
本ブログでも何度か取り上げている三菱i-MiEV。アイのユーザーにとってはすごく気になるクルマです。2月に
実証実験車両の観察レポートをお伝えしましたが,この度ついに量産仕様車のハンドルを握ることができました。
試乗を行ったのは2号車アイのディーラー。神奈川県で2台試乗車を用意して,各店舗を順番に回しているそうです。特殊なクルマであるにもかかわらず,きちんと試乗車が用意されているのは嬉しいことです。
試乗車は「わ」ナンバーのレンタカーとなっていました。もっとも,一般ユーザーでもi-MiEVはメンテナンスリースのみで,「購入」して自分の所有にすることはできません(ナンバーは「わ」ではなく,普通のものがつきます)。ちなみに価格は税込459万9000円。ただし,国や地方自治体から様々な補助金が受けられるのはあちこちで報じられている通りです。
試乗車のボディカラーはクールシルバーメタリック/ブラックマイカの2トーン。オプションの有料カラーです。ボディカラーは全8色用意されていますが,無料なのはホワイトソリッドとクールシルバーメタリックの2色だけ。
i-MiEVの窓枠はブラックアウト仕様。ガソリン車では廃止されているので久々の復活。というか,ずいぶん前に決めた仕様がそのまま引き継がれてしまったということかも。個人的にはこちらの方が三角窓からの連続性があって好ましく思います。
この角度からはLEDヘッドランプが目を惹きます。後方には普通充電リッドを装備。実証実験車ではただのゴムキャップでしたが,さすがに量産車ではちゃんとした「リッド」になっています。
後ろから見てもやはりホワイトのLEDテールが目立ちます。別物感をアピールしていますね。逆にいうと,これ以外の点でガソリン車と区別するのは難しいかもしれません。なお,ガソリン車の給油口と同じ位置には急速充電リッドがあります。
運転席後方の普通充電リッドと充電ガン。AC200Vが基本ですが,アダプターで100V電源からも充電することが可能。専用のバッグが用意されていて,常に携行しておくことが勧められています。
ヘッドランプとテールランプはこんな感じで光ります。どちらも省エネ重視の選択で,とくにヘッドランプはそれほど光量の大きなものではありません。HIDの方が明るいそうです。テールランプもどちらかといえば地味な印象。
基本的な機器配置は実験車とあまり変わっていないようです。左の大きな箱が充電器で,右はインバーター。
室内の印象もガソリン車と同じ。
トラクションコントロールが標準装備なのが目を惹きます。セールス氏によると,4輪駆動が設定できないための代わりなのだそうです。また,公式サイト(http://www.ev-life.com/allofev/vol06/index02.html)によると,減速時の回生ブレーキの効きすぎによるスリップを防ぐ役目もあるとか。ブレーキをつかわなくてもブレーキ制御ができるところはさすが電気自動車。
メーターのデザインは少し変更。スイッチオンにして初めてわかりましたが,燃料計のアイコンは給油ガンでなくコンセントになっています。
バックライトはガソリン車のオレンジ色から白色になり,涼しい印象になりました。
実験車の型式は「CBA-HA1W改」でしたが,量産化にあたって新たに「ZAA-HA3W」の型式が与えられました。製造番号は1からスタートしているようです。試乗車は3桁台前半。また,原動機型式も「RX1A」から「Y4F1」に改称。
さて,いよいよ試乗であります。発進操作はガソリン車と同様。キーをスタート位置までひねるとインパネに「READY」ランプが点灯し走行可能となります。この間もちろん無音。
その後セレクターをDレンジに入れれば車が動き出します。AT車のクリープとまったく同じ。とにかくガソリン車との違和感を小さくすることを考えているようです。
まずはゆっくり走らせます。変速動作がないのでとにかく動きはスムーズ。シューっと一定のリズムでスピードが上がります。モーターやインバータ−からの音は予想以上に小さく,相対的にロードノイズが大きく聞こえますが,絶対的にはとても静かな車です。
確かにこれだと,近づいて来ても気がつきませんね(^^ゞ
アクセルを踏み込んでみると一瞬の間を置いて鋭く加速します。ガソリン車を相手にしないレスポンス。この「間」もあえて設定されたものかもしれません。評判どおりの出足のよさが確認できました。
ただ,出足は鋭いですがパワーそのものは64psなので,どこまでもスピードが上がっていくわけではありません。一方,ガソリンターボ車は後からどんどんスピードが乗ってきますから,競争するとゴール間際で追いつかれてしまうような感じでしょう。
この「無段変速の快感」はレクサスのGSやLSハイブリッドと似ています。あちらはパワーに余裕があるのでどこまでも加速が続く感じですが,iMiEVはやはり軽自動車。街中をキビキビ走るのが似合っています。アクセルを踏み込むとパワーメーターの針がドーンと跳ね上がるので,自然と足もゆるむでしょう。
減速はサービスブレーキと回生のミックスだと思いますが,まったく違和感はありません。音も静かですが,ロードノイズが小さくなる分加速時よりは耳に付くようです。
子細に観察すると,停止間際と動きだし直後に軽いショックを感じますが,気になるものではないと思います。1号車525iの停止間際の2→1ダウンシフトショックの方がずっと大きいですね。
DレンジとECOレンジの差はあまり大きくないというか,あえてあまり差を付けないようにしている感じもしました。ガソリン車ではD→3のシフトは加速を意味する行為ですが,iMiEVの場合はD
→ECOだとカクンと減速してしまうので数少ない違和感とはいえるでしょう。もっとも動力源が違うわけですからこれは問題ではなく,何でもかんでも「違和感」としか表現できないのならガソリン車に乗り続けるべきです。
車重の増加と,結果としての低重心化で走りがよくなったこともアピールされていますが,今回の試乗ではあまり感じることはできませんでした。新しい車なりのしっとり感はありましたが,それがEV化によるものなのかどうかはわかりません。
試乗コースは5キロほどでした。試乗希望もこの日の午前中だけで7件あったそうで,私の後も順番待ちでした。ディーラーも大賑わい。
試乗を終えて,ガソリン車との「違和感」がなかったことには驚きです。走りについてはEVの特徴を「メリット」として十分享受できる車といえるでしょう。航続距離の問題さえ解決されれば本気で乗り換えを検討したくなります。
違和感のなさではトヨタのハイブリッドシステムにも感心しましたが,遙かに規模の小さい三菱自動車がここまで仕上げてきたことには敬意を表します。発表以来3年近くの時間をかけた意義は十分にあったようです。
一方で,世界に目を転じると有り物の部品を使ってお安く仕上げたEVがあちらこちらに登場していて,航続距離とか走り味とか安全性をあまり気にしないマーケットで静かに浸透し始めている事実があります。おそらく日本国内にもそうした需要は存在するでしょう。
しかし,日本メーカーがそういう形で安直に参入することは許されず,やるとすればi-MiEVのような方法しかないのだと思います。タタ・ナノの電気自動車版のようなものを日本メーカーが生産して売り出したとしても,日本市場ではクレームの嵐でメーカーの社会的地位も危うくなるかもしれません。
量産効果が出るくらい売れてくれるといいなぁと心から願わずにはいられないのでした。クルマの出来があまりにもよかっただけに。メーカーの努力が報われませんものね。