厚くて(脂肪がwww)余計暑く感じるもので昼飯なんざ食ってらんね~状態の図面屋です
持て余した昼休みで第3回を書いていきます
前回は「質量」と「荷重」が違うよという基礎物理の話で非常に退屈でしたね(汗)
前回のフリから行けば本当は「荷重」の方を使ったお話を進めるのが筋ですが、リアウイングがどう働くかの前にステアリング特性から行くのが本来の順かな???と思いまして、「質量」からくるアンダーステアのお話です
駆動形式や重量配分(より正確に言えば質量配分か???)によって色々な話をするべきですが、「足跡」の傾向からすると多くの方がFFユーザーなのでここではFFのみに焦点を絞ります
FRユーザーの方にもご覧頂いてますが…私より「走る事」に長けている方が多いので問題ないですよね(笑)
今回は足回りのアライメントとか前後のロール剛性の差からくるステア特性の変化とかはすっ飛ばします
いや、すっ飛ばさせてくださいm(_ _)m
足回りの話をしてしまうとそれだけで長期連載が出来てしまうし…同業者が酒飲みながら足回りの話を始めると朝まで終わらなかったりします(汗)
私ごときペーペーの図面屋が理解しきれるような浅い世界では…orz
「FFはフロントヘビーでアンダーステアが強い」というセリフ、クルマが好きな方なら必ずどこかで目にしたり耳にしたことがあるかと思います
全くもって正解ですが、ここで言う「フロントヘビー」というのは前回でいう「質量」の事なんですね
簡単に説明しますと
クルマが旋回(円運動)する為には回転軸に向かう力が必要です
遠心力(慣性力)に対抗する力ですね
宇宙ステーションが地球の周りをグルグル回っていますが、アレの場合地球の重力がそれに相当します
クルマの場合、クルマが何らかの力を外に発揮するにはタイヤの力しかありません、タイヤの横方向へのグリップ力が回転軸に向かう力を発生させます
遠心力(F)={質量(m)×速度の2乗(v*v)}/回転半径(r)
これに対応するだけの力をタイヤが発揮しなければなりません
ようやく質量がでてきましたね
そうなんです、コーナリング時にクルマに掛る力は単純モデル上では「質量」だけ考えればOKなんです
(いまさら当たり前すぎですか…orz)
地球の上だろうが月の上だろうが、旋回に必要な力はどこに行っても同じですね、重力加速度は考慮しなくていいのですから
でタイヤのグリップ力が遠心力に負けてしまうとクルマは円運動の中心から離れていきます…宇宙ステーションであれば地球の重力を振り切る位の速度を得ると周回軌道を外れどこか遠くにイスカンダルにでも逝ってしまいます
…あれ???これではどんなクルマでもアンダーステアになってしまいます…orz
うーん、実はですね急激にグリップ限界を超えた場合は今示したのと同じ現象が起きるはずです学問的に(汗)
その場合「曲がれない」はずです、どの駆動形式でも
「ドリフトなんか見てると凄い角度で内側向いてるじゃないか!!」と怒られそうなんですが…
少し本題から外れますが、「ドリフト」って「オーバーステア」なんですかね?
私見ですが、乗ってる本人から見ればステアリング操作以上にクルマが内側を向き、カウンターステアさえ必要ですが、クルマから離れて俯瞰からその走行軌道を見たら本来曲がれるはずの軌道から外に外れている事、多くないですか?
勿論曲率の小さいコーナーに合わせて上手く集束させたりできますし、分かりやすく「アンダーステア」のように見えませんがタイヤの向きに(タイヤのスリップアングル)対して充分にクルマの進行方向は変わっていますか?
フロントはカウンターステアがあるので分かり難いですが、仮にリアタイヤだけに注目した場合、どうでしょう?
