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2018年02月22日 イイね!

私をスキーに連れてって #15

 
発表会の準備も大詰めを迎えていた。忙しそうに働く矢野の近くで、スタッフルームの電話が鳴った。


「あっ、僕出ます。はい、もしもし」


 年が明けて、サロットは本格的に発表会に向けて動きだした。当然矢野がスポーツ部に出入りすることも多くなっていた。ここのところ、毎日のように遅くなっている。


「優ちゃん?、悪い、もう一仕事なんだ。急になんだよ」

「田山さんなら仕方ないけど、
 3日続けてすっぽかしじゃないですか…。もしもし?」


 電話は一方的に切れた。矢野はサロットに夢中だ。それは田山も心配するほど入れ込んでいるのがわかる。


「こないだの彼女か?
 ここんとこ毎晩手伝ってもらってたから、今日はいいぞ」

「あぁ、手伝わせて下さい」

「仕事と彼女と、どっちが大事なんだ?」

「彼女とは、発表会さえ終われば毎日でも会えます。
 会社で唯一やりたい仕事なんですよ。
 サロットを潰したくないし…。発表会の前までは手伝わせて下さい」

「しかしなぁ…」

「彼女なら大丈夫です。田山さんのファンですから」


 矢野は毎日サロットと一緒にいる。軽金属部の仕事が終わってからだけではない。最近は自分の仕事を抜け出してスポーツ部に顔を出すこともある。所崎たちにとってはおもしろいわけがない。


「今日、バツですって…。
 急にポスターの撮り直しが入っちゃったって…」

「 ここ2、3週間、ふられっ放しじゃない。
  いくら好きな靴だからって、彼女とどっちが大事だと思ってんだろ? 」

「 靴だよ 」


 ゼファー・イン。ピストル型のライターでピースに火をつけた小杉が、意地悪く答えた。


「仕事ですから」

「 優しくないんだよなぁ。
 中学の頃同級生がケーキ焼いてあげたんだ、あのバカに。
 ドキドキしながら渡したら、なんて言ったと思う?」

「 食費、助かっちゃった… 」

「 ははは… 」

「 だいぶ馴染んで来たね 」


 入口のドアが開いて、泉とヒロコが入って来た。


「 お~す! 」

「 取れたわよ、志賀のロッジ! 」

「 やったね。バレンタイン、志賀に行かない? 」

「 志賀? 」

「 矢野のヤツ、誘い出してくんないかな。
 僕たちより君の方が、効果がある 」

「 いっくら忙しがったって、スキーって言えば一発。
 会社が倒産したって駆けつけるわよ。
 久しぶりに、たっぷり会えるじゃない? 」

「 バレンタインかぁ。前日からですね? 」


 優はバッグから手帳を取り出し、メモを始めた。


「 バレンタイン? 」


 スポーツ部の廊下の前で、優は矢野にバレンタインの話を切り出した。


「 ヒロコさんたち、ロッジとってくれたんです。
 最近全然会えなかったし、いいでしょ?どうせ、会社も休みだし 」


 しばらく考えていた矢野が、笑顔でうなずいた。


「 やったぁ 」


 その時、壁に貼られたサロットのポスターが目に入って来た。サロット・カップは2月14日だ。優の心配を、矢野は打ち消すように言った。


「 もともと、僕スポーツ部じゃないから、会場には行けるわけないし、
 それに田山さんだって迷惑なはずだし…。大丈夫、行こう! 」


 ポスター撮りの日。田山の横には、相変わらず矢野の姿がある。


「発表会当日の事なんだけど、すまんがお前…」

「もちろん結構です…僕、バレンタインは…」

「輸送係。手が足りないんだ。手伝ってくれ」


 困った顔の矢野に、笑顔を見せる田山。


「所崎たちにも、納得させた。今夜の搬送から手伝ってくれ。
 発送に立ち会ってほしいんだ。それと受取りにいてほしいんだ。
 いや、いてもらわんと困るんだ」

「田山さん…」

「久しぶりに発表会の後、一緒に滑れるな」

「でも…バレンタイン、約束しちゃったんです。
 約束しちゃったんですよ、あの…」


 申し訳なさそうな矢野の顔を見て、やっと田山も気付いた。


「そうか、ははは、俺なんかと滑るより、
 彼女と滑る方が何倍もいいよ。わかった」


 2月14日のサロットの発表会。大変なことになろうとは、まだ誰にも、想像さえ出来なかった。



Posted at 2018/02/22 10:09:30 | コメント(0) | トラックバック(0) | わたスキ | 日記
2018年02月21日 イイね!

