(またしても超長文です。ゴメンナサイ。)
さて、一週間私の胃袋に穴を開けようと第11使徒イロウルばりにシクシク精神攻撃を展開してくれた「第一次アシ車決定戦」でしたが、最大の難敵であった画像のマシンに対する顛末を特集でお送りいたします。
そもそもの発端は、
某氏よりのこのコメントでした。
「(アシ車候補は)あぁ~きっと、これのことですね?w」
ふむ、ポチッとな。
!
いやー、これはまさに1992年のフォードワークスのシエラ4×4コスワースではないですか!
こ、こ、こ、こんなお宝マシンがたったの4000ポンドー!!!!!
きょえー、大特価!!!
(この時点で私の頭の中ではこのマシンは既に「ワークス払い下げ」になっていました。)
どうしようどうしようどうしよう…
私「あのさ、シエラが出てるんだけど。」
カミさん「どこに?」
私「イギリスのeBayってオークションに。」
カミさん「ふーん。」
私「これ、ワークス車両かもよ?」
カミさん「デルクール車なの?(この辺、カミさんもだんだんマニアックに…)」
私「んん、ビアシオン車じゃないかな?」
カミさん「デルクール車じゃなくてもいいの?」
私「まー、二度と出てこないかもしれないし、ひょっとしたらデルクールがレッキで乗ったりしてるかもしれないし、まだ匂いが残ってるかもしれないし…相当欲しいんですけど!」
カミさん改め神様「ま、シエラだし、いいんじゃない?
ワークス車両ならね。」
ひえー!!
マジですかー!!!!
いや、アシ車とか家とかそういう前に、シエラですよ~!!
やっほーい!
パンパカパ~ン!!!
と、一通りカミさん、もとい、神様とにゃんぱらりん様に感謝の踊りを奉納した後、ウキウキした気分で、果たしてこの個体がワークス車両なのか、少なくともボアハム産であるのかどうかの確認作業に入りました。
が、これが大変な苦労をすることに…
とりあえず速攻でeBayとPaypalの会員登録は済ませます(この辺で既にフライング気味)。
で、まず、eBayの説明を読んでみると「この車両はDagenhamのフォード博物館から買ったものです」とのこと。
フンフン、なるほど!
調べてみると確かにイギリスのDagenhamという場所に2000年までフォードの工場があって、これに隣接する博物館が存在していたようです。
おおー、なかなかのっけから調子よさそうだ♪
「走行距離は、97000マイルだがオーバーホール済み。」
ま、過走行気味だけど、オーバーホールしてあるというのを信じるか!
…待てよ。
97000マイル?
ワークスマシンでそんなには走らないだろ??
「ボディはサンルーフなしのグッドコンディションです。」
うーん、程度は確かによさそうだよな~。
「ラージボアブロック(?)、Dump Valve(ウェイストゲートorブローオフバルブの意?)、シリコンホースに大型インタークーラー、コニのサスペンション、スパルコのフルバケ2脚、ショートシフト、安全タンク、RS500のラジエターを装備」
…なんだかチューンドカーの説明みたいだな。
ってか、91&92年のフォードワークスはレカロだぞ?
ちょっと、これはじっくり調べてみる必要が有りそうだ。
ということで、手っ取り早くイギリスのフォード本社にメールしてみました。
私「チョットスミマセ~ン。ワタシハ火出ズル国ノ怪シイ者デスガ、ソチラノ博物館ニ所蔵シテイタ車ノコトニツイテオ伺イシタイノデスガ?」
フォ「大変申シ訳ゴザイマセンガ、ソノ工場ハモウ閉鎖シテカラ大分タツノデ、ソノコトヲ分カルヒトガイマセ~ン。」
…なるほど?
こうなりゃ、自分自身の力で納得がいくまで調べてみるっきゃねえぜ~!!
ということで、本棚から過去の参考文献や写真集を引っ張り出してきての大間違い探し大会の始まりです~!!
そこで判明した数々の事実!
eBayのシエラ(以下E)、参考資料のシエラ(以下S)とします。
疑問点①:マッドフラップの色
この時代のMobil1シエラのマッドフラップの色は青なんですよね~。
これはデルクール車でもビアシオン車でも青なんです。
でも、「E」は赤のフラップをつけてるんですよね。
これって、間に合わせって可能性もあるんですが…
疑問点②:青の色調
「S」のボディ下半分の青は基本的に濃い目の青なんですね。これはMobil 1の青の色をそのまま使っているからなんだと思うんです。
でも「E」の青は微妙に明るすぎる気が…
色調差の問題かもしれませんが、前フェンダーに貼ってあるMobil 1ロゴとも若干違う色である気がするんですよね。
疑問点③:ナンバープレートの大きさ
「E」の個体はどうも、市販車用のナンバープレートが付いているような気がするんです。
でも「S」はもっと小ぶりの「競技用?」のナンバーになっている気がするんですよね。
ま、これも名義変更すればそうなるのかもしれません。
疑問点④:ルーフベンチレーターの有無
画像が荒くてよく分からないのですが、「E」の個体にはどうも2分割のルーフベンチレーターが装着されていないように見えるのですね…
ただ、これは画像がイマイチなので判断付きかねますね~。
疑問点⑤:素性
出品者の方に質問してみたのですが、「私はこの車をDagenhamのFord Museumが閉鎖されるときにMuseumから購入したとしか言えない。ワークスカーかどうかは分からない」という回答をいただいたのです。
この真偽はさておき、博物館の所蔵品がレプリカであることもあるわけで…
疑問点⑥:値段
UKのサイトを見てみると、本物のワークスカーの場合、程度中のボディシェルだけで3000£ほどの値段が付くそうです。
現在の「E」は丸ごと一台で4000ポンド!!
