男の空間。

昭和世代の男子なら、子供の頃に秘密基地を建造した経験があるはずなのですが、如何でしょう？

自分で言うのもなんですが、幼少期の私は1級秘密基地建築士として数々の秘密基地を建造して参りました。

第二次ベビーブームの産まれ、団塊二世世代の私は、所謂【ニュータウン】と呼ばれる新興住宅街に住んでおりました。
このニュータウンは、
バブル経済による好景気の影響もあり、
私が中学校を卒業する頃まで近隣の山や森を切り開きどんどん拡張されていました。

私の住まいは比較的新しく、既存の住宅街と拡張する建設予定地の境目に位置し、住宅建築前の更地が近隣に乱立している状況でした。

そしてそこには、小さなプレハブの詰所があり、詰所の中には建築資材などが雑然と大量に置いて有りました。

建設現場が休みになる日曜日には
小学生だった我々は、長閑な時代の鍵も掛けてないその詰所に進入し、
1級秘密基地建築士である私や、現場監督、内装担当者などが意見を持ち寄り、
厳選された足場用の鉄パイプや、ジョイントなどを持ち出し、棄ててあるコンパネや段ボール、木の枝や葉っぱ、針金などと併用して秘密基地を建造して遊んでました。

そしてそこには、

【自分の空間】

がありました。
大人や他人に干渉されない自分達だけの空間です。
各々が拾ってきた、異様にパリパリのエロ本やコロコロコミック、珍妙な昆虫の死骸、チャンバラに向いた形状の木の枝など、様々な宝物をストックし、
我々の束の間のリラックスタイムを演出しておりました。

しかし、ごく稀に建設会社のオッサンが休日出勤の見廻りで我々の秘密基地を発見し、こっ酷く怒られ、基地を破壊される事態も発生した為、
必ず１人を見張り役に置き、銀玉鉄砲片手にオッサン登場時にはすぐに基地より緊急脱出出来る体制をとっていたのも今となっては良き思い出です。

男って生き物は元来、自分のテリトリーを作り、それを侵す外敵に立ち向かうってのが生まれ持っての性質と言うか体質というか本質、そんな感じのものな気がします。




大人になった男達の【自分の空間】は、
やはり現代ではクルマのドライバーズシートと言う事になるんでしょうか？
シートに収まり、目の前にメカメカしい各メーター類、スイッチ類、カーナビなどが並び
、好きな時に音楽が聴けて、雨でも雪でも暑くても寒くても朝でも夜でも、流れる景色を眺めながら快適に好きな所に行ける。

夜になれば、綺麗な照明がムードを演出し、女の子だって口説けるプライベートな自分の空間。

そんな私の秘密基地、ドライバーズシートが女の子の次に大好きです。







幾年かの月日が流れ、バブル経済の崩壊と共にニュータウンの拡大計画は頓挫し、現在では我が実家のあるニュータウンも過疎化の波に押されております。


たまには実家帰ろっかな…。