こんな本がある。
2010年にイギリスで出版された日本版である。
著者はイギリスでは有名らしいモータージャーナリストの
「クレイグ・チータム」と言う人だ。
150台の車がぶった切られている、すごいのはこの著者は全部乗ってみて書いているらしい、ハンドリングやギヤシフト、ブレーキの感覚など乗った人しか解らないような文章が多いので、事実だと解る。
しかしまあ、良く乗ったものだ・・・と関心する。
イギリス、アメリカ、イタリア、フランス、日本、ドイツ、スウェーデン・・・こういう自動車大国の車なら日本人でもけっこう馴染みがあるけど、ロシア、イラン、オーストラリア、ポーランド、韓国といった「そんなメーカーあったっけ?」と初めて見る車も多く乗っている、これは日本の自動車評論家では書けない本だと言うことがすぐに解る。
だから、読み始めると、めちゃくちゃに面白い!
とにかく歯に衣着せない一刀両断の解説はすがすがしいのだ。
本を開けるといきなり、こういう章から始まる。
この章の悲しい所は、設計もデザインも悪くないのに、ひたすら作りが悪くて損をした車たちが並んでいる事だ、素材の鉄板が悪かったり、塗装が最低ですぐに錆びたり、また、性能は良いのにデザインが最悪だったり、量産になるまでに基本コンセプトからどんどんズレて訳の解らん車になってしまったりと、とにかく「残念」な車たちが並んでいる。
最初の一台、
アルファスッドもデザインも悪く無いし、コンセプトも素晴らしいのに、なぜかロシアから安い再生の鋼板を買って作ったばっかりに「あっという間に錆びる!」と言う「残念」を招いている・・・しかしこの車、水平対向4気筒の素晴らしいエンジンを積んでいるとは知らなかった、なおさらに「残念」さが増す。
ちなみにこの章に登場する日本車は
日産「サニークーペ」だ、まずデザインが最悪だと酷評されているが、やはりこの車も「錆びる」事でかなり有名になったらしい、先代サニーがヨーロッパでは好評だっただけに「残念」さが目立った車らしい。
さて、次の章は設計の段階から「おかしいでしょ?」と突っ込まれる車たちのお話。アメ車通はご存じの
「グレムリン」や
「ペイサー」がやり玉に挙げられている、まあ、そうでしょうね・・・と納得する、ここに登場する日本車は
「レクサス」のオープンカーや
三菱「カリスマ」・・・この「カリスマ」って車、どうしてこのネーミングにしたのかまったく理解不能なほどに特徴の無い車、どうやったらこういう企画が通るのか三菱の人に聞いてみたいw 会議とか本気でやってる?って。
その他、
日産「セレナ」が「車輪のついたゴキブリ」と酷評されている。
そして次の章はコスパ問題・・・これはメーカーを「倒産」に追い込んだ張本人みたいな車たち、莫大な開発費をかけたのに超不人気・・・また、逆に売れたのはいいけど採算割れで大赤字・・・とか、もっと悪いのは車自体よりもメーカーの信頼を地に落とした極悪車・・・かなり悲惨なお話が多い。
かの有名な
「デロリアン」・・・映画で有名にならなかったら誰も知らなかった超不人気車、この車、なんと英国政府の資金援助を受けて、シャーシはロータス、デザインはジゥジアーロ!万全の体制で開発したのに・・・泣かず飛ばずの大失敗作になり、会社は傾き、失業、借金、使い込みまで発生して、すべてパー・・・と悲しい結末・・・未来は無かったらしいw
さて、この章で登場する日本車、
いすず「ピアッツァ・ターボ」、この車でイスズは自家用車市場から撤退したんだね、一応スポーツカーなんだけど、ハンドリングの悪さから評判が落ちて、ロータスに頼んで治してもらったけど時すでに遅く・・・・と言う結果を招く、しかもこの車も「あっという間に錆びる」と言うダメ車の基本を忘れていないのだった・・・チーンw
その他、
マツダコスモと
スバルSVXも登場している。
さてさて、お次の章はこの頃流行の「OEM車」の化けの皮が剥がされるお話。
まあ、この話は今も大々的に行われていて変なグローバル化が進んでいる、マツダのロードスターにアバルト・エンブレムってのも時代なんですかね・・・ファンとしてはちょっと悲しい・・・この章に登場する車はなんかもの悲しい雰囲気が漂ってる、
アルファロメオ「アルナ」って知ってる?知らないでしょ・・これ、日産パルサーのグリルにアルファの三角エンブレム着けただけの車、エンジンはアルファの水平対向なのに・・・・見た目がパルサーじゃねえw 今でもアルファ最大の汚点と呼ばれているらしい。
面白いのは、この章には日本車が登場しないって事だ・・・そう、日本はベース車を提供する側だから、それを使って失敗した外国車ばかりが出てくるわけ。
なんかそれも罪作りな気がするよねw
そして最終章は、もうほとんど「全部ダメ!」って車たち、まあ著者も言ってるけど理由も何も「とにかくひどい!」って言うしかない車たちなのだ。
この章にはロシアとか韓国とかの自動車産業後進国の車も多く登場する、確かにどこの国だって昔はひどい車を作っていたのだからしょうがないと言えばしょうがない話だけど、あのMrビーンの宿敵の
リライアントの三輪車なんて、「こける車」って車として「どうなの?」って感じだから、やっぱりダメなのはダメなのだなw
しかし、ここに登場する日本車が数多いのがヤバい・・・
セドリックを筆頭に
クラウンやら
サニーZX、スバルXTクーペ、スズキX90、とまあ、読んでのお楽しみってところです。
面白かったのは
「セドリック」ってイギリス人から見るとまず「名前が悪い」んだそうだ・・・人名からとったらしいけどこんな古い名前はもう誰も使わないよ!って言う事らしい・・・まあ日本なら倉之助とか甚平とか、そういう響きなんだろうねw 日本人には解らない「ダメ」さがあるらしい、
クラウンもどうしてダメかって言うと、まずデザイン、そして内装、イギリス人が思う「高級車」と言うジャンルには到底入らないクオリティーとセンスなんだそうだ、そりゃそうだよね、向こうは高級車って言ったらロールスロイスとかと比べられるんだからね、内装はすべて本革と本物の木で作らなきゃダメでしょw
と言う事で、この本・・・・ある意味で本物の「自動車文化」がある国の人が書いた本と言える、日本はここまで来てもとうとう「自動車文化」は生まれなかったと思う、または生まれていたとしても背景がまるで違うと言っていい、自動車という物への厳しい目と一種の「愛」は、やはり物質文明の本場の人達とは日本はどこかが違う気がした、この著者が日本車を「デザイン」や「味」と言う切り口からぶった切ったらいったい何台の日本車が生き残るのだろうか?・・・と、そんな風に思った次第だ。
ちなみに・・・・
オプティはこの本には載ってません!w
Posted at 2017/01/22 22:41:28 | |
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