少し前に僕は聞いたことがある。とある女の子に。彼女は女子フットボーラーとしてかなりのレベルだった。なでしこも見えていた。しかし、高校を境に、ケガをきっかけにやめてしまった。なぜか。
「くやしくて仕方ないんです。自分がオンナだということがわかってくるから。中学に入る頃から、だんだん自分の腰に、お尻に脂肪が付き、丸くなる。それをだんだん止められなくなる。するとどうなるか? それまで自分よりヘタだった男の子に抜かれていくんですよ。フェイント一発で抜けていたのが抜けなくなって、技術の無い男の子にスピードで抜かれていく。本当にくやしい。最初はなんとか筋トレで食い止めようとがんばるんだけど、これがなかなか大変で。女子は鍛えても鍛えても筋肉がすぐに無くなるからやんなっちゃう。きっと(スケートの)真央ちゃんとかも大変だと思いますよ」。
そうなのだ。女子スポーツ選手に共通する悩みは、思春期辺りから身体が急に女性になっていくこと。主に女性ホルモンの分泌により、お母さんの身体になっていくわけで、それはそれで喜ばしいことだが、ことスポーツ選手としては喜ばしくない。
特に幼少期、男子と肩を並べてやっていた球技プレーヤーはそれが顕著だ。サッカー、野球、ソフトボール。どこかで自分の身体の「オンナ」に気づき、がっかりする。ある意味、身体のキレのピークは13歳前後。それは一流であればあるほど認めたくないだろう。結果、必然的に女子だけのスポーツに切り替えることになるわけだが、気の強い人ほど男子に負けたくないという思いがあるから燃え残った気持ちは延々と残る。というか、それがあるからこそがんばれる部分もある。
僕は、女子ソフトボール選手とも話したことがあるが、彼女たちはびっくりするほどすがすがしく、ある意味その様は、少年に似ている。真っ直ぐで、とことん熱く、がんばり屋。妙な駆け引きなし。大人のオンナのしたたかさはそこにはほとんど入り込む余地がないのだ。
でもだからこそ球技に打ち込めるのだと思う。
今回のW杯優勝を通じて得た感動の中には、ある種のピュアさがある。男子スポーツとも違う、女子のフィギュア競技とも微妙に違う透明感のある感動。変な言い方だが、色気のない、欲っ気のない感動とでも言うべきか。しかもそれは日本女性に不思議と似合う。そういう民族なのかもしれない。
尽くす、献身、ひたむき…なでしこ、とは本当に良く付けた名前だ。
こんな感動ってあったんだなぁと思う。これはしばらく浸っていられるかもしれない。
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2011/07/19 07:35:30