オイラの愛車遍歴 4 ≪私の人生で、最も影響を受けたクルマ達≫其の陸

・・・しかし！・・・


　ボンネット前方よりチョット湯気の出始めを確認してしま

いました！(恐怖！)

　最初“縮流”かと思いましたがF-1でもあるまいし、時速

80キロでそんなのが出るはずも無く、当然これはクーラントの蒸気以外に考えられません。　みる

みるフロントガラスに霧状の水滴が張り付き視界を遮り始めました。もう泣きそうです…というより

私が幼児だったら既に泣いていたでしょう(苦笑)

　幸い料金所にはさほど車は多くなく、早めに通過する事は出来そうです。が、既に煙を噴いてい

るので、とにかく急いで空いているゲートに向かいます。すばやく500円玉をコインケースより取り

出し、料金所のおじさんに渡します。ちょっとトロそうなおじさんでしたが、しょうがありません。お金

を渡します。しかし、おじさんの動きはスローモー。益々蒸気の勢いが強くなります。ついに私は叫

びました。

　私：「燃える燃える燃える！早く速くはやく！はやくしろー！！！」

と、その時

　「シュオーーーー！！」

と、AMGが叫びました！ついに決壊です。周りは煙に包まれます。ようやくおじさんは状況を掴め

たようです。

　「あ、あら、ら、ら、れれれ、あやー！！」

　「レレレのおじさんやってる場合じゃねーんだよ！はやく！はやくしろ！！」

　「なななな♪、どどど♪、どうしししししまままましょしょううう⤴♪♪？！」

　「なに音程刻んでんだよ！お釣りだ！おつり！」

　「あわ、あわ、あわわ！　はは、はい、すすす、すいませんでした！どうぞ！」

慌てたおじさんは、私が渡した500円玉をそのまま今度は私に渡しました(爆)　しかしこれは、おじ

さんだけでなく私も焦っていたのでこの時は気付きませんでした。室内にも蒸気が足元のペダル

の隙間から侵入し始めました。あっという間に蒸し風呂状態。水温計はレッドゾーンを振り切って

います。というより、もう殆ど水冷エンジンとは呼べない状態でしょう。とにかく走るしかありません。

これから先は日本一の超高速ステージである湾岸神奈川線です。もう水温は気にする必要はあり

ません(笑)　走行風によるクーリングしか無い“空冷エンジン”の誕生です(苦笑)　当然パワーは落

ちてきましたが、不思議とエンジンストールの兆候は見られず、走っている限り大丈夫のようです。

しかしこの間にもあらゆる別の箇所に負担が掛かっている事は言うまでもありません。この走行が

原因で後に半年に渡り、様々な当時原因不明のトラブルに見舞われる事になります。まあ、それは

別の時に・・・。


　走行を続けていると、ヒーターの温度が尋常ではなくなって来てしまいました。吹出口が融けるん

じゃねーかと思うくらいの熱風が車内に吹き込んで来ます。高速道路上ですが、全ての窓を全開に

します。それでもボンネット上の“ゆらめき”は一向に治まる気配は無く、このままでは炎上の恐れも

出てきました。ご存知だと思いますがMBのボンネットは薄っぺらくチャッチイので、とても燃えやす

いのです。無論この時、私も“藤井フミヤ”や“石田純一”の仲間入りを願う部分も少しはありました、

が、彼等とは財力が違います。現在“無職”のスーパー・ボンビーです(苦爆)　燃やす訳には行きま

せん。当然ですが(苦笑)

　もっとエンジンルーム内に風を送り込み、エンジンはおろか、ボンネットを冷やす方法はないか

必死で考えました。

　「そーだ、スピードを上げよう。いや、エンジン回転を上げては駄目だ。

　　　　　　　　そーだ、車を止めよう。何言ってんだ、高速にわざわざのった意味が無い・・・・」

そんな混乱する頭を少しずつ整理していくと、あるひとつの結論がぼんやりと浮かんできました。

　「よーし、ボンネットを開けよう」

一見無謀なようですが、最近の車にはボンネットにもストッパーが付いています。これは賭けです。

そうと決まれば即実行に移ります。すると段々頭が冷え、そして冴えて来ました。私は乱世向きの

様です(苦笑)　ストッパーが付いているとはいえ、高速走行でいきなり開けては風圧で壊れてしま

うかもしれません。一旦車速を落とします。だいたい時速60キロ位まで落とすと、一息吐きボンネット

オープナーのレバーを引きます。

　「ガコン！」

上手く開きました。ボンネットが僅かにせり上がります。車高が上がったような錯覚に一瞬陥ります。

再び車速を上げます。水温系の針は未だレッドゾーンを振り切っています。80キロ、100キロ、120キ

ロと速度を上げていきます。うまい具合に風もアゲインストになっています。視線は水温計に釘付け

になります。すると、なんと、じわじわと針が動き始めたではありませんか！　針が順調にレッドゾー

ンを下がっていきます。尚も息を止めて凝視し続けます。すると最終的に大体真中やや上辺りで針

は止まりました。

　「正真正銘“空冷”に、なりやがったぁ！！　わははははははははは！！！」

笑った。俺は“蘇る金狼”で松田優作がカウンタックの中で笑ったように爆笑した。こんな言い方で

は余りにもカッコイイと非難が来そうなので、正直に書きますが、その笑いには“涙”が混じってい

ました……（苦笑）


　30分後、無事自宅ガレージに到着した私ですが、目の前には、見るも無残なAMGの姿がありまし

た。しかし、私の姿の方が、もっと無残だった事でしょう(笑)　一言で言えば“ボロボロ”でした。

　急いでボンネットに水をかけると、≪モアー≫っと湯気が立ちます。危なかった。油ひいて卵を落

とせば、某コマーシャルの如く、目玉焼きが出来た事でしょう。水をかけた直後、ちょっと試してみた

かったという余裕が出てきました（笑）

　一息つくと近くにある車屋ヤ○セ(当時)に連絡を入れます。

　「オーバーヒートしちゃったよ」

　「今どちらですか」

　「自宅」

　「ではローダーを直ぐに向かわせます」

　「ありがとう」

ほっと一息つきました…。


　数分後、自宅にローダーがやって来ました。手際よくソロソロと車載完了です。

　「ではお預かりしまーす」

ローダーは去って行きました。



　「ふ～～！」

大仕事を終えたような安堵感に包まれます。おもむろにKENTを1本取り出し、口に咥えジッポーに

火を点します。すっかり日は落ちていました。踵を返し玄関に向かいます。その時徐々にではあり

ますが、イヤーな感じが背筋を競り上がってきました。

　「なんかおかしい。なんだこの不安感は！」

立ち止まり今の光景を反芻します。ローダーにAMGを載せて去っていく光景です。

　「あれ？ なんでローダーを呼んだのだろう？」

　「あ、あれ？ なんでココまで、走って来たのだろう？」

　「あれぇー・・・あれれ～～～！？」

　「・・・・・・ ガーン！・・・・・・」

脳天を何かが直撃した。

　「な、なんで、“天王洲” で、ローダーを呼ばなかったんだ―！！！」

気付いてしまいました……(自爆)


　前にも書きましたが、この走行が原因で、今後トラブルの嵐に見舞われる事になります…。



　　　　　つづく！