人それぞれ「アンダーステア」とか「オーバーステア」とかに対して捉え方があるとは思いますし、どれも間違ってはいない(私と違う考え方であっても現象の過程と結果、切り取って表現している部分が異なるだけで、過程と結果の区別もお互いにあいまいなところもあり事象のある時点ではどちらも正しいのです)
ハンドルを切った量、「操舵角」に対してクイックに反応するとか、ドリフトに代表される「ヨー」がどう出てくるかはちょっと置いておきます
ま、操舵角もヨーも影響を大いに与えるんですけど、あまりにケースバイケースなんで…
さてと本題に戻ります
じゃあアンダーステア特性とかオーバーステア特性とは結局何なんだよと言うことになります
実際クルマを運転していてタイヤが一気に限界を超える事は…まあ意図的に発生させるのを含めると実は結構ありますが…サーキットのような綺麗なドライ路面を走っているとそれ程ありません
多少スキール音を出しながら(この段階でスリップしています)じわじわと限界を超えます
この時に注目してみます
FF車のタイヤは前後同じサイズであることが大半です
ここからは勝手ですが経験則からいくつかの事を定義します
説明していたら簡単なレポートが書けてしまうレベルになるので割愛させて~(泣)
まずタイヤにおいてクーロンの摩擦の法則
摩擦力F=μmg(mgはタイヤに掛る荷重ですね)
のμ(摩擦係数)は質量mが大きくなる程 小さくなると定義します
測定や経験則においてその傾向は確認されていますし、色々なデータがあれば摩擦係数を導き出す方程式もあるとは思うのですが…ちょっと私には理解できません
簡単に言えば荷重が2倍になっても摩擦力は本来のクーロンの法則の通り2倍にはならず1.5倍とか1.9倍にしかならないと言うことです
※本当は接地面に掛る圧力が2倍になっても摩擦力は2倍にならないと言う表現が正しいのですが、クーロンの摩擦の法則では面積の定義がありませんので、ものすごく簡略化しました
そもそも本来クーロンの摩擦の法則はタイヤのような粘弾性体には適応しません
もうひとつ、先程の遠心力の考え方でクルマを1つの点として定義しましたが、今度はふたつの点として捉えます
前輪軸と後輪軸それぞれを別な点としてそのふたつを剛体結合したモデルを想像してください、今回のブログに添付してある画像のイメージです
大きい赤い〇の中心がフロント車軸のセンター、小さい赤い〇がリア車軸のセンターで前後の質量は不均等で前の方が大きいとします(FFだからね)
この図はタイヤがグリップ限界を「じわり」と越えていく瞬間の状態の簡易モデルです
タイヤの限界を超える=スリップ率が発生するです
ハンドルから伝わる手ごたえで行けば、時たまステアリング反力が小さくなる瞬間を感じる「あの状況」が限界を超えるかこえないか、というか越えたり戻ったりしている状況であり今回定義している状況です
スピンするとか、煙が出るというのはタイヤの限界を大きく逸脱していると思ってください
最後にμの値をフロントは0.9、リアは1.0と仮に仮定フロント軸の荷重(から分かる質量)はリアの2倍 前後重量配分2:1 と仮定します
この場合、リア車軸が受け持つ質量をmとするとフロント車軸が受け持つ質量は2mです
摩擦係数は決して正しい数字ではありませんが「μ(摩擦係数)は質量mが大きくなる程 小さくなると定義」には当てはまっていますので傾向をつかむことはできますね
フロント軸が発揮できるグリップ力は0.9×2m×g(重力加速度で定数)
リア車軸が発揮できるグリップ力は1×m×g(重力加速度で定数)
グリップ力はフロントの方が大きいですね
この計算では1.8倍です
次にフロント軸とリア軸が受ける遠心力を考えてみましょう…って同じ円周上を同じ速度で回っていますから比率とすると質量の差がそのまま出てきます(数字自体でたらめだから計算する意味はあまりないですね)
フロント車軸側はリア車軸側の2倍の力がかかるのです
今回の計算でフロント車軸は回転速度(旋回速度)が上がればリア車軸より先にグリップを失い、回転運動を維持できなくなることが見て取れます
これがアンダーステアの発端です
続いてフロントタイヤがグリップを失った次の瞬間を考えてみましょう
タイヤが滑り始めて、回転運動から逸脱します
