一部の人にはネタバレしてますが・・・^^
今回でRX-7ネタも最終回です。よろしければお読みください。
エンジンブローの具体的対策方法
さて、これまで全6章に分けて解説してきましたが、ゴチャゴチャになっているかと思いますので、簡単にセンテンスごとにまとめます。
・ロータリーエンジンがレシプロエンジンより壊れやすいのは、 レシプロより高温だから。
エンジンが壊れる原因は、クルマを動かすための原動力となっている繰り返し作られるエンジンの熱が金属製のエンジンにダメージを与え、徐々に変形などして最終的に壊れる!
だから、エンジンの熱を出力のさまたげにならない程度にコントロール=対策することが、最終的にはエンジンの長寿につながる。
・ロータリーエンジンがレシプロに比べて高温である原因は・・・エンジンの中心部はエンジンオイルだけでエンジンの熱を吸収して(油冷)エンジンの外周は冷却水だけで熱を吸収する(水冷)といった分離型の冷却方法なので、レシプロにように2つの油脂が同時に熱を吸収する一体型の冷却方法より熱の吸収率がおとるから。
RX-7のFD3SやRX-8は、エンジンとラヂエターの位置が他に類をみないほど非常に高低差があり抵抗力も大きく、冷却水の循環効率が悪いから。
エンジンの熱を吸収する冷却水が高温になる最大原因は、冷却水中に大量に発生してしまう「気泡」が原因!
気泡は、密閉状態の水路ではなかなか消滅できず、また、気泡の動きが鈍いので「膨張状態」になり、冷却水の循環がいちじるしく悪くなるから水温が上昇してしまう。また、エンジンとラヂエター位置に高低差があると抵抗により気泡の停滞する。
エンジンの熱を吸収しているもう1つの油脂、エンジンオイルは現在、大まかに分けて「化学合成油」と「鉱物油」の2種類になるが、化学合成油は、分子が細かく放熱作用が悪く、鉱物油は分子が大きいので放熱作用が良い。ロータリーエンジンの場合、冷却方法が分離型なのでレシプロ以上にオイルによる冷却作用の役割は大きく、また、高温なので冷却できるエンジンオイルを使用するべきだ。
それでは本題のエンジンブローの具体的対策方法です。
まず、ロータリーエンジンは、特殊な冷却方法によって高温であり、冷却水とエンジンオイルの役割は、レシプロ以上に大きいことがお分かり頂けかと思います。
しかし、その重要な冷却水とエンジンオイルを効率的に使わないとエンジンの熱を吸収率が悪くなり、常にオーバーヒートなど明らかな高温状態ではなくても、燃焼室で繰り返される高温なエンジンの熱によって金属製のエンジンにダメージを与え、すぐに壊れなくてもエンジン寿命を縮めてしまっているのです。
なので、高温なロータリーエンジンを長寿にさせるのは、オーナー自身が、できるだけ効率的に冷却水とエンジンオイルが働いてくれるように対策するしか方法はありません。
それでは、冷却水とエンジンオイル、それぞれどうしたら良いのかをここから先、解説しましょう!
◆冷却水の対策について◆
冷却水はが効率的にエンジンの熱を吸収してくれるようにするには、冷却水の循環をスムーズにさせることにつきます。
冷却水の循環効率が良くなれば、水温も安定し、例え、上昇速度が速まって水温が騰がったとしても、少しの時間で水温が下がり、また安定してくれます。
さて、そんな大切な冷却水の動き=循環ですが・・・
「エンジンの熱を吸収した冷却水がラヂエターへ排出され、ラヂエターによって熱を持った冷却水が放熱され冷却し、再びエンジンへ流れ、熱を吸収する」といった具合です。
この冷却水の動き=循環を良くさせない限り、どんな対策をほどこしても「冷却水がエンジンの熱を吸収する」といった最大の働きをしてくれません!
逆に、冷却水の循環効率が良くなれば、沢山販売されている対策品が最大限に効果を発揮してくれます!(発揮しすぎる場合もあるので要注意!)
