「モルフィネスさんの言うとおり、チリソスが自殺したと言うのは理解出来ないわ。それ程、潔いならあんな事しないで欲しかった。それに、死ぬくらいなら逃げてもらいたかった。」自分の部屋でエレナは一人ごとのように呟いていた。今この部屋にはエレナ自身と侍女頭のソルティアがいるばかりである。昨日の夜の内にヘルデン達がフーシエを捕えたという報告は既に届いていた。逃げてもらいたかったとは、チリソスは謀叛に加担したのですよ。」呆れたようにソルティアは主の顔を見詰めた。心なしソルティアの顔色は良くない。「そうであっても、私はこれ以上身近の者に死んで欲しくないのです。それにしても、何故チリソスは逃げ出さずに自害したのでしょう?。」「ひょっとしたら、チリソスはセイリュウと特別な関係にあっ劍橋英語課程價錢 たのでは。愛おしい殿方の為なら女は大それた真似をする事も有り得ますし、直ぐに後を追ったのも分かる気がします。」「愛おしい殿方。ソルティアから珍しい言葉を聞くものです。そなたにも居るのですか? そんな人が。」「私には居ませんよ。姫こそどうなのです。」「私・・・今は私の為に命を賭して戦ってくれた方々にどう報いようかと、そればかりを思っています。」「そうですか。それは大事な事でございますね。でも、老婆心で一言忠告させていただくなら、ハンベエにだけは気をつけた方がよろしいかと。あの者は何を考えているか知れません。ステルポイジャン達と戦ったのも果たして姫の為やらどうやら。」「お黙りなさい、ソルティア。口が過ぎますよ。.「申し訳ありません。」エレナはソルティアの口をぴしゃりと塞いだ。尤も、ハンベエがステルポイジャンと戦ったのはエレナの為だけでない事は戦う前からハンベエ自身に説明を受けていたエレナであった。亡くなられた太后陛下の下で働いていたフーシエを捕えたとの事。フーシエはルキド達に私の命を狙わせた張本人何か分かるかも知れませんね「そうでしょうか。姫のお命を狙った者の言う事等信用しかねますが。」やはりソルティアの顔色は良くない。一方、王女エレナの顔色もあまり良くないのである。エレナの表情には何かを恐れているような諦めているようなものが浮かんでいた。 ハンベエとモルフィネスはフーシエと対面していた。捕えられて連行された時はふん縛られていたフーシエであったが、今はその縄も解かれ机につかされて、両の手首を痛そうに代わる代わるさすっていた。この小男は意外ににふてぶてしい顔付きをして、捕われの身をさほど恐怖していない様子であった。さて、私に聞きたい事が有るのでしょう。何なりとお聞き下さい。」 薄気味の悪い笑みを浮かべてフーシエがほざいた。『引かれ者の小唄』という言葉が有るが、フーシエの態度、どうも死を覚悟した者の開き直りとも取れない。ハンベエ達が自分を簡単には殺さないだろうと妙に高を括っている雰囲気があった。 ハンベエは無表情にその様子を見ていた。モルフィネスはいつもの鉄仮面、氷のように冷たい視線を向けてフーシエの挙動の端々まで注視している。この二人の視線に曝されて尚もふてぶてしい態度が取り続けられるとはフーシエも意外に太い奴なのだろうか。毒婦とも言うべきモスカ夫人に側近く仕えていた男である。一筋縄には行かない人間に違いあるまい。. 「では聞くが。」最初に口火を切ったのはハンベエであった。しかも次にハンベエが尋ねたのは意外な事であった。「モスカは死んだのか。」フーシエは虚を突かれたようにキョトンとした顔になった。てっきり王女エレナ殺害の企てを短兵急に聞かれると思っていたのに、この剣術使いが最初に聞いて来た事はとっくに舞台から引きずり下ろされているはずのモスカ夫人についてであった。(何だ? トンチンカンな質問をする奴だ。それともモスカ様が生きていて背後で私を操っているとでも勘繰っているのか。・・・思えば、モスカ様もまた時に物の化や鬼女かと疑われるほど恐ろしげな一面が有った。或は、この連中モスカ様の怨霊でも怖れているのか。) フーシエの心にふとハンベエを侮る心が兆した。しかし、ハンベエはフーシエの心中等まるで知らぬかのように相変わらず無表情にフーシエを見ていた。ヒョウホウ者としての癖なのか、殆ど一切感情の読み取れない顔付きをしている。
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