こどもの頃よく使っていた言葉だ。
実際にはそんな言葉はあるはずもないが、
頭の中で考えうる最大の数を1兆万とし、
なぜか単位として円をつけて言っていた。
メートルでも、グラムでもなく
なぜか日本の通貨単位の円だった。
狼一号
ある時、仲間と大きい数言える自慢大会が始まった。
幸か不幸か、その中で、
1兆万を越える新たな造語を作り出す想像力や創造力を
持ってる奴はおらず、
あべ君の優勝かと思われたが、
おとなしいコウちゃんが言った。
「1兆万円の10倍!」
おおぉぉぉー!そういう言い方があるのか。
さすがコウちゃんすげぇー!
すげぇーとは思ったが優勝は逃したくない。
コウちゃんは顕微鏡を持っている。
誕生日に親に顕微鏡をもらっていたのだ。
その噂を聞きつけたあべ君は
ちっちゃいモノ代表のアリを捕まえて
コウちゃんちに持って行ったことがある。
これ見えるコウちゃん?
あべ君、見えるよほら。
ビグレックス
さて、大会のほうは
10倍という慣れ親しんだ桁が出たもんだから
その他大勢のハナタレ供が我れ先にと
100倍、1000倍と言い始める。
すかさずあべ君も
1兆万円の1兆万倍!と叫ぶ
すると当然、
1兆万円の1兆万倍の1兆万倍!
1兆万円の1兆万倍の1兆万倍の1兆万倍!
もう1兆万の嵐。
近所の馬鹿が集まって、アホな呪文を唱えてる図だ。
大会も収集がつかなくなってしまった。
近所の大人はきっとうるさかったし、
あきれていたに違いない。
家に帰りながらもずっと言っていた。
イッチョマンのイッチョマンのイチョマンの…
惜しくもあべ君は優勝は逃してしまったが、
そのとき、1兆万の嵐から少し離れて
ニコニコしている優しいコウちゃんが大好きだった。
以来、あべのなかでは
顕微鏡は知性と優しさの象徴となっている
縮陰膏
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Posted at
2016/12/20 14:47:36