では、その冷却水の循環効率を良くさせる具体的方法は・・・
“冷却水の循環をさまたげる最大原因の「気泡」を除去させること!”です。
もちろん、ラヂエターの位置をできるだけエンジンの位置と平行になるようにレイアウトを変えて、循環効率をアップさせることも、対策の1つですが・・・
この方法は、様々な箇所を社外品に交換しないとならず、非常に大掛かりな作業で金額的にもかなり掛かります。
しかし、この方法を取っても「気泡」が除去されることは無いので費用と効果を考えると、ノーマルに近いRX-7やRX-8に乗っている方々はどうかと思います。
では、実際に気泡を除去する方法は、どうするか?をお話します。
実は、RX-7のFD3SとRX-8には、元々、気泡を除去するための装置がついています。
その装置がエアーブリーザータンクと呼ばれているRX-7のFD3Sならば、バッテリーの横にある黒っぽい四角い箱がそうです。
黄色いキャップがついている四角い箱が
FD3Sのエアーブリーザータンク
RX-8は、FD3Sよりももっと大きい物がついています。
このエアーブリーザータンクが元々ついているのでラヂエターとエンジン位置に高低差があっても、冷却水の循環効率はアップしており、水温も緩和されています。
もし、無かったら大変なことになっています。
しかし、そんな冷却水の循環効率純正品のエアーブリーザータンクですが少々欠点があります。
それは、まず気泡を除去するために水路にプラスしてエアーブリーザータンクへ気泡を運ぶためのバイパスホースを増設しているのですが・・・、RX-7のFD3Sの場合は、そのバイパスホースが細すぎるのと、少な過ぎて、冷却水がスムーズに循環できるほど十分に気泡を取り除けません。また、取り除ける気泡量が少ないので仕方ありませんがエアーブリーザータンクの容量が少な過ぎます。
RX-8は、容量的にはそれなりに大きいので問題はありません。しかし、バイパスホース量が全然足りません。
あとは、RX-7のFD3SもRX-8も、何故かこのエアーブリーザータンクが樹脂製なので、強度面でおとります。
おそらく、樹脂製にしているのは・・・、エンジン稼働中はタンク自体が高温になるので、金属性より樹脂製にした方が、万が一触ってしまった時に「ヤケド」などの危険性を回避するためだと思います。
しかし、強度面から言うと樹脂製は金属製より落ちるので時間経過と共に劣化がすすみ、タンクが割れてしまうケースが結構あります。
実は、密閉状態の中の気泡を除去するには「外圧」が必要で圧力によって、気泡を爆発させ消滅させます。
なので、エアーブリーザータンクに圧力がかかるキャップを装着させるのですが、圧力を掛けて気泡を爆発させるときの衝撃力は非常に大きく、“数千~数万気圧”にも及びます!
しかも、その気泡の爆発は「無数」と言えるほどタンク内部では起きているのでものすごい衝撃力にエアーブリーザータンクは耐えているのです。
「たかが空気の泡」なのに、密閉状態の中の気泡は、かなりの威力を持っているのです。
ですから、純正の樹脂製のタンクだと金属製より強度面におとるのである程度の年数を使用すると、必ずパンクします!
いずれにしても純正のエアーブリーザータンクは十分ではありません。そして、タンクの強度の他にも、バイパスホースの量も不十分。
エンジンが稼動している間は、冷却水の中は、かなりの気泡量が停滞しています。高速道路で例えたら、年末年始の渋滞?停滞?のようなのですが・・・、もし、この高速道路に迂回できるバイパス道路が、適切な場所に適切な本数、しかも、そのバイパス道路の道幅があったなら大渋滞は絶対的に緩和されます!
クルマの水路も、渋滞している高速道路と同じようなものです。
水が通る限られた本数の道である「水路」の中には、無数とも言えるほどの気泡が渋滞もしくは停滞しています。しかも「密閉状態」という、非常に動きが制限される中での渋滞なのでパンパン!
