いが、車に乗って移動しているというだけなのに、自分の頭の周りがスカンスカンで空気が流れているという、この異質な空間が何とも気持ち良い。
この時点で既にオープン依存症の初期症状が出ていたのだ。
彼の車はあの悪名高きホンダマチック。☆レンジ入れっ放しでは超遅いが、そんな事なぞどーでも良くなる位の快感をこの時に体験してしまったのだ。
#以降、色々な頭上がガッパリ開く車に乗る機会が有ったが、あんなアッパッパーを体験してしまうと、プジョーの206CCなんてのは開いてないも同然(;^^A オーナーさんごめんなさい。この点に関してはNDロードスターもさほど褒められたモノではないですがね。
だが、当時の自分は何故か実用的セダン好き。しかも折れ線クッキリ系のSV10系カムリを親父に強力にプッシュして、結果買わせてしまった程。
(画像は拾い物です)
加えて、“自分で車を持つ”なんて事は、現実的でない世界だったのもあり、オープンカーを所有するなんて“更にもっと違う世界”のお話だった。
就職が決まり、車が無いと不自由極まりない土地に住んでいる事もあって、手に入れたのがKE70カローラ。(←後に“ボローラ”と自虐的な愛称を付けちゃう事になるのだが)
(所有ラストの頃…)
中古で小さくって安くって…まぁ ある意味当然の流れではあった。
小型車はFF化が進んでいる中、敢えての骨董FR、しかもOHVの1300ccを選んだ所が今でも通ずる、何ともな天邪鬼さ…ではあるが。
就職先は自動車部品の製造を行っていて、ガソリンエンジン用スロットルボディの加工及び組付けラインが徐々に増えつつあった。
その中にはマツダファミリアB系エンジン用の新設ラインが正にラインオフしようとしていた。配属が生産技術だった事もあり、新製品情報も当然入ってくる。そしてそのラインに、二座FRオープンスポーツ用の「ソレ」も流動される事を知らされるのだ。
車輌についてはさほど詳しい情報が入ってくる訳でも無いのだが、何だかとてもワクワクしたのを思い出す。
#後にユーノスロードスターと判るのだが、「まさか」25年以上経ってその後継車に「まさか」自分が乗る様な事になるとは…。
でも、そのアッセンブリー品番を今だに憶えているのだから(他は殆ど覚えていない)、やはりとても強い“何か”があったのだろう…と感じざるを得ない。
もうひとつ、その“線”を感じる出来事がある。
いや、“縁”だろうか。
それは割合遅い時間の少し寒い夜だった。
高校時代の友達が突然訪れてきた。
いつもなら訪問前には必ず連絡をしてからやって来る律儀な筈の彼が、である。
玄関にも入らず、
「おもろいモン見せたるワ」
「は?」
「ロードスター乗ってきた」
「何っ!?」
まだ登場して間のないユーノスロードスターに乗ってきたというのだ。
(画像は拾い物です)
いや、おかしい。彼も車は持っている。TE71のH/Tモデルだ。結構お気に入りの筈。
どうやら友達の物らしい。
僕が興味のある事を知っていて、持ち主に言ったのか借りて来た様だ。
(貸してくれた人もナカナカである。当然まだまだ新車な訳で)
どこで仕入れたか寒空の中でのオープン走行もまたオツな物、…というのを実践すべく上着を羽織って男二人の深夜ドライブへ。
ウィンドーの上縁の更に上に瞬く星が見える。当然見上げれば頭上にはお月様だって。その光景は、今だにとても強く心に残っている。
そんな事もあり、欲しいな…と感じた。
でも、結局そうはならなかった、しなかった。
それはボローラへの申し訳無さ、だったのだろうか。自分の手元に来て、まだ2年にもなっていない。
要は「まだ早い」と判断したのだ。
そう、憧れの車(…と言っても、いつかは!という身近な対象)としたのです、ユーノスロードスターを。
その後、九州へ何回か寝台列車を使っての旅の際、阿蘇や鹿児島周辺でレンタカーでロードスターを二度ほど借りた事もあったな。
#ただ、その想いも時間が経つにつれ、何となく離れていってしまった感もありました。
