SSMのいじり方をいろいろ検討してみたのだが、結局、ATの動作をモニタするにはAT制御ユニットであるTCMという装置と通信をする必要があるということが分かり、そのためにはどうやってアクセスすればいいのか分からず断念。でも、ECUをモニタするSSMプログラムを自分で書けるくらいには勉強したつもり。こんなの、どうやって解析してプロトコルを見付けるんだろうな・・・・結構凄い。人柱で討ち死に(笑)したチャレンジャーもさぞ沢山いらっしゃることであろう。そういった多くの人の努力の上に、こういったプログラムは成り立っている訳で、ただただ有り難いばかりである。
で、本当は何をやりたかったかというと、アクティブトルクスプリットAWDの走行時の動作を解析したかったのだ。トルクを伝達する多板クラッチを制御するソレノイドのdutyがSSMでもモニタできる筈なのだが、上記のごとくTCMにアクセスしないといけないようなので、いまのところどうにもならない。
ということで、この件は物理的手段(爆)に訴えることにした。といっても大したことではなく、TCMから出力されているMP-T制御ソレノイド行きの制御信号を電圧計でモニタするのである。SSMが無い場合の診断方法として整備マニュアルでも認められている方法らしいので、それを拠り所にチャレンジである。
調べ方をここに書くと長くなるのでそれはいずれ
整備手帳の方に書くことにして、とりあえず結果の解釈だけ報告しておく。私の結果の解釈が正しければ、通常時の公称トルク配分F:R=60:40 というのは概ね正しいようである。なぜ「概ね」かというと、モニタしているものはトルクそのものではなく、多板クラッチをドライブしているソレノイドの負荷量(電圧)だからである。巡航時のソレノイド負荷は概ね50%前後で、フルに働いている=完全直結状態からすればかなり“緩い”結合ではあるが、多板クラッチによる結合であることを考えると、まぁこんなものなのかな?というところであった。
加速時にはさらにリア側にトルクが配分されるが、アクセルを結構派手に踏んでも、ソレノイド負荷は60~70%程度までであった(1速での、停止状態からの加速の場合を除く)。マックスと思われる電圧(~4V)に達するのは一瞬だけで、通常の走行時は常にクラッチが半結状態となっているようだ。しかし、逆に街中での低速コーナリングでは負荷が減少することもなく、ほぼ常時50%程度のソレノイド負荷でAWD状態を維持しているようである。ということで、以前の記事に「(曲がるときは)FF車のような挙動と思えばいい」と書いたのは言い過ぎで、曲がっている間もやはりAWD車だと思って運転しなければいけないということが解った。
また、もう一つの新たな発見として、強制FF状態ではソレノイドには全く電圧が掛からない、ということが分かった。以前のモデルでは強制FF状態にするとソレノイド負荷が100%になる仕様だった筈で、つまり、ソレノイドの動作方向がいつのまにか逆になっているようだ。
現行モデルの方式はある意味合理的である。例えば、万一ソレノイドが故障(断線など)した場合でも、FF状態にはなるがとりあえずの走行に支障は出ない。ところが以前のモデルの場合では、ソレノイドが故障したら常時“完全直結”状態になってしまい、タイトコーナーブレーキング現象などが発生して走行に支障が出ることになるだろう。
そういえば、(前の記事にも書いたように)以前のモデルではタイヤチェーン装着時には強制FF状態にしなければならなかった、という話を聞いたが、今のモデルでその必要がないのは、この動作モードの違いによるものかもしれない。以前のモデルだと、回転差を吸収するためにはソレノイドが常時フルに近い状態で働き続けるような状態になってしまうが、現行モデルでは逆にソレノイドが働かない方向の動作となるので、問題が出にくいということではないだろうか?もっとも、以前のモデルで強制FF状態にすると、ソレノイドには常時フルの負荷が掛かることになるのだが・・・。今ひとつよくわからないところではある。
ところで、ここまでに書いたことがもし正しければ、これはある種の「設計思想の逆転」を示している気がする。というのも、以前のモデルは“デフォルトがAWD,ソレノイド動作時にFWD”という設計であるのに対して、現行モデルでは“デフォルトがFWD,ソレノイド動作時にAWD”という設計だからだ。中間的な状態ではどちらも大差はないが(そしてこのAWD機構はほとんどその状態で動作しているようだが)、デフォルトの状態が真逆というのは基本的な設計変更である。もちろんおそらくは、様々な問題を検討した結果なのであろう。
もともと初期MP-Tの時代から、多板クラッチはATの油圧で動かしていた(だから、アクセルオフで油圧が下がると自然にクラッチが抜ける→トルクが抜けることでFF状態になるという仕組みだったそうだ)。油圧を使ってクラッチの結合状態を制御しているのは今でも変わっておらず、ソレノイドの動作を電子制御にしたというだけのことなので、この変更はあくまでもソレノイドバルブの動作方向の変更に過ぎないが、細かいところでチョコチョコと仕様変更がなされているのは興味深い。
いずれにせよ、もう少し測定を続けて様子をみてみたい。
Posted at 2008/02/20 01:49:44 | |
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