私をスキーに連れてって #14

 
「後でナイター1本どうだ?」

「おぉ、今日はいいや…」


 元気のない矢野に、泉が声をかける。


「何お前、浮かない顔してんだ、おい。
 優ちゃん、もう志賀だぞ志賀。飲め飲め! 」

「何言ってんだ、そんな事考えてねぇよ」


 宿のホールに万座近辺の立体地図が置いてある。


「そうだよ~。そうなんだよなぁ 」

「はっ?」


 薪を運んで来た宿の主人が聞き返す。


「志賀万座って、直線だと2キロなんですよね?」

「あぁ、志賀万座ルートね。良いツアーコースですよぉ。
 夜は無理ですよ、夜は」


 矢野が見ている立体地図のケースに手をつきながら、話を始めた。


「それにあのコース、春までは滑走禁止なんですよ。
 相当な難所ですからねぇ、冬に滑るのは自殺行為です」


 さらにルートを指でなぞりながら、説明を続けた。


「直線2キロなのにねぇ、車だと菅平回って行くから、
 5時間近くもかかるんですよ。変な話ですよねぇ」

「車!」

「はっ?」

「5時間かけてふられに行くんじゃバカだよな。バカだよな・・・」


 そう言いながら宿主は、立ち去ろうとする矢野を心配そうに見送った。


「お客さん…」


 矢野はフロントガラスの凍結防止のシートを雪ごとはがすと、リトラクタブルライトを点灯した。


     A Happy New Year!
     大好きなあなたの部屋まで
     凍る街路樹ぬけて急ぎましょう
     今年も最初に会う人が
     あなたであるように はやく はやく

     A Happy New Year!
     新しいキスを下さい
     そして鐘の音 通りにあふれて
     今年も沢山いいことが
     あなたにあるように いつも いつも

     A Happy New Year!
     今日の日は ああどこから来るの
     陽気な人ごみにまぎれて消えるの
     こうしてもうひとつ年をとり
     あなたを愛したい ずっと ずっと

     今年も沢山いいことが
     あなたにあるように いつも いつも

                  A Happy New Year:松任谷由実


「ねぇ、どうしたのよ。新年まで後10分よ。楽しまなくっちゃ」

「キー貸してくれない?」

「キー?」

「車、お願い」

「うん…」


 しぶしぶ優にポケットから出した車のキーを渡す恭世。周りではカウントダウンの準備が始まっている。ウェアを来ながら、玄関の階段を走り降り、恭世の車に乗り込む。フロントガラスの雪はワイパーで払ったが、降り続く雪はやみそうにない。

 駐車場から出ようとしたところに、ヘッドライトの眩しい光が飛びこんできた。赤い車だ。運転席のドアを開けて降りて来たのは、これから5時間かけて、万座まで会いにいこうとしていた相手、矢野だった。


「 聞き間違えちゃったみたい。番号、電話… 」


 優は、自分が矢野に嘘の電話番号を教えていたことを思い出した。矢野の聞き間違いなんかじゃない。自分の嘘が心苦しく、優は何も言えず、白い雪の中に佇んでいた。


「 やっぱり、聞き間違いじゃなかったのかな…。じゃあ… 」


 淋しそうな矢野の、精一杯の笑顔がゆがむ。立ち去ろうとする矢野の背中に優の声が届く。


「 あの… 」


 振り向く矢野。ちょうどその時、ナイアガラの花火に火がついた。新しい年の合図だ。


「あけましておめでとうございます。
 今年も…よろしくお願いします 」



 深々と頭を下げる優。矢野に向けた、今年最初の笑顔はナイアガラの光よりも輝いて見えた。


Posted at 2018/02/21 08:45:42 | コメント(0) | トラックバック(0) | わたスキ | 日記
2018年02月20日 イイね!

