半ねりのブログ一覧

グッドワイフを観終わった。シーズン1から7まで。150話くらい。最初に観たのは埼玉に住んでいた頃、NHKオンデマンドで観たのだと思うから、実に7年かかったことになる。海外ドラマを全て観たのは初めて。

アリシアが体現したgood wifeとは何だったのか。日本的な価値観でいうとアリシアの振る舞いがgood wifeとはとても考えられない。Amazonのレビュー欄でも目立つ低評価はアリシアがビッチであるという指摘が多い。

確かにピーターの不倫を糾弾しつつ、自分はウィルと不倫し、後半は州検事選挙の選挙参謀、最後は事務所の調査員。最初は日本人好みの謙虚さと人情的なお仕事で高かったであろう好感度は、徐々にふてぶてしさを身につけtough negotiatorになり、私生活でも大胆になっていく。この辺り、日本人的にはどうにも受け付けないところがあるだろう。

しかし、それがアメリカ的、というかグッドワイフというドラマが7年を費やして示した現代におけるgood wifeという生き方＝スタイルなのだろう。選挙に立候補する夫の側に寄り添うことが求められるように、アメリカにおける妻の役割りは非常に保守的だ。それに対するアンチテーゼとしてアリシアの生き方がある。

子育てのために一旦家庭に入るが仕事に復帰し、夫の不倫には傷つき怒るが、自分も恋愛を楽しむ。仕事はバリバリこなしライバルを出し抜くが、場合によっては仲間とも衝突する。クリーンでいたいしやりたい仕事だけを受けたいが、選挙資金も事務所の経営も苦しい。最後には夫と離婚し、子供は離れ、恋人は去り、仕事の仲間もバラバラになる。傷つき泣きながら、それでも歩いて行くだろう。それが現代のgood wifeであるとアリシアの生き方が示している。

結婚という概念・夫婦という概念が、従来からは崩れている。息子が連れてきた彼女は、結婚を税制上の優遇措置を受けるための手段としてしか捉えていない。この問題は村上龍の「最後の家族」という小説で扱われている。家族とは一つ屋根の下に暮らすことではなく、お互いが自立することで逆に家族という形が浮かび上がってくるという新しい家族の形。その意味で、非常に「遅れたドラマ」と言えるかも知れない。

「あんまり感情移入すると仕事になりませんよ」。多分第1話だと思うが、依頼人に寄り添うアリシアに同僚がそう忠告する。事務所内の権力闘争に疲れ、州検事選に破れ、アリシアは自分のやりたい仕事だけを受けようと、自宅を事務所に小さな事務所を開く。それは儚い夢だったが、結構好きなシーンで、アリシアの強みであると思う。

what am I going to do?

You're going to take it one day at a time. We got you housing. You're going to go there, take a shower, take a nap. Don't turn on the TV. You like reading? I'm going to get you some books. Fiction is best. You won't feel like it, but put on nice clothes and makeup. Force yourself to. Not for court for you. It's superficial things that matter most right now.

Does it ever get easier?

No. But you do get better at it.

What?

If you identify with too many clients, you burn out.

この頃は、負けると悔しく勝っても苦く苦しい結末で、それに比べて自分の悩みは何と小さなことなのかと少し勇気付けられた。正直、最後はダレた。でも好きなドラマである。気分にあった写真がないが、7年ありがとう。