そうすると本来は車体という要素でフロント車軸を結合されているリア車軸に遠心力だけでなく、フロント車軸に引っ張られて回転方向から外れていく力がかかります
前後のグリップ力の限界の差が小さければその力に負けてリア車軸も程なく回転運動から外れてしまいます
極端な言い方をすれば前後共グリップを失い円運動から逸脱しつつあるこの瞬間、タイヤは確かにクルマを支えていますが、クルマは水の上に木の棒なんかを浮かべたのと同じ力学的状況になっています
路面に対して固定されている点がないですからね
さて水に浮かべた棒のどこかに力を加えると力を加えた方向にも動きますが、重心を押さない限り回転運動も同時に始めます
この時のクルマの状況は上で説明した水に浮かべた木の棒と同じで。フロント車軸のグリップ力とリア車軸のグリップ力がそれぞれ車両中心軸に作用してクルマにヨーモーメントを発生させようとしている事になります
重心軸周りのモーメントは力×距離(この場合重心までの距離)です
前後重量配分2:1ですから、フロント軸とリア軸の重心からの距離は逆比で1:2となります
そうすると前述のグリップ力と重心からの距離から
フロント車軸から重心に作用するモーメントは1.8mg
リア車軸から重心に作用するモーメントは2.0mg
となります
図にも書き入れていますが、モーメントの合力として緑の矢印のような旋回方向とは逆のモーメントが発生します
このモーメントを受けたフロント車軸はさらに旋回軌道から逸脱する方向へと力を受け、ますますアンダーステア傾向になってしまいます
あ~長かったorz
これがアンダーステアの簡単なモデル上での発生プロセスになります
MR車等でオーバーステア特性になるのは前後重量配分が全く逆なのでご理解いただけるかと思います
「前後重量配分50:50の理想のシャシーレイアウト」という表現はこういった単純モデル上ではモーメントによるグリップ力の変化が生じない事が根拠となっているわけですね~
ただこの話、加減速やサスペンションの働き、タイヤの発熱によるμの変化等を全部無視していますので鵜呑みにするのは危険です
走る状況、クルマのその他の沢山の要素によって状況が限定されると理想の前後重量配分も変わってしまう…と個人的に考えています
それでも条件の変化にアジャストしやすいという点ではある種の理想かもしれませんね
我々消費者は販売しているクルマを買ってくるだけです
前後重量配分60:40のFF車を50:50に改造することはとてもできません
また質量は荷重も生み出します
前輪軸荷重が減少しすぎてしまったFF車は加速時にスリップしやすくなることは容易に想像できます
単純に軽量化でFFをニュートラルステア特性が得られるようにするのは現実的でもなければ速くも走れません
じゃあ、どうすればこのアンダーステア特性を誤魔化すことができるでしょうか?
・まずはμの値が前後で同じ数値を示すように近付ける
(※)箇所のようにタイヤの摩擦力は接地面の圧力が2倍になっても2倍より小さくなってしまいます
同じグリップレベルのタイヤを使うなら重量がフロントのタイヤを太くして接地面の圧力を下げると前後タイヤのμの差が縮まります
もしくはフロントに元々摩擦係数の高いタイヤを装備することで同じ傾向を発生させることができます
でも普通は前後同じサイズのタイヤを使いますよね
また前後でタイヤのグレードを変える場合、今回の話では取り扱いませんが発熱バランスが変わって、極端な結果、アンダーステア減少ではなくオーバーステアが発生する可能性もあります
そしてこれらの方法は一般消費者にとって前後ローテーションができなくなり非常に痛いです(汗)
・質量を増やさずにmg(質量×重力加速度)より荷重をかける
荷重、(厳密には接地面圧力)が大きくなるとμは減ってしまいますが、摩擦力が小さくなるわけではありません
タイヤが壊れない限り効率は良くないですが摩擦力は一応増加します
一時的ではありますがこの荷重を増やしたり、減らしたりして前後のグリップバランスを変えることが「荷重移動」です
そして速度に応じて荷重をかけてくれるのが「ダウンフォース」なんです
ようやく前回と繋がりましたね(汗)
もう既に前回の最後で言ってますが、これらによって得られる荷重は質量と無関係なのです
だからクルマが「曲がる」、つまりグリップ力だけが増してくれるわけです(荷重移動は減りもしますけど)
次回はこの荷重の話にようやく移って行きます