湯之上隆さんの、「Well to Wheel」(井戸から車輪まで)という概念
例えばガソリン車なら、油田から油をくみ上げ、精製してガソリンをつくりだし、クルマの車輪を動かすまでを意味する。そして、このすべての過程で発生するCO2を合計して、ガソリン車1キロメートル走行あたりに排出されるCO2を算出する。
FCVならば、どのように水素を作ったか、というところから、車輪を動かすところまでのすべての過程で発生するCO2を合計する。同様に、EVも、どのような電力を用いてバッテリーを充電し、車輪を動かしたか、そのすべての過程で発生するCO2を合計する。
本稿では、この「Well to Wheel」という考えに基づいて、1キロメートル走行時に排出されるCO2の量を比較し、FCVとECのどちらがエコかを判定してみたい。
Well to Wheelから見たFCV
図1に、(財)日本自動車研究所「総合効率とGHG排出の分析報告書」(2011年3月)などから作成した各種クルマの1キロメートル走行あたりCO2排出量(「Well to Wheel」モード)を示す。
ガソリン車は1キロメートル走ると147グラムのCO2を排出する。欧州などでエコカーとして普及しているディーゼル車は、ガソリン車よりも若干少ない132グラムである。「プリウス」などのハイブリッド車は95グラムで、ガソリン車の約3分の2程度のCO2排出量である。
「究極のエコカー」と呼ばれるFCVはどうか。ステーションで都市ガスを改質して水素を作った場合(オンサイト都市ガス改質)のCO2排出量は79グラムである。また、天然ガスを改質して水素を作りステーションに輸送した場合(オフサイト天然ガス改質)のCO2排出量は78グラムである。
当面、水素の供給は上記2つのどちらかになる。ということは、Well to Wheel から見たFCVのCO2排出量は、ガソリン車の場合の半分にもならない。
太陽光を用いてアルカリ水から水素を作る場合(オンサイト太陽光アルカリ水電解)、CO2排出量は14グラムと非常に少なくなる。「究極のエコカー」という言葉は、このくらいの値が実現してから使うべきではないか。
逆に、極端なケースとして、石炭による火力発電でアルカリ水から水素を作った場合、CO2排出量は260グラムという大きな値になる。
以上から分かるように、水素をどのようにして作ったかによって、排出されるCO2の量が大きく変わる。したがって、「FCVだからエコカー」とは必ずしも言えないのである。新聞や雑誌が「究極のエコカー」と書き立てるのは、現時点では過剰宣伝だろう。
Well to Wheelから見たEV
次に、EVのCO2排出量を見てみよう。2011年の東日本大震災が起きる前の2009年の電気で充電した場合(電源構成:2009年度)のCO2排出量は55グラムである。この時、電力は、原子力、水力、火力などに分散していた。これが大震災後になると(電源構成:2012年度)、CO2排出量は77グラムとやや大きくなる。これは原子力発電がすべて停止し、その結果CO2を排出する火力発電の割合が増えたからである。
上記のCO2排出量は、ガソリン車の3分の1から2分の1程度である。ところが、イーロン・マスクが推し進めようとしている太陽光による充電では、CO2排出量が何と1グラムになる! もちろん、まだこの段階には到達していないが、これが実現すれば「EVが真のエコカー」であることは疑う余地がない。
課題はどちらもインフラ整備
太陽光で水素を作ってもCO2排出量は14グラムだが、太陽光を充電したEVならCO2排出量はたったの1グラムになる。「人類を滅亡から救う」ことを起業の目的にしているイーロン・マスクがEVを選択しているのは、このためである。
FCVの普及のために、JX日鉱日石エネルギーは、2020年をめどに国内10拠点で水素を生産し、約2000店に水素スタンドを導入する計画だという(「日本経済新聞」2014年12月22日)。しかし、天然ガスなどの改質による水素を使っている限り、Well to Wheelから見たCO2排出量はガソリン車の半分にもならない。
一方、イーロン・マスクは、米国ですでに100カ所の充電設備を設置し、EVでアメリカ本土を縦断できる環境づくりに乗り出している。中国では国営通信大手のチャイナ・ユニコムと120都市400カ所にEV用充電器を整備すると発表した。日本でも急速充電器の設置を独自に進めるという(「日経ビジネス」2014年9月29日)。
さらに、マスクは「世界どこでも充電無料」と明言している。そして、行く末はマスク自身が会長を務めるソーラーシティが、EV充電用に太陽電池の設置を計画している。
CO2排出量を劇的に低減するには、「FCV+太陽光」か「EV+太陽光」しか選択はない。そして、「究極のエコカー」と言えるのは、どう考えても後者である。
スミマセンm(__)mだいぶ前に見た記事を
引用させて貰いました(・・;)💦
個人的に大変参考になったので、此方に
載せさせて貰いました(*^^*)
次世代はPHEV→EVになると強く思っていますので、EVを先送りしているメーカーは取り残される(家電の二の舞)と思ってしまいます。(*^.^*)💦
では、オヤスミなさい💤💤💤
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2017/03/21 23:34:00