私をスキーに連れてって #13

 
「シャイなんだ、つまり。あたしや恭世さんがいたから、堅くなっちゃったんだ。
 逆に言えば、それだけ矢野君を意識してるってことじゃない。
 それに、電話番号だって、矢野君が聞き間違えただけかもしれないしれないし。
 明るく考えなくちゃ!」

「うん」

「ね!」


 不安そうだった矢野も、ヒロコの言葉に笑顔でうなずいた。


「うん?いいよぉ~。あたしねぇ、1万上乗せする。
 うん。彼ねぇ、だんだん根性出して来た。うん、いけるよぉ」


 矢野は優に声をかけられそうな気がして、秘書課に来たみたが、一人では声も賭けられなかった。


「絶対無理だね!こっちも少し上乗せしたいけど、受けるか?」


 仕事を終えて、会社の玄関を出た優の前に、白いセリカが停まった。


「乗って!さ、早く!」


 強引に真理子にそう言われると、優には断れない。
 優がセリカの助手席に乗り込むと、真理子はアクセルを踏み込んだ。


「今夜、みんなと会うんだ。矢野君喜ぶよぉ」

「矢野さんて、どういう人なんですか?」

「そうねぇ、中学の頃さぁ、矢野君、
 同級生から手編みのセーターもらったのに、
 洋服代助かっちゃったぁ、って、それだけ。
 その娘、本気で惚れてたんだ。野暮よ、野暮」


 真理子のセリカは、ドリフトしながらコーナーを駆け抜けていった。


「でさぁ、その後矢野君の悪口で盛り上がっちゃったわけ。
 バッカだぁ、あたし。罪滅ぼしに3万上乗せする。
 うん。絶対くっつける」


 矢野が書類を持って歩いていると、優が歩いて来た。
 声をかけたいけど、肝心な言葉が出てこない。
 エレベーターに乗り込んだ優は扉を閉めた。


「バカだねぇ、ハッハッ、結局お前ら、10万ずつ賭けたわけだ。
 お百度踏みなさい、お百度」


 泉が手術中に電話を受けた。
 話に夢中で危うく開いたお腹の中に、ピンセットを忘れるところだ。


「こないださぁ、ゆり江さんの彼に会っちゃった。
 ほら、志賀であったモデルさん」


 バーのカウンターで恭世が優の方を向いて言った。


「背なんか高くって、おまけにカメラマンしてんの」


 ゆり江さんって、矢野さんの恋人なんじゃないの?
 だから、嘘の電話番号を教えたのに・・・


「カメラマン?だって矢野さんは?」

「あぁ、あれ?恋人でもなんでもないんだって。
 泉さんが勝手にくっつけようとしてただけ。
 志賀にはもてない男をからかいに行っただけなんだって。
 うけちゃうよねぇ 」

「そんなの…あんまりだわ」


 完全に優の勘違いだ。


「 あんまりじゃない…そんなの… 」



Posted at 2018/02/20 08:35:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | わたスキ | 日記
2018年02月19日 イイね!

私をスキーに連れてって #12

 
「保険のセールス、さっきから待ってるわよ」


 そう言われて自分のデスクを見ると、そこには派手なメイクをしたセールスが矢野を見つけて手を振っている。


「ハァーイ」


 ヒロコだ。


「まぁ、矢野様。先日はお電話をいただきまして、どうも。
       あの、こちらが私どものお薦めする
            ガン保険付きのニュープランなんですけども…」


 立ち上がるヒロコを押さえつけるように椅子に座らせると、自分は隣の椅子を引き寄せて、ヒロコと向かい合った。


「何のつもりだよ、何考えてんだよ!」

「私どもはお客様の幸せを第一に考えております」


 部署全体に聞こえるような声を出すヒロコは、矢野に顔を寄せて言った。


「もうすぐ昼休みでしょ。 秘書課ってどこよ 」

「 俺の幸せは、俺が考えるよ 」


 保険のカタログを押しつけながら、矢野はヒロコに言った。


「頼むから、帰って」


 ヒロコは次の作戦に出た。


「ねぇ、あちらの課長さんでしょ?庶務のOLはらましちゃったって…」

「バカ!」


 優柔不断な矢野をその気にさせるには、強硬手段もやむを得ない。ヒロコは立ち上がって課長の席に向かった。


「それでは、課長様にも
           こちらのガン保険付きニュープランをどうぞ…」


 これには矢野も困った。


「 悪魔 」


 結局、秘書課にヒロコを連れて行くしかなくなってしまった。


「早く」

「もういいよぉ」

「大丈夫だって。あたしが何のために
  こんなカッコして来たのよ。頑張ってよ。
     優ちゃんいるかどうか、早くちょっと見なさいよぉ、早く…」

「あらぁ!優ちゃん、優ちゃん、優ちゃん」


 秘書課の前まで来ると、二人が優を見つける前に、恭世が二人を見つけて、優を廊下に呼び出した。


「聞きましたよ、同じ会社だったなんて、運命感じちゃう」


 恭世はこう言うが、声をかけられないでいる矢野にしびれを切らしたヒロコが、優の手を取って、矢野の代わりに口を開く。


「ホントよねぇ!ねぇえ、私たち暮れから万座行くんだけども、
     みんなで行く方が安上がりだし楽しいし…。
           もし良かったら、優ちゃんも一緒に行かない?」

