コルベット、正面衝突！

普段どおりに目覚めた俺は、いつものようにブルーのカーテンを一気に引き開ける。
すると、シャッターを閉め忘れたガレージが視界に入ってきた。
そこにはデトロイト出身の赤毛女ヴェッティが怠惰な眠りを貪っている。
クッとわずかに跳ね上がったボリュームあるヒップが、嫌でも俺の眼を刺激した。
ヴェッティの甘い強烈な誘惑に耐えられるほど俺の意思は強くない。




今日は仕事はやめだ。

3分後、キーを手にした俺はヴェッティの異様に低いボンネットを眺めていた。
シートに滑り込みイグニッションを捻ると、ブルンとひとつ身震いをしてヴェッティは眠りから覚めた。

ヴェッティにはハイウェイがよく似合う。
俺は南にノーズを向けた。
アクセルを踏み込む。

そのとき、「こら～、仕事せんか～い！」という、嫁の声が遠くに聞こえた・・・が、聞こえないふり・・・。（滝汗）

それはハイウェイを降りたワインディングで起こった！
眼下に青い海岸線が見える快適なドライブウェイ・・・俺は、ヴェッティに、目に染みるような新緑と海のブルーを満喫させてあげていた。

正面に緩やかな下りの右コーナーが見える。
対向車が視界に入った。
それは、どこにでもあるごく普通の光景だった。
しかし、直後、あり得ない光景が俺の目に飛び込んできた。

ドライバーが、寝・・・て・・・る！！！
対向車の運転席に見えるのは、禿げあがった頭頂部・・・つまり、熟睡中！？
俺のヴェッティに照準を合わせたパトリオットのように、一直線に突っ込んできた。
ブレーキは間に合わない。

正面衝突か？
いろんな思いが、一瞬で次々と脳裏を通り過ぎた。

みんな、先に逝ってゴメン。
こんなことになるなら、仕事してたらよかった・・・。
せめて娘3人全部嫁入りさせたかったな・・・。
これで住宅ローンは払わなくていいか。
あ、エロビデオ処分するの忘れてた・・・。

対向車が右前方からどんどん近付いてくる。

そのとき俺は、無意識にアクセルを床まで踏み込んでいた。
ひょっとして、神がそうさせたのかもしれない。
不思議とスローモーションを見ているような妙な感覚だった。
ヴェッティと対向車の距離が急接近し衝突するかと思った瞬間、相手の車体のサイド部分が俺の視界を通り過ぎた。
覚悟していた衝撃は訪れなかった。

ホッとした瞬間、目の前に山肌が迫っていた。
そう、コーナー手前でアクセル全開していたのだった。
今度は床を踏みぬく勢いで急ブレーキ！
自分でも何をどう操作したのか覚えていない。
ただ、そこには生きている俺がいた。

我に返り、後を見ると、乗用車は側溝に右前後輪がはまる形で停止していた。
しばらくして、あのはげ頭のおっちゃんがきょとんとした顔で降りてきた。
何が起きたのか把握できていない顔だった。

俺は、「あんたのおかげで三途の川を見てきたんだよ」と言いたい気持ちを抑えて声をかけた。

「だ、大丈夫ですか？」
「あ、大丈夫だけど、ちょっと運転ミスっちゃってね。上げるの手伝ってもらえる？」
「・・・。」

通りかかった人も手伝ってもらい、無事、側溝から引っ張り上げることができました。

悪友どもから預かったエロビデオを早く処分しようと決めたかっぽちゃんでした＾＾