モデルチェンジをするにつれ、よく見もせず、勿論触れもせず…になってしまっていったのです。
今思えば、勿体無い時間を過ごしてしまったのかもしれません。
そのお陰かボローラとの付き合いは当初考えていたよりも遥かに長いものと成りました。それはそれで良かったなと。気が付けば、27年間…そんな感じで同じ車に乗り続ける事など、そうはナカナカ無い事でしょうし。
「いつまで乗るんだよ?!」
「いい加減休ませてやりなよ…」
この時点で既に“おかしい人”扱いは定着していたんだろうな…と思う訳です。
そのボローラ、長く乗っていれば色々なトラブルもあります。
笑えるモノもあれば、アレさえ無ければなぁ…も。
出来ればずっと乗っていたかった。
「もう、潮時かな…」
と考え始めたのは、電装系のトラブル。
何処が悪いのかがもう判断不能と車屋から(暗に)匙を投げられた事がきっかけでした。
時期としてはDJ DEMIOディーゼルが発表された頃。試乗もして、かなり気に入ったのですが…次期型ロードスターの噂もちょうどこの頃出てきていた様に思います。
担当セールスにも「ロードスターが見えてから判断する」と伝えました。
筑波での実車初披露の姿を見て
「コレ、欲しいっ!!」
…からは、Web、雑誌等の情報に常時飢えている状況に。
自身の足腰が日常使用に耐えられるかの検討に、ディーラーへNCへの乗降確認にも出向きました。
「何とかなりそうかな…」
ダメなら、その時点で考えよう。“飛び込まないと買えない”車だぞ、と自分に言い聞かせる始末。
結局は先行予約商談の予約権を確保し、我が手に入れるべく動いて、買い物としてはあまり賢く無いだろう“初モノ買い”に手を出す事になるのです。
4/4に正式契約。
そして、引き取りは6/5。
即帰宅はせず、お決まりの地元の半島ぐるり散歩。楽しかったなあ。
周りには買い替えを知らせず、シレッと通勤に使い始めました。
皆の反応を楽しむが如く(笑)
#実は同じく予約組がもう一人社内に居たのですが、数日 僕の方が早かったらしく、悔しがっていたのも後で聞きました。
そこから暫くは文頭のやり取りが繰り返されるのです。ちょっとした楽しみでしたね、あれは。
ただ、如何に自分のイメージの大部分をボローラが占めていたのかの再認識にもなりました。
散々「イメージに合わない」と言われ続けましたが…今でも、なのかな??
それでも、思い切って動いて良かったと今でも思います。そして、色々な出来事がこの件に関しては妙に繋がっている様に思えてなりません。ボローラに関しては、特に。
(これに関してはまた何処かで書くかも)
日常が非日常に。
通勤の往復共にオープンなのも、ロードスター他何台か居る中で僕一人。アホ丸出しですが気持ちイイんですもん、なんか文句ある??って具合に今だ継続中。
そのうち、自分=赤いロードスターのイメージになってくれるだろうと思ってますが、はてさて…27年積み上げてきたイメージを覆すのはなかなか難儀かもしれません。
『このクルマを手に入れるほんの少しの勇気を持てば、きっと、だれもが、しあわせになる。』
この車が世に出てきた時に謳われた一文です。
凄く高い車じゃありません。
凄く速い車じゃありません。
ゆっくりのんびり流しても、それはそれは純粋に楽しいのです。
某ボロクソに欠点を叩く英国の車番組でも言っていました。
『made of FUN!』
と。
そのままならば出会えなかったいろんな人達にも巡り会えました。
見えなかった、感じなかった風景を見る事が出来たりもします。
幸せです。
普段使い、問題ありません。
勿論僅かな制約はあります。荷物があまり乗らない、2人しか乗れない、静かではない、将来の耐候性にはやや不安がある…等。
でも、それがさして重要でないならば、そして何某かの代替方法が有るならば、是非乗って、所有して欲しい一台だと思います。
そうそう、バイク乗りの方には或る意味試される車でもあります。
僕はバイクに乗る機会が激減してしまいましたから。