その密閉状態の中の気泡の渋滞を緩和させるには・・・、
まずは、気泡が動けるように、どこかに空気を取り込める広場を作ってやり、冷却水のメインストリートの水路全てから、広場までのバイパス道路を作り、且つ、気泡ができるだけ沢山通れるバイパス道路の太さにしてやれば、完全な密閉状態ではないので、気泡が冷却水の流れと共に動くようになります。
そうすれば、バイパス道路は広場へつながっているので気泡が広場に行き圧力を掛けてやり、気泡を消滅させてやる。
このように高速道路のクルマの渋滞を緩和させる方法と非常に似ています。
ここで言った、広場は、エアーブリーザータンク。冷却水のメインストリートは、メインストリートというだけに太い水路なのでラヂエターホースやヒーターホース、ラヂエタータンク、サーモスタットケースなどの水路の主要部分であり・・・、バイパス道路は、バイパスホースです。
だいたいお分かりいただけたと思いますが・・・、
ここでスムーズに冷却水が動き循環効率が良くなる気泡の消滅方法をまとめます。
1、密閉状態を解消するために、空気を取込めるエアーブリーザータンクを設けて、密閉状態を解消して気泡を動けるようにしてやる。
2、主要な水路から、各水路の太さに合わせ適切な太さを持つバイパスホースを設けて、エアーブリーザータンクとつないで気泡を運ぶ。
3、気泡が消滅できるようエアーブリーザータンクに圧力キャップをつけて圧力をかけて気泡を爆発させて消滅する。
4、気泡に圧力が加わり消滅する際は、驚異的な威力が発生するので、より多くの気泡をエアーブリーザータンクに運び爆発させる場合は、強度力に優れた材質=金属製でないと耐久性に欠ける。
尚、密閉状態を解消させるためにエアーブリーザータンクによって空気を取込めるようにしますが・・・、かといって「大気開放」にすれば、冷却水中に空気が混ざり、
余計に冷却水の動きが鈍るので、それはできません。
従って、空気を取込む方法は、エアーブリーザータンクと冷却水の補充や排出先であるタンク=リザーバータンクをつなぎ空気を取込めるようにします。
以上が、気泡を消滅させる方法です。
純正品のエアーブリーザータンクも基本的にこの原理による物です。しかし、先にも言いましたが、純正品の欠けているところは・・・、
主要な水路から気泡を運ぶためのバイパスホースが無い。
バイパスホースがあっても細すぎて、気泡がスムーズに運べない。
エアーブリーザータンクの強度不足。
などです。
ですので、エンジンの寿命をできるだけ伸ばしたいと思うなら、
先に言った「冷却水の循環効率が良くなる気泡の消滅方法の4点」を完璧にサポートできる対策品を装着してやるしかありません!
◆エンジンオイルの対策◆
「エンジンオイルの具体的対策」は、実は、非常に難しく、例えば、社外の大きいオイルクーラーに交換しても、ほとんど効果は得られません。
但し、オイルクーラーが1つしか装着されていない、FD3SやRX-8の場合は、それなりに効果はあります。「絶大!」とまでは行きませんが・・・。
では、エンジンオイルの具体的対策ですが、
「使用するエンジンオイルを気をつける!」
しか実際のところ方法はありません。
ようは、エンジンオイル選びが重要なのですが、エンジンオイル選びで大切なポイントは・・・
「エンジンやそのクルマの特質を知る!」ということです。
ロータリーエンジンの場合の特質は、これまでも話してきましたが、まとめると
エンジンの中心部は、エンジンオイルだけで熱を吸収している(油冷のみ)
エンジンオイルが燃焼室に直噴して、密閉状態を保ち、
混合気の圧縮漏れをふせいでいる。
ロータリーエンジンはレシプロよりも高温
以上の3点になり、いずれもレシプロとは違った特質でレシプロよりもエンジンオイルの役割が大きいです。(これまで話してきましたが)
だから、RX-7やRX-8に乗っている方々が適当にエンジンオイルを選び、使用することはクルマの死活問題とも言えます。
さて、そんな大きな役割を求められるロータリーのエンジンオイルですが、ロータリーエンジンに合ったエンジンオイルとは、どんなオイルかと言えば
高温に強い!ということに尽きます!
では、高温に強いオイルとは一体どんなオイルかと言えば、
これまでの復習になりますが・・・
大きな分子同士が腕を組めば、すき間ができ熱を持ったときに放熱しやすく、更に、大きな分子同士がつながる時は、腕を組んだような状態になるが分子が大きければ腕も太いので頑丈だから、強度と放熱力に優れた油膜を形成することができる!
以上が、熱に強いエンジンオイルです。
そして、このような分子を持ったエンジンオイルは「鉱物油」に限られます!
また、復習になりますが、現在、主流になっている「化学合成油」のエチレン系基油は、全く粘度が無く、高分子(分子が細かい)。
そして、粘度を出すために調合されている「添加剤」もベースも
エトレン系なので高分子で、配合量は、基油30%+添加剤70%なので化学合成油は、非常に高分子のオイルということです。
分子が細かいと、放熱性に欠け、油膜力も劣ります。
以上の点から、全ての化学合成油が悪いわけではないが「主流だから!」と思って、使ってしまうことは非常に危険であって、高温のロータリーエンジンには、不向きと言えます。
また、エチレン系の化学合成油の主成分は、ポリエチレンと同じで燃やしたり、高温になると、ビニールを燃やした際に出る「黒いスス」のようなスラッジが発生し、スラッジの発生はオイル劣化に直につながるので・・・
燃焼室にオイルが直噴しているロータリーにとっては、スラッジによるエンジンへのダメージといった影響を及ぼしてしまいます。
いずれにしてもロ-タリーエンジンは高温でレシプロよりも役割が大きいエンジンオイルなので、エンジン特質に合った物を使いたいです。