「誘って下さるんですかぁ?」


 あなたじゃない。とヒロコは言いたかったが、恭世が優の代わりにこう言った。


「あ~、残念。あたし正月、志賀の会社の寮に、みんなと行くんです」


 だから、あなたじゃなくて・・・。


「優ちゃんは?」

「彼女も一緒なんです。また、誘って下さいね。
       あっ、それから、ゆり江さんによろしく伝えて下さい」


 ヒロコは優に向き直って聞いてみたが、やっぱり恭世が返事をした。ヒロコは矢野の腕を引っ張ると、優の隣を矢野に譲った。


「やぁ」

「ごめんなさい。あたし、忙しいんです」


 優は困った顔で視線を落とした。



Posted at 2018/02/19 11:13:14 | コメント(0) | トラックバック(0) | わたスキ | 日記
2018年02月18日 イイね!

私をスキーに連れてって #11

 
「お待たせ~」

「お待たせ。名前何つったっけ?」

「長谷川ですけど」

「えっ?」

「長谷川…」


 一人の青年が座るテーブルにクロスをセットし、ランプに灯を灯してテーブルに置いた。


「ほらできた、ははは…いいなぁ、長谷川君」

「聖心のゆみちゃん」

「いいなぁ、ピッタリ!最高!最高だろ?最高だよ、じゃあね」

「ワァオ~」


 ゆみちゃんの方はこれでよし。問題は矢野の方だ。


「矢野、おい、タバコでも吸えよ、ほら」


 小杉は隣に座った矢野の口に、缶から抜いた1本のピースをくわえさせ、手首に着けた腕時計型のライターで火をつけてやった。


「まさか同僚の娘だったなんてさ…」


 煙を一息吐き出すと、矢野がため息まじりに言った。


「リターンマッチだぞ、おい。頑張れよ。ダメな方1万」


 泉は真理子に向き直って、勝手に賭け金を伝えた。


「あたし、くっつく方。あの娘なら矢野君にふさわしいもん」

「どっち?」


 次に泉が、ヒロコに向かってこう言うと、ヒロコは小杉に向かってこう応えた。


「なんか、中学と同じ事やってない?」

「 馬券買わないで競馬見たって、
    ただの家畜のカケッコだからな 」


 小杉が泉に笑顔で応え、手を握り合った。


「いえてる」


 それを見た真理子とヒロコも、互いに顔を見合わせ、矢野の頭の上で手を握り合った。


「くっつく方」


 賭け、成立だ。


「何、ゴチャゴチャ言ってんだよぅ。忘れよう、飲もうぜ」


 それまで見ていた写真を、テーブルに放り出すようにして言った矢野の言葉に、即座に反応する真理子。


「何で忘れなきゃいけないの?女の子って偶然に弱いんだから、
  バッタリ再会なんて最高のシチュエーションよ。運命感じるなぁ! 」

「いっそ、今度のスキーに誘っちゃったら?」


 ヒロコもそれに応じる。


「断られるに決まってるよ…」


 自身がなさそうな矢野に、泉が言う。


「わかってるねぇ、おい。だいたい出発まで一週間しかないんだよ」

「ウソの番号教えるなんてな、性格ブスもいいとこだぞ」

「そんなことないよぉ!」


 一度は否定する矢野だったが、諦めなきゃいけないような気がしているのも確かだった。自分に言い聞かせるように矢野は続けた。


「正直言うとさ、それほど好みじゃないし、別にこの娘ぐらい…」


 賭けの勝ちを確信し、泉は笑った。


「 掛け金、倍な! 」


Posted at 2018/02/18 14:28:15 | コメント(0) | トラックバック(0) | わたスキ | 日記

プロフィール

「私をスキーに連れてって #15 http://cvw.jp/b/262788/41130965/
何シテル?   02/22 10:09
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