おまけに入札なし!!!!
普通じゃ考えられないですよね~。
まあ、この辺は惚れた女に「いま誰とも付き合いたくないの!!」なんつって思いっきりフラれているのに、「うん、そうだろうな。俺以外とは誰とも付き合いたくないだろうな~」なんてストーカー路線バリバリの勘違いをしてしまうダメ男君のように、「グフフ、こんなにお得なワークスカー、見たことねえズラ。きっとみんな気付いてないんズラネ~」って思ってしまうのが、アバターもエクボの悲しさですなあ。
まあ、頭じゃ分かってるんですが…
でもほら、イギリス中のインターネット回線が調子悪くてeBayへのアクセスが急減していて、おまけにこの経済不況で人っ子一人4000ポンドなんていう金額を用意できない可能性だって1億分の1ぐらいはあるじゃないですか。
おまけに、この出品者の人、「SIERRA」を「SERRIA」ってミススペリングしてるし、タイトルには「SIERRA」も「SAPPHIRE」とも書いてないし。
……
いや、頭では分かってるんですよ。
ということで、更にこの個体をあきらめるために目を皿のようにして「ワークスマシンではないとほぼ断言できる点」を探しまくってみました。
結果発見したのが以下の2点です。
相違点①:ロールケージ形状
キャビンのリアセクションのロールケージの張り方を比べてみると、「E」はBピラーの上両端からまっすぐリヤストラットタワー上部に2本と、左右を交差して繋ぐように2本(これは中央でX字状に交差して溶接されている)張られているように見えます。
また、ストラットタワーの上部も溶接タワーバーで結合されています。
つまり、左右のストラットタワー上部に3本のロールケージが来ていることになりますね。
一方、「S」でコクピット前方から取った写真に斜め後ろ上空からの空撮映像を加味して考えると、どうやらコクピット後方のケージはストラットタワー上部ではなくストラットの下側に向かって伸ばされているように見えるのです。
実際に、走行しているマシンを前方から捕らえたカメラにはロールケージの斜交バーはほとんど写らないのです。
この個体が実際に走っていた1992年は、ロールケージはまだ乗員保護の意味合いが強かった時代です。
つまり、ストラットタワーを結合してボディ剛性を上げるという考え方になっていなかったとしても不思議ではないわけです。
ということは、「E」の個体は、90年代後半にロールケージの役割が乗員保護からボディ剛性アップへとシフトしてきた時代に作られたマシンである可能性があります。
相違点②:マフラー位置
「S」の個体は、モンテカルロでもポルトガルでもマフラーはナビ側Bピラーあたりの位置からのサイド出しになっているんですね~。
それは、アルミの遮熱板がサイドシルに貼ってあることからも分かります。
でも、「E」の個体にはそれがないんですよね。
サイドシルが焼けた色もない。
画像が荒いのでよく分かりませんが、出口自体もなさそうに見えます。
マフラーの取り回しの変更はGr.A車両ということで簡単にできると思うのですが、もしFord Museumが本物のビアシオン車をキープしていたとして、イベントで走らせるだけなのにわざわざサイド出しをリヤ出しに変更するとは思えないんですよね~。
ということで、未練たらたらながらこの個体は「よくできたレプリカ」であると判定。
ここに、長く苦しい葛藤の旅はひとまず終わりを告げるのでした。
いや、振り返ってみれば、ワークスカーがほんの50万円強、ってことはありえないですよ。
でも渦中にいるうちは、すべての可能性が「真剣にアリ」だったんですね~。
恋は盲目というかなんというか。
キャバクラの姉ちゃんにバカスカ金をつぎ込む男の気持ちが分かる気がしました。
俺だけには奇跡が起こっているに違いない、って思うんでしょうなあ。
気持ち、よく分かります!!!!
そして、奇跡はあまり起こりません!!!
…でも、ひょっとしたらこれ本物かもしれないしな…
(以下一番前からRepeat)
で最後の最後に、タイトルに「Rally RS 4x4 Cosworth 1991 approx」って書いてあることを発見。
「approx」の直訳は「約」。
シャレじゃないですよ。
なんだよー、最初からワークスマシンじゃないって書いてあるんじゃないの、これ??
ゼンッゼン気付かなかった~。
いや、それでも結構お買い得だと思ってるんです。
いじりたいところは全ていじってあるようですし。
でも、以前にも述べたとおり「シエラ」だけは特別なんですよね~。
シエラなら何でもいいというわけではなくて、やはり特別な車だけに極上のシエラに乗りたいわけです。
Mobil 1カラーも、思い入れがあるだけに自分で全て完璧に仕上げたいですし…
夢は、デルクールが1991年にモンテで駆ったマシンそのものをガレージに並べること!
ゆっくり焦らず、です!!
ということで、後ろ髪を引かれつつ今回は見送りです~。
でもまあ、初eBayでしたし、結構良い勉強になりました~。
いろいろ悩んで楽しかったし、シエラの勉強にもなりましたしね!
改めまして、情報を頂きましたにゃんぱらりん様にお礼申し上げます~。
ということで、現在第二回戦に向けて充電中です~。